明けましておめでとうございます。
会員の皆様におかれましては、コロナ禍において通常とは異なる新年をお迎えになられている方も多いと思います。昨年は、新型コロナウイルス感染症が世界中に猛威をふるいました。わが国においても国民は新しい生活様式を求められていますが、新型コロナウイルス感染症は完全には終息しないともいわれ、今後ある程度の収束を迎えたとしても、現在の就業形態を含む生活様式の一部は定着していくものと考えられます。
そのような中、会員の先生方におかれましては各地域で行政と協力し合い、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐさまざまな取り組みに日々ご尽力下さっていることに深く感謝申し上げます。わが国に限らず、医療従事者のこのような献身的な努力に対して、多くの国民から感謝とエールが送られたことはご高承のとおりです。
さて、新たな執行部が昨年6月27日に発足してから6カ月が経ちました。この間、新型コロナウイルス感染症への対応、そのことに連動した医療機関経営の危機的状況への対応、オンライン診療への対応など、激動する社会情勢の中、私は、国民、地域住民の健康を第一に、全国の医師会ひいては会員の先生方と連携して、執行部一丸となって柔軟かつ強靱な対応力をもって業務を遂行して参りました。
また、昨年9月16日に菅内閣が発足いたしました。菅義偉内閣総理大臣が述べられた「目指す社会像は、自助、共助、公助、そして絆だ」との言葉は、わが国の社会保障の根幹である国民皆保険が、自助、共助、公助の三要素から成り立っていることに通じるものがあります。日本医師会は改めてこの精神を全うし、国民が安心して医療を受けられることを基本として、これら三要素が適切なバランスを保ちつつ国民皆保険が守られるよう、しっかりと対応して参ります。そのためにも、これまで以上に国民に寄り添い、医師個人が加入する専門家集団の立場から発信を続けて参ります。
菅総理は、オンライン診療の恒久化に言及されています。日本医師会の基本スタンスとして、解決困難な要因によって医療機関へのアクセスが制限されている場合に、"対面診療を補完するもの"という考えに変わりはありません。オンライン診療を行う上での「安全性と信頼性」はかかりつけ医機能を基軸にするべきでありますし、今後、地域医療を担う医師、患者・国民の双方が、真に納得することのできる仕組みづくりを目指して、政府や国の審議会における議論に臨んでいきます。
一方、ICTやデジタル技術など、技術革新の成果を、医療の安全性、有効性、生産性を高める方向に向けることは大変重要な視点と考えています。今回の新型コロナウイルス感染症への対応においてはFAXが主に利用されるなど、日本の医療分野でのICT化の遅れが浮き彫りとなりました。平時、有事の双方で、良質かつ適切な医療が提供できるよう、医療のICT化を積極的に進めて参ります。
日本医師会は、今後の医療政策策定に当たっては、初期段階よりしっかりと関与していくことはもちろん、適切な合意形成プロセスに則り、政策遂行に当たっていく所存であります。更に、地域医師会を全面的にバックアップし、医療現場が安心して医療に集中できるようさまざまな施策を国に提案して参ります。
会員諸氏の深いご理解と更なるご支援をお願い申し上げますとともに、本年が国民にとって明るい展望が開ける年となりますことを祈念し、新年のごあいさつといたします。