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令和3年(2021年)5月20日(木) / 日医ニュース

新自由主義経済学者の大罪

 新型コロナウイルス感染症が拡大する日本では、初期段階でPCR検査の少なさを含めた保健所の対応能力に、その後は、病院の患者受け入れが拡大しないことに批判が殺到した。
 その中心には、これまで規制改革を推進してきた新自由主義経済学者と称する人達がいる。この人達は過去20年余り、小さな政府をスローガンにして、保健所の削減、PCR検査を行う衛生研究所の人員や予算カット、更には聖域なき構造改革と称して、医療費削減を強く推進した。
 このため、公的病院は整理され、民間病院はギリギリの経営を余儀なくされてきた。彼らが混乱を招いた元凶にもかかわらず、素知らぬ顔でコロナ後は感染症対策ではなく、無制限のオンライン診療を始めとする医療のデジタル化が医療のあるべき姿だと主張するに至っては、社会に有害な犯罪的存在だと言っても良いのではないか。
 これまで彼らの主張を無批判に伝えてきたメディアも同罪だろう。
 医療や教育などは「社会的共通資本」であり、市場に委ねてはならないと主張されてきたのは経済学者の故宇沢弘文先生である。「欲望の資本主義4」(東洋経済新報社)の中で、ノーベル経済学賞受賞者でもあるコロンビア大学のジョセフ・E・スティグリッツ教授は、近視眼的で効率性のみを追求してきた新自由主義経済学者の政策を、社会の格差と分断を招くものと批判し、早くから「社会的共通資本」を提唱してきた元シカゴ大学教授宇沢先生を心の師だと述べている。

(撥)

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