松本吉郎常任理事は、医師の働き方改革検討委員会が会長諮問「医師の健康確保と地域医療体制を両立する働き方の検討―医師独自の健康管理・勤務環境改善策を中心に―」に対して検討結果を取りまとめ、3月6日に相澤好治同委員会委員長(北里大学名誉教授)より横倉義武会長宛てに提出したことを報告。「日医は、医師の健康確保とともに、国民の健康を守るため、地域医療提供体制を維持する視点が重要と繰り返し主張してきた」と強調した上で、その概要を説明した。
答申は、(1)医師の健康確保と地域医療提供体制を両立する働き方、(2)「医師の働き方改革に関する検討会」報告書の概要、(3)医療機関マネジメントの重要性、(4)産業保健活動の確実な履行、(5)健康確保のための具体的提言~補完的健康確保措置、(6)大学病院の重要性と医師の働き方、(7)まとめ―で構成されている。
(1)では、救急医療における問題について、都道府県・郡市区医師会が行政と連携し、支援が必要な地域や医療機関を早期に把握することが重要とするとともに、医師の副業・兼業については、医療の特殊性を考慮した上で、適切に議論が進められるべきとしている。
また、地域医療への影響を測る指標の必要性について、地域医療への影響の検証を令和6年度の新制度スタートまで待つのではなく、随時検証を行い、必要な対策を講じていくべきとしている他、時間外労働時間の上限規制の取り扱いについて、地域によって1860時間に収めることが困難なケースが発生する可能性があるとして、その原因を調査し、対応策を検討する必要があるとしている。
本答申の大きな柱の一つである(3)では、①マネジメントの意義②トップマネジメント―について、患者満足・従業員満足に目を向けた勤務環境マネジメントの実践が、離職防止と今後の安定した医療経営の鍵になることをトップ層に理解を促す必要性を指摘している。
(4)では、労働契約法において使用者の安全配慮義務が規定されており、産業保健活動もその義務に関連する活動であると説明。医療機関の産業保健活動を推進するためのポイントや産業医が行うべき優先事項等を挙げている。
答申の最大のポイントである(5)では、働き方改革、医師偏在、診療科偏在、地域医療構想、そして、医師の副業・兼業の取り扱いなどは複雑に絡み合っており、医師一人ひとりの働き方や健康にどのような影響を及ぼすかの予測は困難であると指摘。こうした個別性と予測困難性に対処できるよう、任意で各医療機関や医師が必要に応じて行う「補完的健康確保措置」を提言。きめ細かい医師の健康確保のため、個人、診療チーム、組織・施設に必要な取り組みを、①業務の量・質、業務の効率②労務管理③勤務時間制④健康管理⑤ワークライフバランス―に分けた具体的な取り組み例も示した。
また、(6)では、教育・研究・臨床を担う中核的医療機関である大学病院について、明確な位置付けがないことや現行法制における「専門業務型裁量労働制」が、医学部などの教員の働き方にうまく適合しないことを問題視。今後、大学病院のあり方を議論する際には、独自の働き方の制度についても併せて検討することや、教育・研究にも事務作業補助者を付けるなど本務に能力を発揮できる環境整備を行うこと等が必要としている。
(7)では、まとめとして、「医師の健康を基盤とした上での医療」の構築や心身に対する過重な負荷が掛からない対策の医療機関での確実な実行等を求めている。
なお、本答申については、同日午前中に開催された、厚生労働省の「第7回医師の働き方改革の推進に関する検討会」に資料として提出し、今村聡副会長がその内容について説明を行った。
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