閉じる

平成28年(2016年)4月5日(火) / 南から北から / 日医ニュース

雑草

 今年はいつもの年より雪の量がかなり少ないようだ。窓から見えるわが家の小さい庭でも、いつもの年の半分ほどしか積もっていない。今年の春の訪れはもうすぐ......。
 しかし、喜んでもいられない。それは私にとって雑草との格闘、すなわち「草取り」と「花粉症」の始まりを意味するからだ。
 奇麗好きなお隣りさんの庭があまりにも手入れが行き届いているため、わが家の雑草は際立つ。一度は「お宅のタンポポ見事ですね」とイエローカードを出された。
 さあ春と共に、ツナギに帽子、ゴーグルにマスク。アレグラ飲んでレッツゴー。
 彼らの繁茂はすさまじい。雑草のように強く生きろというが、よくもまあ踏まれても抜かれても、実にしぶとく生き抜く。強敵の面々の名前を知ろうと思い立ち、調べたことがあった。
 繁縷(はこべ)、蒲公英(たんぽぽ)、豚草、蓬(よもぎ)、大葉子(おおばこ)、杉菜、雀の鉄砲、雀の帷子(かたびら)、鴨茅(かもがや)、女日芝(めひしば)、白詰草、狗尾草(えのころぐさ)、犬蓼(いぬたで)、露草(つゆくさ)、捩花(ねじばな)、浜菅(はますげ)、野稗(のびえ)、勿忘草(わすれなぐさ)などなど。漢字で書くと古風で味わい深いが、ほとんどがアレルゲンとして有名な植物である。
 診察室で、あなたのアレルゲンはこういった植物ですよと告げても、すんなりと受け入れてもらえない。スズメノテッポウだのブタクサだの、興味のない人にとっては"雑草"のひとくくりである。一つずつ写真を見せると「ああ、あれか」。いきおいなじみ深いものに変わる。
 鼻炎、結膜炎、呼吸器症状、口腔アレルギー症状。さまざまな症状が出る可能性を患者さんに説明すると、どうしたらよいでしょうと必ず聞かれる。これらの雑草に近寄らないようにと言いつつ、わが庭を思い出す。近寄らないで生活するなんてとても無理。彼らは厳しい環境の中で一生を終えるが、その逆境を受け入れ順応し、生きる術を身につけた猛者である。どこにでもいて、抜群の適応力とたくましさを持って生き続ける。
 しかし、どうやら私はこのやっかいな雑草に惚れてしまったようだ。昨年、懲りもせず「継子(ままこ)の尻拭い」と「木綿蔓(もめんづる)」という新しい雑草の種を植えてしまった。どんな花を咲かせるか、お隣さんのイエローカードは出ないか、アレルギーを起こさないか。ワクワク半分、ドキドキ半分の春を迎える。ハックション......。

(一部省略)

北海道 北海道医報 第1159号より

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる