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令和3年(2021年)5月5日(水) / 日医ニュース

医師の健康と地域医療が両立する制度の実現を目指して

医師の健康と地域医療が両立する制度の実現を目指して

医師の健康と地域医療が両立する制度の実現を目指して

 令和3年度都道府県医師会医師の働き方改革担当理事連絡協議会が4月1日、日本医師会館小講堂で開催され、WEB配信を行った。
 当日は都道府県医師会の担当理事を始めとした医師会関係者、病院団体、全国社会保険労務士会連合会等、815名が視聴した。

 松本吉郎常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで中川俊男会長は、通常国会において「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」が上程され、衆議院厚生労働委員会で法案審議が始まったことに触れ、「重要な局面を迎えており、多くの医療関係者に制度の理解を浸透させることが極めて重要と考え、本協議会を開催した」と開催に至る経緯を説明した。
 その上で、中川会長は、「医師の働き方改革は先延ばしにできない課題であり、まずは医師の健康管理等、できることから取り組むことが重要である」として、引き続き医師の健康と地域医療が両立する制度の実現を目指して、必要な措置を国に強く働き掛けていく意向を示した。

議事1:医師の働き方改革に関する議論の経緯

 今村聡副会長は、医師の健康確保に関する日本医師会の取り組みとして、まず、平成18年度に、当時、日本医師会の広報担当常任理事であった中川会長が、医師の厳しい勤務環境を訴えたテレビコマーシャルを制作し、社会にインパクトを与えたことを紹介。
 また、平成20年度には、会内に「勤務医の健康支援のための検討委員会(旧名称:勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会)」を新設。勤務医1万人を対象としたアンケートを実施した他、職場環境改善ワークショップの開催や勤務医の労務管理に関する分析・改善ツールを作成し、関係省庁へ働き掛けを行った結果、平成26年6月には、医療機関の管理者の勤務環境改善等への取り組みを努力義務として明記した改正医療法が成立したことなどを説明した。
 更に、平成30年6月に成立した働き方改革関連法において、時間外労働の上限規制の導入がなされ、医師の取り扱いについては、2年後を目途に規制の具体的あり方等を検討し、改正法施行期日の5年後(令和6年4月)を目途に規制を適用するとされたことにも言及。3月24日の衆議院厚生労働委員会において参考人として意見陳述し、この問題に関する日本医師会のスタンスを説明したことを報告した(別記事参照)

議事2:地域医療介護総合確保基金

 続いて、今村副会長は、働き方改革を行うには財政支援が必要であるとして、前回の診療報酬改定時に地域医療介護総合確保基金の対象事業として「勤務医の働き方改革の推進に関する事業」が新設されたこと、また、その対象医療機関については、年間救急車受入件数に応じて診療報酬と基金事業のそれぞれの対応になることを説明。
 加えて、令和3年度地域医療介護総合確保基金(医療分)の配分方針及び調査票等の作成に関する事務連絡とQ&Aを詳説し、都道府県医師会に対して情報の周知を依頼するとともに、「医療機関においても申請手続きを進めて欲しい」と呼び掛けた。

議事3:厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会中間とりまとめ」

 次に、城守国斗常任理事が令和6年4月から医師に適用される時間外労働の上限規制の制度設計について、「医師の働き方改革に関する検討会」においては、時間外労働の上限を年間1860時間とすること、いわゆるA水準、B水準、C水準のフレームワークの大枠を取りまとめ、その後、持ち越しとなっていた審査組織、評価機能や各水準の指定と適用を受ける医師、追加的健康確保措置などは、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で議論されたこと等を説明。
 また、対象医療機関の指定要件や各水準の指定と適用を受ける医師など、総合的な検討が必要であるものに関しては、厚労省医政局、労働基準局が所管している検討会や中医協、社会保障審議会の場でも検討されたとして、その内容を概説した。
 更に、時間外上限規制が施行される令和6年4月に向けた行程表を示し、「時間外労働が年間960時間を超える医師がいる医療機関においては、第三者評価を受審するためにも令和3年度内には時短計画を策定するなど早めに取り組んで欲しい」と呼び掛けるとともに、「日本医師会としては、厚労省に対して時短計画策定のための分かりやすいガイドラインを示すことを引き続き求めていく」と述べた。

議事4:医師の働き方改革における個別論点(評価機能事業、宿日直・研鑽(けんさん)の取扱い、兼業・副業等)

 松本常任理事は、医師の働き方改革における個別論点として、①評価機能による評価の準備②C―2水準の審査組織③個別の主な留意点(労働時間の把握・36協定・安全衛生管理体制)④宿日直の取扱い⑤兼業・副業⑥研鑽の取扱い⑦様々な労働時間制度―を挙げ、その内容を詳細に説明した。
 ①では、法律が成立すれば、厚労大臣の指定の下、医師の労働時間短縮の取り組み状況を客観的に評価し、必要な取り組みを促す機能(評価機能)の設置が求められることになるとして、その組織案と今後のスケジュール案等を解説。同常任理事は、「評価のアウトカムだけでなく、ストラクチャー、プロセスも大切となる。働き方改革に取り組んでいる医療機関を支援していくことが重要であり、そうしたことに資する評価機能であるべき」との見解を示した。
 ②では、厚労省の委託等の事業として、各領域の関連学会が参加して、技術的助言を得ることなどが検討され始めており、日本医師会もその検討の場に参画していることを紹介した。
 ④では、労働基準法上の「宿直」は、「宿日直許可」がなければ実労働時間として算定することになるが、許可のある当直(宿日直)は労働時間に含めないこととなっており、勤務間インターバルも取れるため、許可申請をして欲しいと訴えるとともに、宿直許可が得られた事例については、日本医師会としても集約していきたいとした。
 ⑤では、労働時間管理は原則的に自己申告となるため、連続勤務時間制限、勤務間インターバルを遵守できるシフトを組む必要があるとした。
 その上で、松本常任理事は、「医師の働き方において、今後の課題となっている専門労働型裁量労働制における自院内及び副業・兼業先の医療機関での宿日直業務、C―2水準については幅広い観点で考える必要があり、しっかり検討していきたい」と述べた。
 その後の協議では、事前に寄せられた新制度施行の猶予や各水準の医師の把握と管理などに関するさまざまな質問に対して、松本常任理事から回答を行った。
 最後に総括を行った猪口雄二副会長は、地域医療介護総合確保基金の中で、医師の働き方改革に関する区分Ⅵの積極的な活用を呼び掛けるとともに、「医師の働き方改革は取り組むべきことを少しずつ進めていく必要はあるが、結論ありきで拙速(せっそく)な議論とならないよう、医療現場の実態も踏まえて慎重に取り組んでいく」との姿勢を示し、理解と協力を改めて求めた。

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