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令和元年(2019年)7月5日(金) / 南から北から / 日医ニュース

初めての梅仕事

 数年前、病院のスタッフから自家製の梅干しを頂いたのですが、それが大変美味しく、そのことをきっかけに梅仕事に興味を持つようになりました。毎年6月に入りスーパーに梅が並び始めると何となくそわそわするようになり、本屋さんで梅干しや梅酒の本を立ち読みしたり、インターネットでレシピを調べたりしていました。
 しかし、実際に購入する勇気がなく、そうこうしている間にスーパーから梅が消え、ああ今年も時期を逃してしまったと残念な気持ちになるのを3年ほど繰り返していました。
 私の勤務先のある若狭町は福井梅の産地であり、日常のこととして梅干しや梅シロップを作ったという話を聞く度に、来年こそはと決心するのですが、やはり6月になると躊躇(ちゅうちょ)してしまい、季節が過ぎるのです。
 今年もそうやって夏になり、梅のこともほぼ忘れて生活していましたが、最近読んだ本の中にたまたま梅干しが出てきました。それは主人公が同居人にごはんを作る話でした。主人公は相手の好みや健康を考えて毎日丹精込めて作っています。ある日、同居人は「今日は梅干しの方がいい」と言って主人公の作ったおかずを食べず、市販の梅干しでごはんを食べます。それをきっかけに、「頑張って作っているのに市販の梅干しに負けた」と不機嫌になる主人公と、「食べたいものを食べただけでなぜ怒られなければならないのか」と困惑する同居人が喧嘩(けんか)になってしまいます。
 後日、お互いに謝って仲直りしましたが、どうしても悔しい主人公は同居人に内緒で梅干し作りに挑戦。5カ月後、できた梅干しを自分で漬けたとは言わずに食卓に出し、同居人の「美味しい」との言葉を聞いて満足する、という内容でした。
 主人公について何もそこまでしなくてもと思う反面、その行動力に驚いたのと、本の中で梅干しの漬け方が結構詳しく載っていたので、これは案外やればできるんじゃないかと思えるようになりました。そこで、一念発起して行動に移してみることにしました。
 いろいろと探してみましたが、梅干し作りはさすがに時期が終わっていたために断念。梅酒については夏でも体験を開催しているお店があったため、申し込むことにしたのです。ちょうど梅酒作りに興味を示してくれた友人がいたため、誘って一緒に参加しました。
 お店には梅、砂糖、お酒がそれぞれ4~5種類あり、その中から好きなものを選んで組み合わせて作ります。それぞれの種類の梅、砂糖で作られた梅シロップを試飲することができ、梅によっても砂糖によっても味、香り、色が少しずつ違うため、選ぶのに思いの他時間が掛かりました。私は、酸味が強めの梅と、金平糖、お酒はよく分からないので一番馴染みのあるものを選びました。友人は、完熟の南高梅と、植物のシロップ、くせが少ない種類のお酒を選んでいました。
 材料を選んだら梅の下準備に掛かります。梅のへタを取るのですが、冷凍の梅(これが、時期を過ぎても梅酒作りができる理由のようです)のためか結構硬い。耳かき位の小さなさじで削るようにして取りました。
 次に、梅と砂糖を交互に瓶に入れます。その上からお酒を注ぎ、これで梅酒作り体験終了です。「えっ、もう終わり?」といった感じで、実質15分程で終了。後は時々かき混ぜつつ、1カ月程(早い!)ででき上がるそうです。自分で一から作る時には瓶の消毒をしたり、梅のアク抜きをしたり、熟成にも数カ月から1年掛かるようですが、今回は初心者向けということもあり、とても手軽で、友人と「これならまたできるかもね」と話しながらごはんを食べて帰りました。
 現在、時々瓶をかき混ぜながら梅酒の観察をしています。まだ日が浅いため砂糖もあまり溶けていませんが、少しずつ梅酒っぽくなっている気がします。ちょっとした実験みたいで面白いです。梅酒が上手くいったらいよいよ梅干しにも挑戦してみようかなと考えています。次回はぜひ、福井の梅を使ってみたいです。

(一部省略)

福井県 福井県医師会だより 第688号より

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