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令和元年(2019年)10月5日(土) / 日医ニュース

かかりつけ医が中心となり「防ぎ・治し・支える医療」を国民に提供していく姿こそ人生100年時代の医療の象徴

かかりつけ医が中心となり「防ぎ・治し・支える医療」を国民に提供していく姿こそ人生100年時代の医療の象徴

かかりつけ医が中心となり「防ぎ・治し・支える医療」を国民に提供していく姿こそ人生100年時代の医療の象徴

 令和元年度第2回都道府県医師会長協議会が9月17日、日医会館大講堂で開催された。
 当日は、日医から「日医標準レセプト(日レセ)の今後の対応」「医師資格証の今後」について報告を行った後、15都県医師会から寄せられた「医師の働き方改革」や「医師の偏在対策」などの直近の課題に対して、担当役員から回答を行った。

会長あいさつ

 協議会は、小玉弘之常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、まず、8月の九州北部地方を襲った大雨並びに9月始めに関東を直撃した台風15号の被害に遭われた方々へのお見舞いと被災地支援の尽力に対して、感謝の意を表すとともに、「日医としても一刻も早い地域医療体制の復興に向けて支援を継続していく」とした。
 今後については、「10月の消費税率引き上げ」「12月の来年度予算編成、2020年度診療報酬改定率の決定」などを控え、10月8日(火)に開催する国民医療推進協議会総会において、医療・介護を提供するための適切な財源確保を政府に求めていく国民運動を展開することを諮り、承認が得られれば、12月6日(金)に「国民医療を守るための総決起大会」を開催するとして、協力を要請。
 その上で、横倉会長は、「かかりつけ医が中心となって『防ぎ・治し・支える医療』を国民に提供していく姿こそが、人生100年時代の医療を象徴する、今後目指すべき医療の一つの姿である」と強調。引き続き、都道府県医師会の協力も得ながら、かかりつけ医機能研修制度の一層の充実と、かかりつけ医の更なる普及・定着等を通じて、社会保障制度に係る国民的な議論をリードしていく考えを示すとともに、「『地域医療の再興』という言葉に込めた想いを、全国の医師会員と共に実現していくことができれば、未来を担う後進に対する責任を果たすことにもなる」として、その実現に向けた更なる協働を求めた。

報告

(1)日医標準レセプト(日レセ)の今後の対応について

 石川広己常任理事は、日本医師会ORCA管理機構株式会社の経営基盤を堅固なものとするため、オープンソースの考え方を維持したまま、周辺部分のサービスを有償化することなどを説明。今後はORCA管理機構に対して、①日レセユーザーへの丁寧な説明②日レセクラウド版利用者の増加③ORCA事業との親和性の高い新たな付加価値サービスの提供④各種サービスを統合的に利用できる医療機関向けICTポータルの構築―を求めていくとした

(2)医師資格証の今後について

 長島公之常任理事は、HPKIの普及はもとより、マイナンバーカードと医師資格の一体化を排除するためにも、現在の医師免許証を紙から「HPKI機能付きカード型」に切り替えることを日医の方針として、厚生労働省と協議中であることを説明。ただし、HPKIの更新と医師の資格更新が結びつくことへの懸念もあることから、①医師免許証とHPKI機能を分離する②既に取得した免許証は、カードへの切り替えの義務はないとする③資格更新制への不安・心理的抵抗を払拭する対応を行う―という条件を満たさない限りカード化には協力しないことにしているとして、理解を求めた。

協議

(3)HPVワクチン接種に対する日本医師会の考え方について
(4)HPVワクチン接種率向上に向けた取り組み
(5)HPVワクチン全面再開に向けて日本医師会が主体的に行動を

 茨城県、東京都、富山県の各医師会からのHPVワクチン接種に関する質問には、釜萢敏常任理事が、まず、日医として関係学会と調整の上、HPVワクチンの積極的勧奨の再開を求める声明を発表する意向を示した。
 その上で、富山県医師会からの要望(①市町村に対し、定期予防接種である旨の個別通知を行うよう求める②医学的に正しい情報周知のための自治体担当者への研修実施③都道府県医師会、郡市区医師会における医師向け研修の財政措置④厚労省のリーフレットの内容見直し等)に対して回答。
 ①については、厚労省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に出席している長島常任理事から、「全ての自治体で、対象者に対して個別に案内を送付すべきである」と強く要請したことを報告。②と④に関しては、同部会においてリーフレットを見直すことが決定しており、日医としてもその見直しに積極的に関わるとともに、自治体担当者の不適切な対応の改善について、国に働き掛けていくとした。
 更に、③については、毎年、日医から支出している「地域における予防接種啓発支援費」の活用を求めた。
 次に、茨城県医師会からのHPVワクチン接種の積極的勧奨を差し控えている状況に対する日医の対応、東京都医師会からの日医の確固たる意志表明と今後の行程表の提示を求める問いに対しては、「HPVワクチンに対する国民の幅広い理解が不可欠であることから、日医として正確な情報を強く発信する他、個々の会員には対象者や保護者に、分かりやすい丁寧な情報提供を行うことを求めていくとともに、郡市区医師会からは予防接種の実施主体である市町村に対し、対象者への個別情報提供と予診票送付を積極的に働き掛けて欲しい」と協力を求めた。

(6)全国の地域医療構想調整会議の開催状況について

 奈良県医師会からの全国の地域医療構想調整会議に関する質問には、釜萢常任理事が、昨年5月の厚労省「地域医療構想に関するワーキンググループ」に提出されたデータを基に、①各地域医療構想調整会議の議長を担うのは341区域中、郡市区医師会が71%、行政が23%②開催回数については、2017年度の構想区域当たりの平均は3・1回、2018年度は3・9回だが、1回から10回程度と地域によって差が見られ、調整会議ではなく、関係者だけの会議や意見交換会などを開催している場合もある③各地域の調整会議の事務局機能を担うのは保健所74%、都道府県本庁25%、市区町村1%―などを説明。
 日医として、引き続き、郡市区医師会が調整会議を主導し、都道府県医師会がそれを支える体制が、より強固となるよう努めていくとした。

(7)医師の働き方改革(医師の時間外労働規制)による救急医療への影響について

 新潟県医師会からの医師の働き方改革による救急医療への影響についての質問には、松本吉郎常任理事が回答。
 3月に実施した「医師の働き方改革と救急医療に関する日本医師会緊急調査」では、いわゆるB水準の制限時間内に収めることができる救急医療機関は約半数であったことなどを説明し、「今後、医師の働き方改革推進のための各種施策が順次実施されていく中で、都道府県・郡市区医師会が行政と連携し、支援が必要な地域や医療機関を早期に把握していくことが重要になる」とした。
 また、日医として、国に対し、特に人員や資金が限られている2次救急医療の担い手である民間医療機関への財政支援を要求したことを報告するとともに、「救急医療の確保は、医師の偏在対策、医師の働き方改革、地域医療構想、地域包括ケアシステムと関連している。制度それぞれに問題がないか、関連団体とも連携し、行政に意見を述べていく」との姿勢を示した。

(8)医師の働き方改革における医療勤務環境改善支援センターの役割について

 愛知県医師会からは、医師の働き方改革において医療勤務環境改善支援センター(以下、勤改センター)は医師の労務管理の支援を行い、都道府県の医師の働き方対策の中心と評価機能は地域医療対策協議会(以下、地対協)に委ねるべきとの指摘がなされた。
 これに対し、松本常任理事は、医療機関への勤務環境改善に関する直接的な支援は、勤改センターの役割であるとの見解を示す一方、現状では評価機能としては不十分だと指摘。機能、人材、予算の充実・強化に向けて、引き続き厚労省に要望していくとするとともに、都道府県医師会の関与を求めた。
 また、評価機能をどこが担うべきかの検討に当たっては、第三者性、医療分野・労働分野に関する専門的な知見等、総合的に検討することが重要だとするとともに、日医としても引き続き、将来の地域医療提供体制がより良いものになっていくよう努めていくとした。

(9)医師偏在指標と医師確保計画の策定について

 各都道府県がそれぞれの地域の実情に合わせて独自の目標を定め、それに向かって医師確保策を講じていくべきとする埼玉県医師会からの質問には、釜萢常任理事が回答した。
 同常任理事は、「大切なことは数値そのものでなく、地域で困っている状況を少しでも改善する医師偏在解消策だ」とする一方、全国的、長期的な視点に立って、医師のニーズ変化にも対応していかなければならないと指摘。
 今回、厚労省から示された医師偏在指標については、受療率といった全国値や主たる従事先の医師数を用いて算出するなど大きな問題点を抱えているとして、今後は、問題点を総ざらいし、2024年度からの次の医療計画の策定に向けて、逐次、国に対して改善策を示していく意向を示し、理解を求めた。

(10)救命救急医、小児科医、産婦人科医の養成について

 救急救命医、小児科医、産婦人科医の養成については、国策あるいは大胆な解決策を考える必要があるとする長崎県医師会の主張に対して、釜萢常任理事は、「国策として診療領域の選択制限や保険指定制限によるコントロール等を行うことは、事実上強制的手法による国家管理を容認することになり、絶対に避けるべきだ」と述べ、理解を求めた。
 また、「大胆な解決策」に関しては、「現時点では即効性のある対策を提示できる状況にない」とした上で、会内に改めて設置されることとなった「医師の団体の在り方検討委員会」において、医師会の組織力を高め、医師会が主導して、医師の偏在を解消し、将来の需給を見据えて医師を養成していくための方策を検討していく考えを示した。

(11)都道府県別・診療科別シーリングについて

 岡山県医師会からは、厚労省から示された都道府県別・診療科別シーリングの実施に当たっては、地域医療の確保のための弾力的な運用が必要としてその具体策が示された。
 羽鳥裕常任理事は、横倉会長が6月4日の定例記者会見において、①地域医療対策協議会の役割が極めて重要である②今回のシーリングについては、柔軟性、弾力性をもった対応が必要である―などの考えを示したことを紹介。岡山県医の提案は、この方針に沿うものであるとの認識を示した。
 更に、シーリングの緩和策が示された、9月11日の厚労省・医師専門研修部会においても、地域医療への影響を配慮すべき専門研修が、シーリングによってかえって地域医療を悪化させることのないよう、地域の意見を十分かつ的確に反映することを求めてきたことを説明。今後も、地域の切実な声が適切に政策に反映されるよう努めていくとして、理解を求めた。

(12)保険者・大手調剤主導の服薬指導・フォーミュラリー論への対応は

 県内の実例を紹介しながら、保険者・大手調剤主導の服薬指導・フォーミュラリー論に対する日医の見解を問う兵庫県医師会からの質問には、松本常任理事が回答した。
 同常任理事は、行政の指導や医師会との協議抜きに大手調剤チェーンが健康支援事業を主導することは、地域住民の健康の維持・向上に真意に寄与しているとは言えないと指摘。地域包括ケアシステムの一員として、かかりつけ薬剤師・薬局が活動するのであれば、かかりつけ医との連携を徹底するよう、厚労省に引き続き強く要望していくとした。
 更に、薬局が主導しているフォーミュラリーに保険者が関与することについては、営利企業を利するだけでなく、被保険者である国民に対する背信行為であると指摘するとともに、薬局や保険者のフォーミュラリーに厚労省等のお墨付きが与えられることのないよう、厳しく対応していくとした。

(13)地域における薬剤師・薬局の機能強化策への疑問

 山口県医師会は、「薬局に地域の健康拠点としての役割が果たせるのかは疑問」として、地域における薬剤師・薬局の機能強化策が国から示されることに対する日医の見解を求めた。
 長島常任理事は、同県医師会の指摘に理解を示した上で、今後、日医として、①一般用医薬品のスイッチOTC化については、「自覚症状があり、比較的短期間の服用や使用で改善が期待でき、自ら服用や使用の中止を判断できる」医薬品のみが承認されるよう、対応していく②健康サポート薬局における簡易血液検査の実態の把握を厚労省に求める③医療の質の低下や受診抑制による重症化など、国民の不利益につながるような議論には厳しく対応していく―ことを中心に取り組んでいくとした。

(14)検体検査精度確保のための精度管理台帳等作成の問題について

 群馬県医師会は、検体検査精度確保のための精度管理台帳等の作成に関して、説明会を行って得られた問題点を指摘するとともに、その改善策を提案した。
 これに対して、江澤和彦常任理事は今回の制度改正に当たり、一般の医療機関に極力負担がかからないように対応してきたことなどを説明。群馬県からの診療所等の外部精度管理事業への参加を促すべきなどの提案には賛同するとし、調査項目や参加方法について、会内の「臨床検査精度管理検討委員会」で随時検討していくとした。
 その上で、同常任理事は「今回の改正で、現場の円滑な医療体制への影響や、行政による立入検査で過度に厳しい対応があった場合には日医に知らせて欲しい」とするとともに、引き続き、医療現場における負担軽減に務めていく考えを示した。

(15)医療法第7条第3項の許可を要しない診療所の開設と保健医療計画における病床整備との整合性について

 神奈川県医師会からの医療法第7条第3項の許可を要しない診療所の病床の設置と保健医療計画における病床整備との整合性に関連して、①複数の有料老人ホームやサ高住との連携のみでも開設可能で、医政局通知の本来の趣旨と異なる開設がなされる可能性がある②「地域包括システム構築のために必要な診療所」の要件が実績要件で曖昧である③病床過剰地域で一つの医療法人が診療所を買収して有床診療所を開設し、同法人が運営する病院へ病床を転換することが可能―などの問題点が指摘された。
 小玉常任理事は、①について、「有料老人ホームやサ高住の入所者の緊急時の受け入れ可能な医療機関が他にあるか」なども確認しながら協議して欲しいと要請。②に関しては、開設前に実績を議論することは現実的に難しいとした他、③については、都道府県の行政指導の対象になるとの考えを示した。
 その上で、「有床診療所の地域医療における有用性を理解頂きながら、各地域の実情を踏まえ、都道府県において取り組みを行って欲しい」として、理解と協力を求めた。

(16)患者(及びその関係者)による不適切な録画・録音等への対応について

 秋田県医師会は、患者が診療中にスマートフォン等で撮影を行い、その動画や音声がSNSで拡散されることへの懸念を示し、日医の対応を求めた。
 平川俊夫常任理事は、各医療機関の管理者は自らの施設を包括的に管理する権利と義務があることから、この問題に対して何らかのポリシーを明らかにし、院内に掲示するなどしておくことが望ましいとの考えを明示。また、SNSなどで悪意のある投稿がなされ深刻な被害が生じる場合には、削除を依頼したり、投稿者に法的責任を追及する対応も必要になるとした。
 更に、この問題の対応について今後、日医内でも検討を重ねていく考えを示し、必要に応じて、会員・医療関係者、あるいは患者・国民に対する情報発信に努めていくとした。

(17)医療機関におけるキャッシュレス決済について

 医療機関におけるキャッシュレス決済に対する日医の見解を問う福岡県医師会からの質問には、長島常任理事がまず、「決して強制されるべきではなく、導入しやすい環境を整備することで、更に普及することが望ましい」との日医のスタンスを説明。
 その上で、普及させるための最大の課題として医療機関における手数料負担を挙げ、日医も参加している一般社団法人キャッシュレス推進協議会の「医療機関における普及促進プロジェクト」の議論の中で、「医療機関に負担が生じないような制度改革も含めた環境整備を、関係省庁に対して提言するよう求めている」と述べるとともに、今後も抜本的な解決策を関係省庁に求めていくとして、理解と支援を求めた。

(18)電子カルテの標準化について

 電子カルテの標準化を進めるに当たって、集められたビッグデータが悪用されるのではないかとの懸念が山口県医師会から出されたことに対して、長島常任理事は、まず、診療報酬審査のためなどに、データの閲覧や収集はできない仕組みになっていることなど、電子カルテ標準化の現状を説明。今後、地域医療連携ネットワークやオンラインの電子カルテのデータを、法令改正や制度の変更で審査のために利用しようとする動きがあった場合には断固反対していくとした。
 その上で、同常任理事は、電子カルテの標準化は、医療現場にできるだけ大きなメリットをもたらし、デメリットが生じないような形で推進していくとして理解を求めた。

その他

 その後、釜萢常任理事が、本年4月1日に設立した「日本准看護師支援センター」の進捗状況について報告するとともに、引き続きの理解と協力を求めた。

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