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令和2年(2020年)1月5日(日) / 日医ニュース

母体保護法の運営の適正化を目指して

母体保護法の運営の適正化を目指して

母体保護法の運営の適正化を目指して

 令和元年度家族計画・母体保護法指導者講習会が昨年12月7日、日医会館大講堂で開催された。
 平川俊夫常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(中川俊男副会長代読)は、「政府が全世代型社会保障制度改革を掲げ、成育基本法が施行されたことに伴い、産婦人科医には妊産婦の孤立を防ぎ、女性が安心して子どもを産み、育てるための環境づくりへのきめ細やかな支援等を行うことが求められるようになっている」として、その役割の重要性を強調するとともに、参加者に対しては、「本講習会の成果をぜひ、日頃の活動に役立てて欲しい」とした。
 来賓あいさつを行った木下勝之日本産婦人科医会長は、旧優生保護法が改正され、母体保護法が成立するまでの経緯や社会的背景を詳細に説明。
 旧優生保護法に基づき強制優生手術が行われていた問題に関しては、「大変お気の毒なことであったと考えている。医会としては、被害に遭われた方々にできる限りの支援をしたいと考えており、国が行う一時金を被害者に支給するための調査などに、ぜひ協力をお願いしたい」と述べた。
 引き続き、「母体保護法指定医師が知っておくべき法律知識―よく寄せられる質問・疑問に答えます―」をテーマとしたシンポジウムが行われた。
 落合和彦東京都医師会理事は、母体保護法に規定されている「胎児が、母体外において生命を保続することのできない時期」の基準について、周産期医療、医療機器の進歩により現在の「通常満22週未満」になるまでの経緯や、人工妊娠中絶・妊娠週数に関する考え方をQ&A形式で説明。「人工妊娠中絶は生命の否定につながる行為であり、母体保護法によってのみ施行できるものである」として、その遵守を求めた。
 前田津紀夫日本産婦人科医会副会長は、「母体保護法指定医師の指定基準」モデルが改定されたことにより、指定医師を取得する必要に迫られる医師が増加する一方で、研修機関における中絶手術の症例数が少ないことを問題視。その解決策として、連携施設の活用を求めるとともに、他府県にまたがる研修・技能研修履歴を適正に利用できる仕組みを検討していく必要があるとの考えを示した。
 日本産婦人科医会顧問弁護士の平岩敬一氏は、母体保護法に規定された人工妊娠中絶を行うために必要とされる「本人及び配偶者の同意」について解説。本人には未成年者も含まれるとした上で、未成年者の中絶には親の同意は不要であるとした他、未成年者であっても、同意の意味を理解する必要があり、その能力があるか否かを判断するのは医師であるとした。
 また、配偶者の同意に関しては、別居、調停中、離婚訴訟中であっても同意は必要とする一方、DVがある、強制性交罪等(強姦罪)が成立するといった場合には、例外として、その同意は必要ないとの判例が出されていることを紹介した。
 小林秀幸厚生労働省子ども家庭局母子保健課長は、旧優生保護法に基づき強制的に優生手術を受けさせられた方々への一時金支給に必要な診断書の作成等に対する協力を求めた他、「成育基本法施行後の動き(成育医療等協議会が設置され、『成育医療等基本方針』の策定に向けた議論が開始されるなど)」等、母子保健行政の最近の動きについて解説した。
 その後は、多くの参加者から、自身の経験に基づいたさまざまな質問・要望が出されるなど、シンポジストとの間で活発な質疑応答が行われ、講習会は終了となった。

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