米国疾病管理センター:CDC 2001年10月17日付け 肺炭疽症予防投与のための暫定的ガイドライン日本語要旨 日本医師会総合政策研究機構主任研究員 以下は、米国疾病管理センター:CDCが10月17日現在で作成し、10月19日号のCDC公式刊行物 Morbidity and Mortality Weekly Report 2001;50:889-897において公式発表した肺炭疽症の予防投与に関するガイドラインの日本語要旨である。 原本は、CDCホームページで無料でみることができるので、参照のこと。 また、拙著バイオテロリズムの脅威―生物兵器(炭疽菌)によるテロリズム-―の解説との相違点は、子供へのドキシサイクリンの用量が、年齢、体重でより細かく規定された点である。尚、日本国内では、ドキシサイクリンの静脈注射薬は、製造されていないため、経口薬のみ使用可能である。 炭疽症の予防投与は、炭疽菌に暴露(皮膚への直接接触、炭疽菌の吸引、あるいは炭疽菌に汚染されているものの摂取)または、暴露の疑いがある場合に適応になる。予防投与は、鼻の粘膜の綿棒擦過による培養の結果を待たずに開始し、その結果がたとえ陰性でも明らかに暴露したといえるときは60日間の投与が望ましいとされている。(感受性、特異性の問題から)ただし、暴露していない人(明らかな暴露事件や疑いなどに関与していない人)が、根拠もなく予防投与を受けることは勧められていない。
以下は、暫定的な予防投与薬、および用量である。 肺炭疽症の暫定的な予防投与薬および用量のガイドライン
注1:子供へのテトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬の使用には、副作用の可能性があることに留意し、生命に危険のある炭疽症の発症に対するリスクとのバランスを考慮することが必要である。 注2:暴露した炭疽菌の感受性検査で、それがペニシリンに感受性があれば、子供の場合は、ただちに、アモキシシリン一日総量80mg/kgを3回に分けて、経口投与に切り替えることが望ましい。一日500mgを3回投与以上の用量を越えないこと。(我が国では子供には、保険適応範囲外の用量である。ちなみにJAMA 1999;281:1735-1745では、アモキシシリン一日40mg/kgを3回にわけて、となっている。) 注3:セファロスポリン、ST合剤などは、炭疽菌は耐性であるため、予防投与には使用すべきではない。 注4:シプロフロキサシンは、子供では、一日総量1gを越えないこと。 CDCは、10月26日付けで、治療のガイドラインを発表したので、本ホームページの該当の項を参照のこと。 CDCは、今回、治療に関してはガイドラインを示さなかったが、以下は、参考のため、1999年にJAMAに発表された治療のガイドラインを示す。詳細は、拙著(医師会ホームページ)および原本JAMA 1999;281:1735-1745を参照のこと。
注1:In-vitro の試験では、シプロフロキサシンの代わりに、オフロフロキサシン 400mgを静注で12時間ごと、または、レボフロキサシン 500mgを静注で24時間ごとで使用できるというデータがある。ただし、動物実験、人への臨床試験はおこなわれていない。 注2:治療に際し、臨床症状が回復するに従い、静注から、経口薬へ変え、60日間の投与を終了すること。 注3:ドキシサイクリンも、子供に対し使用してもよいが、その際の注意点および用量は、予防投与の表を参照のこと。尚、日本国内では、静注用のドキシサイクリンは製造されておらす、経口薬のみ使用可能である。 |