都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会が3月5日、本年4月からの診療報酬の改定概要を説明するとともに、その内容を伝達することを目的として、日医会館大講堂で開催された。 当日は、中医協委員である中川俊男・松原謙二両副会長、松本純一常任理事から、資料を基に改定内容のポイント等について詳細な説明が行われた。 |
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冒頭のあいさつで横倉義武会長(中川副会長代読)は、今回の改定について、①昨年10月から消費税率が10%に引き上げられる予定であったが、平成29年4月へ延期となり、引き上げ財源の少ない厳しい条件の中での改定となった②昨年11月に財政制度等審議会から診療報酬本体について、一定程度のマイナス改定が必要との厳しい提言が出された③医療以外の介護・年金その他の約3800億円は改定や制度改正がないため、支出額の削減が行えず、平成28年度に改定が行われる医療費のみが大きく削減される恐れがあった─ことなどを説明。
「そのような状況においても、日医では都道府県医師会の協力の下に、医療分野への財源投入はわが国の経済全体への波及効果も大きいことを繰り返し主張し、その結果、診療報酬本体で0・49%増のプラスを勝ち取ることができた」と報告した。
続いて、医療保険担当の松本常任理事が、新設項目や点数が変更となった項目を中心に、改定の概要を説明した。
同常任理事は、今回の改定の特徴として、「かかりつけ医機能の更なる評価」「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」「医療機能に応じた入院医療の評価」が挙げられるとして、各項目についてその内容をそれぞれ解説した。
「かかりつけ医機能の更なる評価」
日医が従来から「かかりつけ医機能の更なる評価」を強く主張してきた結果、(1)地域包括診療加算・地域包括診療料の要件緩和、(2)認知症に対するかかりつけ医機能の評価、(3)小児かかりつけ医の評価、(4)医師の基礎的な技術の再評価─等が行われたと説明。
(1)では、前回改定で創設された地域包括診療加算・地域包括診療料について、更なる普及を図るため、点数の要件の緩和が行われ、また(2)、(3)では、認知症や小児のかかりつけ医機能が新たに評価されることになったとした。
(4)では、モノからヒトへを主張し、かかりつけ医が行う基礎的な診療行為の再評価が行われたと説明。
更に、「紹介状なしの大病院受診時定額負担の導入」に関しては、「外来の機能分化の推進の観点」から、医療機関相互間の機能分担や業務連携の更なる推進のため、特定機能病院及び一般病床500床以上の地域医療支援病院において導入されたことを説明し、「こうした外来機能分化の中で、かかりつけ医機能を強化し、今後の改定で更なる評価を求めていきたい」と述べた。
「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」
地域包括ケアシステムの確立に向けては、在宅医療の推進は極めて重要であるとして、(1)重症度・居住場所に応じた評価、月1回の訪問診療による管理料の新設、(2)在宅医療専門の医療機関に関する評価の新設、十分な看取り実績を有する医療機関の評価の充実、(3)休日往診、病院・診療所からの訪問看護の評価の充実─等が行われたと説明。
(1)に関しては、前回改定において、「在宅医療の不適切事例に対応することを重視したため、在宅医療に真摯(しんし)に取り組んでいる医師のモチベーションを下げるような改定がなされた」と指摘。その改善策として、今回の改定では、月1回の訪問診療による管理料を新設し、同一建築物において医学管理を実施している人数に応じた評価の細分化が実施されることになったとした。
また、(2)では、今回、在宅医療を専門に行う医療機関について、一定要件を設定した上で認めたことを報告。「在宅医療専門医療機関を排除するのではなく、地域包括ケアシステム推進の中で、積極的に地域医師会と協力して、地域医療を守って頂きたいという意思表示である」と説明した。
「医療機能に応じた入院医療の評価」
入院機能の評価としては、(1)7対1入院基本料の施設基準の見直し、(2)病棟群単位での届出、(3)看護職員の月平均夜勤時間数に係る要件の見直し、(4)月平均夜勤時間数の基準のみを満たせなくなった場合の更なる緩和措置、(5)急性期後の受け皿病床の評価、(6)入院中の患者の他医療機関受診、(7)医療資源の乏しい地域に配慮した評価と対象医療圏の見直し─等が行われたと説明。
(1)の7対1入院基本料の要件の厳格化について、松本常任理事は、「高齢化による疾病構造の変化に対応するため、急性期後の受け皿病床へ転換を促すという趣旨については理解するが、急激な見直しによる医療現場の混乱で、最終的に不利益を受けるのは患者であり国民である」とし、速やかな検証を求めていく考えを示した。
更に、一般病棟の「重症度、医療・看護必要度」について、急性期の患者特性を評価する項目を見直した上で、該当患者割合要件が「25%以上」に引き上げられたことに関しては、200床未満で病棟群単位の届出を行わない病院は「23%以上」とするなどの措置が設けられたことには一定の評価をするとともに、「医療現場への影響をしっかり検証していきたい」とした。
また、(6)では、精神科病院や有床診療所など、特に診療科の少ない医療機関に配慮し、控除率が緩和されたこと等を報告した。
引き続き、中川・松原両副会長から追加説明が行われた。
中川副会長は、「7対1入院基本料における該当患者割合の基準の見直し」について、200床未満の医療機関では23%以上とする経過措置が2年間となったことについて、「次回改定まで続く措置であり、その際に更に延長になることも考えられる。病棟群単位の入院基本料も同様であり、経過措置で終わるのか、継続するのかは改めて議論することになっている」として理解を求めた。
更に、「回復期リハビリテーション病棟のアウトカム評価」について、計算式を説明するとともに、「モラルハザードの是正のためであり、しっかりとリハビリを行っている医療機関は影響が大きくはないのではないか」との考えを示した。
また、松原副会長は、一般病棟の「重症度、医療・看護必要度の見直し」について、新設されたC項目の「救命等に係る内科的治療」は、経皮的血管内治療、経皮的心筋焼灼(しょうしゃく)術、侵襲的な消化器治療とされ、「ペースメーカー、ステント等、広く適応されるため、ぜひ活用して欲しい」とした。
また、「長期投薬」の問題に対して、30日を超える長期の投薬に当たっては、「病状が安定し、服薬管理が可能である旨を医師が確認する」となったことを説明するとともに、「残薬への対応」では、調剤時に残薬を確認した場合、「医療機関へ疑義照会した上で調剤」もしくは「医療機関へ情報提供を行い、次回の処方で対応」となったことなどを報告した。
最後に、松本常任理事が、「今回の診療報酬改定では、例年以上に早い段階から中医協でさまざまな課題の検討を続け、できる限りの対応を行ったつもりである。先生方には、本日の説明を踏まえて改定内容の周知をお願いしたい」と述べ、協議会は終了となった。
なお、当日の資料は日医ホームページのメンバーズルームに掲載する他、診療報酬点数表の参考資料等は都道府県医師会で開催される説明会等で配布されることになっている。