先日、小児病棟に一通の手紙が届いた。以前、入院しておられたお子さんのお母さんからである。
「その節は大変お世話になりました。娘が手術した頃は桜が咲いていました。そのため、毎年桜の季節になると、病気で苦しんでいた娘のこと、果たして手術がうまくいくか不安でならなかった自分のことが思い出されます。そんな私達を医師、看護師の方達がよく支えて下さいました」と書かれてあった。
そして、「病気で入院しているお子さんに付き添っているお母さん達のために使って下さい」と、ある品物が段ボール箱いっぱいに詰められてあった。
また、主治医であった私に対しては「いつも夜遅くまで働いておられて、いつ寝ているのだろうと、体が心配でした」と書かれてあった。更に、成長した娘さんの可愛い盛りの笑顔の写真も添えられてあった。
このようなお礼の手紙を頂くことは時々あることではあるが、その度にうれしいと思うとともに、小児科医としてのやりがいを感じる。
ただ、それ以上に思うことは、果たして自分がこんな手紙を頂くに値する医師、人間であろうかということである。もっと立派な医師となるよう、勉強・研鑽(けんさん)に励み、人格陶冶(とうや)にも努めていかなければならないと感じる。
また、手紙に添えられてあったお子さんの健やかに成長した写真を拝見して、とてもうれしいと感じた。
小児科医をしていて良かったと思うことは、このように、かつて自分が苦労に苦労を重ねて診させて頂いた患者さんの成長していく姿を見られることである。
大きな疾患を乗り切ったお子さん達が、その後も何か病気になった時に、私達の外来に来てくれることがしばしばある。近くの開業医の先生にお世話になればいいのにと思うのだが、それでも私達を頼って来てくれるのである。そんな折々に元気に成長していくお子さんの様子を見られることはとてもうれしいことである。
これから定年を迎えるまでの残り少ない勤務医としての人生であるが、精一杯努力していかなければならないと思うのである。