令和2年度第2回都道府県医師会長会議が11月17日、WEB会議により開催され、「新型コロナウイルス感染症に対する今後の医療提供体制」「新型コロナウイルス感染症に関する種々の検討課題」のテーマを基に、活発な討議が行われた。 |
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第2回目となる今回の会議はCグループ(岩手県、福島県、栃木県、新潟県、山梨県、愛知県、大阪府、鳥取県、山口県、高知県、熊本県、沖縄県)、Dグループ(宮城県、茨城県、千葉県、石川県、岐阜県、三重県、兵庫県、島根県、徳島県、福岡県、大分県)に分かれ、グループごとの討議並びに全体討議が行われた。
会議は松本吉郎常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつした中川俊男会長は、新型コロナウイルス感染症の感染者数が再び増加の兆しを示していることについて、「地域の感染拡大の兆候をできるだけ早期に察知し、先手の対応をとっていかなければならない」と指摘するとともに、「今後も政府と協力して、新型コロナウイルス感染症対策に取り組んでいく」とした。
Cグループ「新型コロナウイルス感染症に対する今後の医療提供体制」について
Cグループでは柵木充明愛知県医師会長が議長、福田稠熊本県医師会長が副議長をそれぞれ務め、「新型コロナウイルス感染症に対する今後の医療提供体制」をテーマに、(1)診療・検査医療機関の整備、(2)厚生労働省、日本医師会への要望―の二つの論点について議論が行われた。
(1)では、栃木県医師会が「数はそろってきており、今後はどう機能させていくかが課題になる」とした他、高知県医師会は「診療・検査医療機関」である医療機関名を公表しても風評被害は起きていないことを、熊本県医師会は発熱患者等の相談に対応するため、郡市医師会に「受診案内センター」を設置していることを、それぞれ報告した。
(2)では、「診療・検査医療機関」を増やすための方策として、山梨県医師会は「補償制度の確立(労災保険の特別加入手続きの簡素化、持続化給付金の要件緩和)」「新型コロナウイルス感染症医療体制維持基金(仮称)の創設」等を、福島県医師会は一般診療所向けのマニュアルの作成を、それぞれ要望した。
大阪府医師会は、保健所機能の明確化・充実化を求めるとともに、「経済を動かしたければ、地域医療提供体制も同時に充実させる必要があることを国に対して要望すべき」と訴えた。
その後の全体討議では、年末年始の対応(石川県医師会)や医師が必要と判断した検査を拒否する患者が増えてきていること(神奈川県医師会)を心配する意見が出された他、愛知県医師会からは「救急医療情報センター」が「診療・検査医療機関」を紹介する役割を担っていることなどの説明がなされた。
これらの議論を踏まえてコメントした釜萢敏常任理事は、検査を拒否する患者について、国の分科会でもその問題点が指摘されていることを報告。また、診療マニュアルの作成を求められたことに関しては、日本医師会も関与して日本感染症学会が作成したマニュアルの活用を求めた。
今村聡副会長は、「医療機関休業補償制度」を新設すべく、民間保険会社と鋭意打ち合わせを行っていることを報告。「保険料をなるべく安く抑え、その保険料負担への公的支援を確保することで、当面の対応としていきたい」と述べるとともに、その活用を求めた。
Dグループ「新型コロナウイルス感染症に関する種々の検討課題」について
Dグループでは、河合直樹岐阜県医師会長が議長、空地顕一兵庫県医師会長が副議長をそれぞれ務め、「新型コロナウイルス感染症に関する種々の検討課題」をテーマとして、議論が行われた。
石川県医師会は年末年始にPCR検査を担う検査会社が長期の休みを取ることのないよう、日本医師会から国に要請することを要望した他、(1)PCR検査の結果を民間の検査会社から保健所に報告し、保健所から患者に結果の通知と陽性になった場合の対応を説明してもらう、(2)年末年始に限って、保健所が受診調整をする―ことを提案。羽鳥裕常任理事は、(1)について、患者情報の共有という課題はあるが、各地でも検討して欲しいとした他、(2)に関しては、第2次補正予算予備費で、受診・相談センターの代わりに土日祝日や夜間の電話相談を行う医療機関や医師会が位置付けられたこと等を説明した。
茨城県医師会が今後の課題として、(1)診療・検査医療機関を増やすこと、(2)介護施設で発生した際の緊急支援体制の整備―などを挙げたことに対しては、橋本省常任理事が(1)について、診療・検査体制確保事業補助金の交付申請書の作成方法を説明した資料を作成した他、申請書の作成が困難な医療機関には代行入力を開始していることを説明。他院の新型コロナウイルス感染症以外の患者受け入れについては、都道府県調整本部への関与や、重点医療機関と他院との役割分担、他の疾病の入院患者の転院調整等に関する主体的な役割を果たしてもらえるよう、改めて要請を行った。
また、(2)に関しては、江澤和彦常任理事が「行政主導により、都道府県自らが介護団体や事業所と連携し、人材確保に努めること」「利用者が感染した場合には、治療すべき時期を逸することのないよう対応すること」を厚労省に要望していることを報告。その他、自宅やホテル療養者の健康管理に対応するためにも、日頃から保健所との連携に努めて欲しいとした。
石川県医師会からの発熱患者が新型コロナウイルス感染症の検査で陽性と判明した場合の交通手段の確保に関する質問には、長島公之常任理事が、国も都道府県・消防機関に保健所との密な連絡等を求めているとし、日本医師会からかねてお願いしているとおり、地域医師会、保健所、消防機関の三者の連携体制の構築を求めた。
岐阜県医師会が新型コロナウイルス感染症の医業経営への影響を指摘し、税制上の対応等を求めたことに対しては、まず松本常任理事が特に小児に対する診療や、医療機関における感染防止対策を支援するような診療報酬や補助金、物品の供給支援など、必要な公的支援を政府・与党に強く求めていくとした。
また、宮川政昭常任理事は令和3年度税制要望において、新型コロナウイルス感染症対策に関する税制措置を求めていることを報告。その実現に向けた協力を求めた。
三重県医師会が医療機関や医療従事者等に対する風評被害の実態把握を求めたことに関しては、城守国斗常任理事が「日本医師会としても憂慮すべき問題であると考えている」として、情報把握・提供への協力を要請。その上で日本医師会として国民への理解を求めるため、「みんなで安心マーク」を作成したこと、中川会長にも出演してもらい、国民向けの動画を制作予定であることなどを説明した。
休業補償に関しては、日本医師会員の医療機関を対象として創設する休業補償制度について今村副会長が改めて説明を行った。同副会長は宮城県医師会より出された補償金額に関する意見に対して、今回の制度創設は低い保険料で早急に対応するための措置であるとして、理解を求めた。
その他、兵庫県医師会からは日本医師会がエビデンスに基づいた提言ができるよう、「日本医師会版の専門家会議」をつくるべきとの意見が出された他、山口県医師会からは県内の出生数が減少していること、鳥取県医師会からは県独自の休業補償制度が創設される予定であることなどの紹介がなされた。
閉会のあいさつを行った中川会長は、活発な討議に対する感謝の意を示した上で、「本日ご指摘のあった事項に関しては早急に厚労省などと協議を行っていきたい。今後も、『感染防止対策の徹底が最大の経済対策』との考えの下、取り組みを進めていきたいと考えているので、引き続きの支援と協力をお願いしたい」と述べ、会議は終了となった。