神奈川県医師会では、現日医常任理事の羽鳥裕先生を担当理事として、平成21年5月に倫理審査特別委員会を設置した。
設置の目的は、県医師会が学術団体として自身の医療機関で倫理審査委員会を設置することが難しい診療所や小規模病院、医会などが研究発表を企画した場合に、個人情報等の取り扱いに関して倫理上の問題等を審査し、その研究発表等を支援するとともに会員医療機関を支援することにあったが、平成26年2月以降、いわゆるディオバンの事件が社会問題となってからは、日本医学会利益相反委員会が作成したガイドラインを踏まえて利益相反に関する審査も倫理審査と併せて行っている。
実際に委員会を設置してからの申請内容を振り返ると、学会発表のための審査依頼は数件で、医会や開業医の先生方が診療の傍ら自ら行う自主研究のための審査件数の方がはるかに多く、先生方の自主研鑽を行う姿勢に改めて驚かされる。
臨床研究は、医療における疾病の予防方法、診断方法の改善、疾病原因及び病態の理解並びに患者の生活の質の向上を目的として実施される「人を対象とする研究」である。
開業医等の先生方は診療の傍ら臨床研究にも取り組まれており、県医師会としても少しでも会員の先生方の研究の支援の一助となれば幸いである。
また、『人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス』(平成27年3月31日一部改訂)では、委員の年1回の研修会の参加が義務化されたこと等によって、委員の先生方にもより適正な審査が求められるなど、負担が増している。
厚生労働省でも、研究者等が、より円滑な臨床研究を行えるように指針を順守し、臨床研究を推進することを奨励しているが、県医師会でも患者さんへの医療に還元できるものであると考え、会員の先生方と共に今後も倫理審査に取り組んで参りたい。
なお、平成21年5月から平成27年3月(平成21年度から平成26年度の6年間)までに取り扱った審査件数は、医会からの審査依頼が20件(うち継続審査8件含む)、医師個人が6件、学会発表が1件で合計27件となっている。