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令和3年(2021年)4月27日(火) / 「日医君」だより

経済財政諮問会議等の議論に見解示す―日本医師会

 内閣府の経済財政諮問会議で4月26日に社会保障改革が議論された。また、これに先立ち、4月15日には財務省の財政制度等審議会財政制度分科会でも社会保障に関して議論が行われた。

 これに対して、日本医師会では、議論の内容の中で特に問題と思われる(1)医療機関の減収分の補てん、(2)かかりつけ医機能、(3)民間病院への対応、(4)リフィル処方箋―の4点について、見解を取りまとめ、4月27日に公表した。以下はその全文である。

2021年4月27日
経済財政諮問会議等の議論に見解示す
公益社団法人 日本医師会

 
 4月26日に内閣府の経済財政諮問会議で社会保障改革が議論されました。これに先立ち、4月15日には財務省の財政制度等審議会財政制度分科会でも社会保障に関して議論が行われました。
 新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療提供体制と、新型コロナウイルス感染症対策以外の平時の医療提供体制が、車の両輪となって国民の生命と健康を守らなければなりません。
 現在政府で行われている議論のうち、日本医師会は以下の点について特に問題であると考えています。

1.医療機関の減収分の補てんについて
 病院の収入の減収分を速やかに補てんすることは是非やっていただかなくてはなりません。診療報酬のみならず、補助金も含めて活用し、柔軟に対応していただきたいと思います。
 併せて、全ての医療機関が地域を一体となって支えており、新型コロナウイルス感染症に対応しています。一般の患者さんの受け皿があってこそ、新型コロナウイルス感染症重点医療機関等を確保、拡大できるのであり、そのためにも、後方支援医療機関も含めて、地域を一体となって支えている医療機関への支援も不可欠です。
 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、医療機関は感染防止に万全を期しつつ診療に当たっており、そのための費用も発生しているため、コロナの影響がない過去の実績を単に補てんすればよいというものではありません。
 新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる病院だけでなく、地域を一体となって支えている医療機関も経営が逼迫しており、支援対象はできるだけ広く捉えていただきたいと思います。
 緊急包括支援交付金については対応が遅かったという指摘もありますが、既存の枠組みを超えたものであり、新型コロナウイルス感染症患者に対応する医療機関からは、大変助かったとの意見をいただいております。
 一方で、4月15日の財政審資料は、一点単価の見直しに言及していますが、一点単価を変えることは、公的医療保険制度による国民皆保険の根幹を揺るがし、形骸化させるものであり、絶対に容認できません。
 なお、財政審資料では概算払いに関する当時の日本医師会の要望が引用されています。これは当時、6月の賞与支払いを控え病院の資金繰りが非常に厳しかったことから緊急対応を求めたものであります。その後様々な支援策の議論が補正予算編成等で積み重ねられて、現在の診療報酬、補助金のハイブリッド対応となっています。

2.かかりつけ医機能について
 かかりつけ医が行う感染症への対応、予防・健康づくり、受診行動の適正化、高齢者への医療など、地域の医療を多面的に支える役割をしっかりと評価すべきです。
 フリーアクセスは国民皆保険を支える大きな柱であり、コロナ禍において、経済財政諮問会議や財政審が求めているように、かかりつけ医機能を制度化すれば、フリーアクセスを阻害し、以前後期高齢者医療制度導入のときに見られたように国民の理解を得られず、大混乱を招くおそれがあります。
 2008年に施行された後期高齢者医療制度における後期高齢者診療料は、慢性疾患を持つ複数の病気にかかっている高齢者の主治医を限定してフリーアクセスを奪いかねず、また、医学管理等、検査、画像診断、処置を包括して医療費抑制につながりかねないことなど、患者にとって必要な医療が制限されるとして批判を浴びました。

3.民間病院への対応について
 あるべき医療提供体制の姿は、新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療と平時の医療の両立です。
 感染拡大等の緊急時であっても救急医療を含めた通常医療の需要が大きく減少することはありません。多数の民間中小病院は、通常医療を分担することで国民の生命と健康を守っています。また、日本医師会・四病院団体協議会・全国自治体病院協議会による「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」は本年2月3日に役割分担を推進する方策を取りまとめましたが、現在、多くの民間病院が中等症・軽症や後方支援病床に対応しつつあります。地域の診療所も検査、宿泊・自宅療養やワクチン接種を担い、感染拡大の防止、患者の増加抑止に大きな役割を果たします。
 重要なのは、重症・中等症・軽症や後方支援等、あるいは緊急時対応と通常医療との役割分担と連携です。それは、強制的な手段によって実現されるものではありません。知事の権限強化による強制的・硬直的な患者受入等は、かえって現場に混乱を招き、医療提供体制を崩壊させかねません。

4.リフィル処方箋について
 リフィル処方は、慢性疾患患者の疾病管理の質を下げるリスクがあり、慎重な検討が必要です。リフィル処方をする医師は薬を長期間出してあまり患者を診ない医師ということになります。受診控えが起きている今こそ、しっかりと診察を行っていくべきと考えます。

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