バセドウ病は、くびの前部にある甲状腺の活動が異常なほど活発になり、それによって甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、全身にさまざまな症状を引き起こす病気です。自分自身を攻撃する自己免疫疾患の一種で、男性よりも女性に多く、なかでも20〜30歳代の若い女性に多いのが特徴です。
わたしたちの身体には外敵から身を守るための免疫機能が備わっていて、細菌やウイルスなどが侵入したとき、抗体をつくってそれらを排除します。ところが、何らかの原因で免疫機能が誤って働き、自分自身を攻撃する抗体をつくることがあります。これが自己免疫疾患です。
バセドウ病の場合、誤って攻撃する標的は甲状腺にある甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体という部分です。甲状腺ホルモンは、この受容体と結合するTSHの量に応じて分泌されます。バセドウ病では、受容体を攻撃するTSH受容体抗体がTSHの代わりに結合して刺激することにより、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることになるのです。
どうしてTSH受容体に対する抗体がつくられるようになるのかは、いまのところ解明されていません。遺伝的な要因のほか、ストレスや過労が引き金になるとする研究者もいます。
「バセドウ」という病名は、1840年にこの甲状腺機能亢進症を報告したドイツの医師カール・アドルフ・フォン・バセドウにちなむものです。日本ではバセドウ病と呼ぶのが一般的ですが、英語圏では1835年にこの病気を発表したアイルランドの医師ロバート・ジェイムズ・グレイヴズにちなんで「グレイヴズ病」と呼ばれています。
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