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令和2年(2020年)12月20日(日) / 日医ニュース

新型コロナウイルス感染症の感染状況を受けて

日医定例記者会見 11月25日・12月2日

新型コロナウイルス感染症の感染状況を受けて

新型コロナウイルス感染症の感染状況を受けて

 中川俊男会長は11月25日の記者会見で、「新規感染者数の増加傾向が更に強まり、各地で過去最多の水準となる中で、医療機関における新型コロナウイルス感染症の受け入れ可能病床は満床の状態にある」として危機意識を示すとともに、国が公表する病床占有率と現場感覚には著しいずれがあるとしてその見直しを求めた。
 中川会長はまず、11月18日の会見で呼び掛けた「秋の我慢の3連休」への協力に対する謝意を示した上で、「現在、全国各地で医療提供体制が崩壊の危機に直面しているが、2週間前には予想できなかった事態である。新規感染者数の増加傾向が更に強まり、各地で過去最多の水準となっている」と強調。特に北海道、首都圏、関西圏、中部圏を中心に深刻な状況であるとして、札幌市で起きた病院や福祉施設でのクラスターの事例や、医療機関で搬送の受け入れが困難となっている事例を紹介した。

国が公表する病床占有率は現場感覚とずれている

 国が公表する病床占有率ではまだ余裕があるように見えることに関しては、「この指標は、『即応病床』と『準備病床』を合わせた『確保病床』を分母として算出しているが、即座に患者を受け入れられる病床を分母とすべき。現場感覚とは著しいずれがある」と指摘。現実には、医療スタッフの不足もあり、新型コロナウイルス感染症の受け入れ可能病床は満床の状態で、脳卒中や心筋梗塞など他疾患の患者の受け入れが困難になりつつあるとの認識を示した。
 その上で中川会長は、これ以上感染者が急増すれば、新型コロナウイルス感染症の病床確保と、それ以外の疾病のための病床確保は両立できないと指摘。「今、新たな対策を講じなければ、感染拡大が全国的に波及する恐れがある。都道府県知事には国と調整の上、2週間後の状況を想定しながら、現在の地域の感染ステージを的確に判断し、必要な措置を講じて頂きたい」と要請した。
 一方、国民に対しては、緊急事態宣言発出時のような日常生活への強い制限を避けるため、改めて「人との距離」「マスク着用」「手洗い・手指消毒」「換気の励行」などの基本的な感染防止対策の徹底を求め、新型コロナウイルス感染症への対応に緩みが生まれないよう注意を促した。
 また、感染対策と社会・経済活動のあり方にも言及し、「重要なことは、バランスを取りながら両立させること。医療の専門家の立場としては、国民の生命と健康を守ることが第一であり、万全の感染防止対策を行うことが、結果的には一番の経済対策になるものと考えている」との見解を述べた。
 記者との質疑応答では、「Go Toキャンペーン」等の経済政策には肯定的な姿勢を示す一方、それが防止対策への意識の緩みをもたらす側面もあるとして、医療の専門家集団として引き続き粘り強く注意喚起していく考えを示した。

コロナを甘く見ることは危険

 12月2日の記者会見では、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザとの違い等を説明し、改めて国民に対して感染防止対策の徹底を要請した。
 中川会長は、まず、依然として同感染症には未知な部分が多いとし、政府に対して個人の健康のみならず、国民全体の健康や医療への負担、社会機能への影響を総合的かつ柔軟に検討することを求めた。
 国民のごく一部に、限定的な情報等から同感染症を軽視する向きがあることに対しては、「"コロナ観"を固定観念化させてしまうのを懸念している。若年層でも重症化等のリスクは決してゼロではなく、エビデンスがはっきりしない状態で甘く見ることは危険だ」として、注意を呼び掛けた。
 また、同感染症は季節性インフルエンザと比較されがちであるが、「季節性インフルエンザは例年より大幅に少ない状況が続いているものの、その状況がこれからも続くとは限らない」とした上で、季節性インフルエンザが激減する程の感染防止対策を行っているにもかかわらず、感染拡大を防ぐことのできない同ウイルスの感染力の強さを強調。「仮にマスク無し、手洗いも励行しない以前のような生活を送っていたとすれば、感染の拡大はとても今のような程度では済まなかったのではないか」と、治療や予防法が確立している季節性インフルエンザと同様には扱えない理由を解説した。
 その上で、医療現場で働く医療従事者の心身の疲労が既にピークに達している中で、これ以上感染者が急増すれば、同感染症とそれ以外の疾病への医療提供の両立が不可能となると指摘。重症患者に対応する医療従事者の養成と確保を求めるとともに、11月25日の記者会見でも提言した、病床占有率の分母を確保病床数から即応病床数に変更し、最新の現場の実態をリアルタイムで把握していくべきであるとした。

菅総理に重症患者への対応を要請

 更に、中川会長は12月1日に菅義偉内閣総理大臣と行った会談の内容にも言及。重症患者に対する医療提供体制の早急な整備を求めたことに対して、「全力で当たる」との回答があったことを紹介し、日本医師会としてもリアルタイムに全国の医療現場との連携、調整を全力で行っていく意向を示した。

師走が正念場

 中川会長は最後に、「日本医師会は国民の不安をいたずらに煽(あお)っているわけではない」として、これからもできる限り確かな情報を総合的に判断して発信していく意向を表明。国民に対しては「新たな年をいつものように迎えるためには、まさに師走が正念場になる」として、改めて基本的な感染防止対策を徹底するとともに、同感染症を正しく恐れ、冷静に行動することを求めた。

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