日医定例記者会見 11月29日
横倉義武会長は、年末の予算編成に向けて日医の見解を説明した。
横倉会長はまず、11月22日に都内で行った「国民医療を守るための総決起大会」に、国会議員や医療関係者、患者団体などを含め、約800名の出席があったことを報告。
同日、武見敬三参議院議員が会長を務める「医療政策研究会」においても、平成30年度の医療と介護の同時改定に当たり、国民医療・介護の更なる充実・強化を図るための6項目の決議が採択されたことに触れるとともに、「先般の衆議院議員総選挙における政権与党の勝利は、社会保障の充実の実現を期待する国民の思いの表れである」と述べた。
その上で、現在の診療報酬改定を巡る報道について、「薬価改定財源をどのようにするのかという議論のみが先行しているが、本来、診療報酬改定とは時代を反映してあるべき姿へ是正していくもの。平成30年度は、各都道府県で策定された地域医療構想が実行に移され、2025年に向けた新しい医療提供体制へ踏み出す時であり、それに寄り添う診療報酬改定でなくてはならない」と強調。薬価改定財源の活用のみならず、地域において必要な医療を提供するための財源の確保が必要だとした。
更に、民間医療機関と国公立・公的病院の医療従事者の給与格差を取り上げ、「本来は民間医療機関の医療従事者の給与水準も人事院勧告に準拠している国公立・公的病院に合わせて引き上げるべきだが、それを抑制することによって、民間病院はかろうじて経営しており、その結果として賃金の改定率が低く、改善が遅れている」と指摘。各地域の住民に安心して暮らしてもらうためにも、医療機関が安定した経営をできるようにしなければならないとした。
国民医療費については、「健康寿命の延伸や日本健康会議での取り組みなどにより、過去の推計値を約3兆円下回っており、今後も医療側から過不足ない医療提供ができるよう努力していく」と述べるとともに、安倍晋三内閣総理大臣が、来春の労使交渉において3%の賃上げを要請したことに言及。他の産業が賃上げを行う中、全就業者の11・9%を占める医療従事者にも適切な手当てが求められるとし、医療従事者に対する3%の賃上げのためには、医療費ベースで約6300億円、国費ベースでは約1600億円、改定率で約1・4%相当の財源が必要となるとの試算を示した。
また、ICTの活用等、医療の高度化については、政府の成長戦略として別財源を充て、イノベーションを促進すべきだとし、「医療分野にとどまらず、日本が得意とする、ものづくりや情報技術産業などを波及的に発展させて内需を拡大させることがアジア諸国等への輸出も見込まれ、更なる経済成長へとつながっていく」との見方を示した。
最後に、横倉会長は、平成30年度予算編成において、「医療従事者への手当て」と「成長戦略としての医療の高度化(ICT活用等)」に適切な財源を確保し、平成30年度診療報酬改定はプラス改定とすべきとの考えを改めて強調した。
介護報酬改定については、地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた財源の確保が重要だとして、「高齢者の自立支援と要支援・要介護状態の重度化防止を目指し、地域において必要な方に過不足なくサービスを提供するため、メリハリをつけた介護報酬体系が必要である」との見解を述べた。
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