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平成29年(2017年)2月20日(月) / 南から北から / 日医ニュース

♬ごはんができたよ~♪

 「はい、先生、コーヒー」
 今朝もクリニックに着くと、淹(い)れたてのコーヒーが置かれる。ありがたい、と毎日思う。日頃自宅では、家族に何かをしてもらうことは少ない。勤務医時代、看護師さんには同性故に気を遣う。事務さんにも、男性医師のように「この紹介状出しといて」と気軽に頼みづらかった。人に「これやって」と気軽に頼めるようになったのは、開業してからである。何てぜいたく。
 クリニックでは、頼りないながらも、私はお父さん役である。生活習慣病を中心に診ている関係から、患者さんに苦言を呈することも多い。「そのサプリに頼ったって体重落ちませんよ。サプリ飲んだらひもじい思いもしないで痩せるなんて、そんなうまい方法ないですよ」と私に言われてショボンとした患者さんを、優しいお母さん役のスタッフがなだめてくれる。司令塔であるお父さん役は楽である。
 さて、仕事が終わり、急いでスーパーに寄って帰る。お母さん役に戻る時間である。遅いと8時半過ぎの帰宅。ヨレヨレで「ただいま」とリビングに入ると、旦那が自分で買ってきた刺身をつまみながら焼酎を飲んでいる。第一声は「ご飯はまだ?」。次いで息子が「お腹すいた。今日は何?」と言う。疲れている時、崩れ落ちそうな気分になる。カレーくらいつくれるだろうに~!
 玄関を開けたら「お帰りなさい。ご飯にします?それともお風呂?」と聞いてくれる、小津映画のような奥さんがいたらどんなに幸せだろう。優しくて料理上手だったらなおいいな。もちろん我が家の旦那もそう思っているであろうが。家で待っている人が居るだけ幸せなのだろうか......と考え直して食事の支度をする。
 先輩・仲間の女医さんは、仕事も家事も能力に優れた方が多い。食事の手づくり率は普通の主婦よりも高いのではないかと思うこともある。休みの日につくり置きして、平日はそれをいろんな料理にアレンジすればいいのよと聞いたこともある。私も日曜につくり置きを頑張っていた時期もあるが、子ども達が食べ盛りで、昼お弁当アリだと、ストックも2、3日しかもたない。〈in vain〉と感じた。なので、日曜日は体を休める日にした。毎日の食事は出たとこ勝負である。
 幸い我が家の旦那は環境順応力が高く、買ってきた弁当でも文句は言わない。ファミレスで済ますこともたまにある。しかし、何回かそれが続くと、プロによっておいしくつくられているはずなのに、何だか飽きてくる。体調も悪くなる気がする。味気なくて、心まで乾いていくように感じる。
 なので仕方なく、自分でスピード料理をつくることになる。野菜や肉が適当にゴロゴロ入っている、味付けもバラつきのあるアバウト料理であるが、なぜか手づくり料理の方がおいしい。電子レンジの加熱よりも鍋の加熱の方がおいしくできるのだろうか? 野菜が多いことがいいのだろうか? 自己満足かも知れないが、家庭の料理はおいしい。
 ゴハンの支度をすることは、家事の営みの中でも特に大事なことだと思う。家族の健康を考えた料理、皆の喜ぶ料理をつくり、家族の和みの場をつくる。そうだよね。よし!疲れて帰っても、がんばろっと!!

(一部省略)

神奈川県 藤沢市医師会報 第488号より

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