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平成31年(2019年)4月20日(土) / 日医ニュース

「思春期のメンタルの諸問題とその支援」をテーマに

「思春期のメンタルの諸問題とその支援」をテーマに

「思春期のメンタルの諸問題とその支援」をテーマに

 平成30年度学校保健講習会が3月17日、日医会館大講堂で開催された。
 道永麻里常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(今村聡副会長代読は、まず、人生100年時代を迎える中での健康寿命の更なる延伸や、少子化対策、「産みやすく、育てやすい」社会の構築におけるかかりつけ医の役割の重要性を強調した。
 また、先の臨時国会で可決成立した「成育基本法」にも言及。同法の内容を説明した上で、「生涯保健における少子化対策や子育てに関わる母子保健と共に、そのスタートラインに位置する学校保健分野は、国民の健康の基礎づくりに当たる部分であり、その役割は成育基本法が制定された中で更に高まっている」と述べ、学校保健分野の充実が健康寿命の延伸、ひいてはわが国の社会保障制度の持続可能性を高めることにつながっていくとの認識を示した。
 引き続き、小林沙織文部科学省健康教育・食育課学校保健対策専門官から、最近の学校保健行政について報告がなされた後、講演等が行われた。

講演1「学校保健の今日的トピックス①」

 山縣然太朗山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座教授は、「乳幼児健診から学校健診へつなげるためのビッグデータの活用」をテーマに講演。
 「個」のデータと「集団」のデータの関係性や活用方法を説明した上で、山梨県甲州市で1987年から30年以上実施されてきた妊娠届出時から乳幼児健診の場を利用した母子保健縦断調査「甲州プロジェクト」の概要と成果を報告した。
 同教授は、こうした個人情報を利用した調査やデータベースについて、「住民との信頼関係が最も重要。そして、それはささいなことで崩れてしまう」と、その活用に注意を促した。

講演2「学校保健の今日的トピックス②」

 松木秀彰文科省児童生徒課生徒指導室長は、子ども達を取り巻くSNSやネット環境について解説。
 ①インターネットには光と影がある②子どもは悩みを顔の見える大人に相談してくれないことがある③いじめの重大事態の調査は、どこまで本人側の要因に踏み込めるか―をポイントとして挙げ、①では、スマートフォンやインターネットはこれからも普及し続けるため、その「影」の部分の危険性をしっかり教育する方針であると説明した。
 ②では、子どもの悩みをしかるべき大人がキャッチするために、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用と合わせ、電話やSNSによる匿名相談の充実を図っているとした。
 ③では、重大事態後の調査委員会では、まずはスクールカースト等の把握が必要になってくるとの見方を示した上で、「各分野の専門家の協力がなければ成り立たない」と述べた。

シンポジウム「思春期のメンタルの諸問題とその支援」

 はじめに、佐々木司日本学校保健学会常任理事/日医学校保健委員会委員が基調講演として、思春期の精神疾患について概説。子どもの精神不調について、「学校は相談・受診しようとしても応じてくれる専門家が見つからないことに困っている」と述べるとともに、医療・保健と学校の地域ネットワークや内科・小児科、精神科、学校(養護教諭など)間の連携が有効であるとの見解を示した。
 渡辺慶一郎東京大学准教授/学生相談ネットワーク本部精神保健支援室長は、思春期のメンタルの問題の特徴を模擬事例を交えながら説明。治療が必要な精神疾患等を単なる悩みとしないよう留意するとともに、適切な時期の受診観奨や精神科以外の診療科で異変が察知された際のネットワークの構築が求められているとした。
 安達知子母子愛育会総合母子保健センター愛育病院長は、産婦人科医の立場から月経関連のメンタルの諸問題を解説。代表的な問題として、①月経前症候群(PMS)②月経痛・月経困難症③やせ願望・ダイエットによる無月経④月経をネガティブに捉えやすい―の四つを挙げ、特に①について、標準化した診断基準がない中での日本における診断・治療方法を紹介するとともに、対応時の重要なポイントを説明した。
 大沼久美子女子栄養大学教授は、養護教諭の立場から主にパイロット的に行われている「心の健康診断」について説明。問題を抱えていても助けを求められない・求めない児童生徒をスクリーニングすることが可能等の効果や各種課題を解説した他、医師と養護教諭の「顔が見える関係」づくりの必要性を訴えた。
 松﨑美枝文科省健康教育・食育課健康教育調査官は、行政の立場から現代的健康課題を抱える子ども達への支援について報告した。
 その中では、平成28年度の保健室利用状況に関する調査結果から、身体の健康に関する問題としては、アレルギー疾患が最も多く、アドレナリン自己注射薬の処方を受けている児童生徒の大幅な増加が見られること、心の健康に関する状況調査結果からは、発達障害に関する問題の増加や人間関係のトラブルで悩んでいる児童生徒が多いことが、それぞれ明らかになったこと等を紹介した。
 引き続き行われた総合討論では、重大事案を防ぐための対策や早期発見・早期診断のための方策等について積極的な討論が行われた。
 最後に、道永常任理事が総括し、講習会は終了となった。参加者は304名。

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