都道府県医師会だより 特別版
熊本県災害対策本部
熊本県災害対策本部
熊本県では、昨年4月14日、16日の2度、震度7の地震に見舞われるという未曽有の震災を経験した。
14日の地震発災時、情報では被害の中心は熊本県益城町地域であり、状況から熊本JMATによる医療救護活動対応を検討している矢先、16日未明(発表では午前1時25分発災)のマグニチュード7・3という再度の大地震(その後、これが本震という公表あり)発災により、土砂災害に加え、家屋の片づけ等で帰宅していた人達が、一気に拡大した家屋倒壊に巻き込まれるなど、犠牲者が増えた(災害直接死:前震9名→本震41名)。
想定外の事態に、直ちに災害情報把握、その後の対応のため県災害対策本部(県庁)に向かったが、本部も混乱しており、正確な災害情報収集は不確実なものであり、詳細な把握は困難な状況であった。
翌17日、熊本市保健所に出向き情報収集を行ったが、市内でも約270カ所の避難施設に約10万を超える住民が避難されている報告を受けるとともに、各避難施設へのJMAT派遣要請があった。その後、現場を視察してみて早急なJMAT活動の必要性を実感した。被災県の対応だけでは困難な状況が明らかであり、直ちに県外JMAT派遣要請を行うことになった。
また、当初から情報共有のため強く行政に要望してきた県と政令都市(熊本市)間の合同対策本部が協議により19日に設置されたが、このことに関しては二重行政の壁を痛感したところである。
東日本大震災後、熊本県では新たな災害医療体制を構築し、その訓練も行ってきた。その中で、指揮命令系統の骨格づくり、情報共有・指示の下、実効性のある活動につなげるという目標が挙げられていたが、現実にはなかなか難しい課題であることを認識させられた。
前震→本震という地震発災で被害が拡大したこともあり、被災県医師会として統括指揮及び連携体制がうまく機能できない状況の中で、早期に現地で医療救護支援活動を展開して頂いた九州医師会連合を始め全国JMATや各種機関のご支援が、今回の活動に大きな役割を果たしたと感謝している。
特に、当初18万人を超える避難住民、車中泊者の増加、また避難施設環境等数多くの課題・問題があった中で、二次災害犠牲者の拡大を防ぐことができたことは評価すべき点である。
さて、今回の震災活動を検証していく中で、いくつかの課題も見えてきた。
まず、指揮と連携体制、そして情報共有、伝達等の課題である。大規模災害発災時、指揮、連携、安全、情報伝達、評価という医療救護支援活動の前提となる管理・運営を担うロジスティクス機能の充実が重要であるということを認識した。
九州医師会連合では、本年1月に九医連救急・災害医療担当理事連絡協議会並びに九州ブロック災害医療研修会を2日間にわたり開催した。
研修会の開催に当たっては、全面的に兵庫県医師会の協力を得て、災害時の通信手段としての衛星携帯電話及びEMIS(広域災害救急医療情報システム)の操作実習、そしてロジスティクスの役割を理解するための実習など、九州ブロック間の連携強化につながる非常に有意義な研修会になったと考えている。
昨年の日医代議員会や救急・災害医療担当理事連絡協議会でも取り上げられた全国知事会要請による医療救護班や複数展開された私設の救護班等とJMATの関係については、現場で混乱を来さないためにも、統一した体制構築が必要である。
また、今後のJMAT活動強化のためには、各ブロック単位での継続的な研修、業務調整員の育成や他団体との連携の在り方、今回有効であった「統括JMAT」「JMAT先遣隊」等の改革、見直しなどの対策が必要と感じる。
これらの件については、先日の日医代議員会において、九州ブロック代表として質問の機会を与えて頂いた。
今後、日医の指導・支援の下、県医師会として、より実効性のある救急・災害医療支援活動が行えるよう努力していきたい。