日本医師会はこのほど、ハーバード大学公衆衛生大学院武見国際保健プログラムの設立30周年記念事業として、近隣の東洋文庫との共同企画により『日本古医書集』を刊行した。
本書は、酒井シヅ順天堂大学医学部医史学名誉教授、坂井建雄日本医史学会理事長という日本医史学の重鎮である両先生の長年にわたるご尽力により完成したもので、300ページを超える医学古書合本の大作となった。
日本医師会の初代会長である北里柴三郎博士は、1853(嘉永5)年、肥後国(熊本県)阿蘇郡小国郷北里村で生を受け、18歳の時に熊本医学校(現熊本大学医学部)でオランダの予備海軍軍医であったコンスタント・ゲオルグ・ファン・マンスフェルト(1832―1912)に師事し、医学を志した。
その後はマンスフェルトの勧めにより、東京医学校(現東京大学医学部)に入学、内務省衛生局勤務を経て、1886(明治19)年ドイツに留学し、ローベルト・コッホの下で細菌学の研究に励んだ。1892(明治25)年に帰国した後、伝染病研究所長として細菌学、衛生学の発展に大きく貢献された。
北里博士が蘭学のマンスフェルト医師に師事し、医学の道に進まれたことが今日の日本医師会の礎(いしずえ)を築く端緒となったことを想起すると、本書の刊行も意義あるものと思われる。
本書にはその他、日本で最初の人体解剖を行った山脇東洋の『蔵志(ぞうし)』を始め、主に江戸から明治にかけての医学古書が網羅的に収載されている。そこには、医学に対する日本人の探求心、繊細さ、緻密さ、勤勉さが随所に見受けられる。
本書は非売品となっているが、都道府県医師会始め、国内外の関係研究機関、医学部図書館等に寄贈することになっているので、ぜひご高覧頂きたい。
なお、本書の電子版(権利関係で一部を除く)は、日本医師会ホームページ(医師のみなさまへ/国際活動/武見プログラム/日本古医書集)に掲載しているので、ぜひ、ご参照願いたい。