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平成29年(2017年)7月5日(水) / 日医ニュース

「会員の倫理・資質向上をめざして」―都道府県医師会の取り組みおよびケーススタディから学ぶ医の倫理―

「会員の倫理・資質向上をめざして」―都道府県医師会の取り組みおよびケーススタディから学ぶ医の倫理―

「会員の倫理・資質向上をめざして」―都道府県医師会の取り組みおよびケーススタディから学ぶ医の倫理―

 第7回ワークショップ「会員の倫理・資質向上をめざして―都道府県医師会の取り組みおよびケーススタディから学ぶ医の倫理―」が6月2日、日医会館小講堂で開催された。
 羽鳥裕常任理事の司会で開会。冒頭あいさつで横倉義武会長は、「医師という職を目指す者には、高い倫理観が求められる」とした上で、近年では、国際的にも医学生等に対する医療倫理教育の重要性が唱えられており、わが国でも平成28年度に改訂された「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の中で、倫理教育の重要性が謳(うた)われていることに言及。「医学生には豊かな人間性を養い、医師としての道をしっかりと歩んで欲しいと願っている」と述べた。
 更に、配布資料の冊子『医の倫理について考える 現場で役立つケーススタディ』について触れ、倫理教育への活用を求めた。
 続いて議事に移り、小野隆宏大分県医師会常任理事が、「人生の最終段階における医療の課題」について講演し、「看取りの文化」における在宅医療の役割や施設での看取り等について解説した。
 その上で、「延命治療の差し控えや中止に関する法整備について、現時点では不要」「ガイドライン等を基に、多職種による医療・ケアチームが『患者にとって最善の利益は何か』を家族との話し合いで進めるべきであり、そうした多職種の人材育成が重要」等の考えを述べた他、「医の倫理の下、患者の権利保護と医療者の法的安定性保護を両立し、尊厳ある生と死を考えていくことが必要である」とした。
 佐々木昌宏文部科学省高等教育局医学教育課企画官は、「倫理教育の今後の在り方について」と題して講演。6年ぶり3回目の改訂となった「医学教育モデル・コア・カリキュラム」が、「国民から求められる倫理観」を強調した内容になったことを説明した。
 更に、これからの医学教育は、さまざまな形で「外の目」が入ることになり、また、さまざまなステークホルダーとのシームレスな関係構築が重要になることを指摘し、「『だからこそ、高い倫理が求められる』という構成にして、今後の倫理教育の実践を見据えた改訂を行った」と述べた。

二つの事例について活発に討議

 引き続き、樋口範雄会員の倫理・資質向上委員会副委員長(武蔵野大学法学部法律学科教授)から、「討論の課題と進め方」についての説明が行われた後、①高齢者の自動車運転と医師の役割(1カ月前に自損事故を起こした75歳の独居の男性が家族に付き添われ来院。患者は緑内障と難聴があったが、半年前に運転免許を更新。日常生活で運転が必要な患者への対応)②急逝した患者―死亡診断書と医師の役割(高血圧症の80歳の男性。死亡する10日前に診察。救急車の到着時には既に死後硬直もあると言われたと患者家族から相談された場合の対応)―の二つの事例について、参加者が七つのグループに分かれて討議を行うワークショップ形式によるケーススタディが行われ、全体討議では、各グループによる議論の内容が発表された。
 事例①では、「免許の返納を勧めるべき」との意見が大半で、「認知症と非認知症と分けて考えるべき」「専門医や警察との連携も重要」といった意見が出された。
 また、医師会の役割としては、「免許を返納しても生活が成り立つよう行政に働き掛けを行うことが必要」「地域包括ケアシステムとつなげることも大切」等の意見があった。
 事例②では、「医師は現場に行くべき」との意見が大半で、「死亡診断書を書くのはかかりつけ医の仕事」「救急隊との共通認識の確認、警察医との連携も大事」等の意見が出された他、医師会の役割としては、「地域で警察活動に協力する医師等を増やしていく必要がある」等の意見もあった。
 続いて、栗山隆信大阪府医師会理事より、同医師会の「医療問題研究委員会」において、「医の倫理」をテーマに取り上げたこと等の紹介があった。
 最後に、森岡恭彦会員の倫理・資質向上委員会委員長(日赤医療センター名誉院長、日医参与)が、これまでの委員会での取り組み及び医師の行政処分の件数等について報告し、「これからもさまざまな方法で医師の倫理観を高めることが重要である」と総括して終了となった。

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