平成28年(2016年)9月20日(火) / 各地の医師会から / 日医ニュース
山形県が設置する「やまがた性暴力被害者サポートセンター」設立までの経緯と山形県医師会との関わり―山形県医師会―
都道府県医師会だより
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当県においても、性犯罪の被害は対岸の出来事ではなく、毎年少なくない数の被害者が出ている。山形県では、今般、「やまがた性暴力被害者サポートセンター」を立ち上げ、その運営をやまがた被害者支援センターに委嘱した。
本稿では、山形県医師会のユニークな活動の一つとして、サポートセンターの設立までの経緯と、県医師会、ひいては、山形県産婦人科医会との関わりについて紹介する。
内閣府は2年程前に各都道府県に対して「性犯罪被害者のためのワンストップ支援センター」の設立を図るように通達を出した。以後、各都道府県においては、既に設置済みの所を除いて設置に向けた動きが活性化した。
しかし、当県においては、県庁の各部署・県警察本部などが互いに譲り合いをしたため、設置主体や運営主体の具体化などが遅々として進まず、このままでは東北の中でも設置に関して後塵を拝するとの危機感が高まった。
そこで、山形県産婦人科医会とやまがた被害者支援センターが独自に設置推進会議を設置し、山形県医師会に働き掛け、理事会承認の下に三者が協力して県に働き掛けるという体制ができ上がった。
この結果、県の危機管理局に直接働き掛けることができるようになり、県主体の設置推進会議が持たれることになった。
年度途中からの会議ということもあり、最大の難関は予算化であった。内閣府が会議を設置する地方自治体に対し、補助金を付けるという知らせが、産婦人科医会を通じて山形県医師会理事会にもたらされた。これで予算化のめどが立つと思われた矢先、県の担当者がこの情報を把握していなかったことが発覚。推進会議はかなり紛糾することとなった。
最終的には、県の危機管理監と直接渡り合い、設置の方向で協力して会議を推進することを取り付けるとともに、やまがた被害者支援センターの協力の下、預保納付金の交付を受けることができることとなり、設置は現実味を帯びてきた。
更に、産婦人科医会長のリーダーシップの下に産婦人科医の協力体制が整えられ、協力医療機関が数多く申し出たため、「山形方式」とも言うべき方式ができ上がった。
この内容は、被害者支援センターのオフィス内に「やまがた性暴力被害者サポートセンター」の本部を置き、ここから必要な関連部署、すなわち、産婦人科医療機関、県警察本部、県弁護士会、心理療法士にすぐさま要請し、山形県内であれば、被害者がどこにいようと、可及的速やかにサポートが受けられるようにした。また、総合病院においては、県医師会から院長宛ての要請により、個々に了解を取り付けることができるようにした。
開業医主体の産婦人科医会の協力、そして総合病院においては県医師会がバックアップするというシステムにすることで、遺漏のないようにしたわけである。全国的にもユニークな取り組みであると自負している。
産婦人科医会及び県医師会の働き掛けから2年を経て、本年4月21日に県庁において山形県知事・山形県警本部・山形県医師会・山形県産婦人科医会・やまがた被害者支援センターの5者による調印式を行い(写真)、協力体制が公式のものとなり、やまがた性暴力被害者サポートセンターは、4月25日より活動を開始している。
このように、県医師会は行政や他の機関と協力しながら、性犯罪の被害に苦しむ人々への一助となるべくリーダーシップを取り、同センターを開設することができた。
なお、センター長には、性的虐待や性被害に詳しい林淑子山形市医師会理事に就任頂いている。