旅行です。
とても好きなんです。
学生時代、毎年夏は長期旅行に行っていました。割とマニアな一人旅です。あの当時よくあった(今でもあるとは思うのですが)ユースホステルのような安宿を利用しながら、1カ月単位で回るというスタイルでした。特に夜行列車を利用しての移動が大好きで、よく乗りました。夜遅くのターミナル駅の雰囲気、今でも思い出します。
当然寝袋も持っていましたし、靴が濡れたらバックパックからぶら下げて、干しながらビーチサンダルで歩いていましたし、今と違って現地に行ってから当日宿を決めるという、今から考えたら、ありえない旅行でした。
当時のヨーロッパは国をまたぐごとにパスポートコントロールもありましたし、トラベラーズチェック(懐かしい!)から現地通貨に換金しないと水すら買えないので、国をまたいで夜遅くや早朝に着いた時のために常に水やスナックを持ち歩き、ちょっと危険を感じる地域では、常に眉間にしわを寄せて小走りに移動し、日本人の気配を見せないという小技まで駆使していました。「東側」という今の若者には「??」というエリアも多くあり、そういう国ものぞきに行きました。
女の子の一人旅はどこでも注目の的で、絶えず誰か話し掛けてくるため、その土地の簡単な単語など常に覚えるようにしていました。特に、年配の女の人達がフレンドリーで、田舎では地図なんか広げようものなら、頼んでもないのに老人が周囲に集合して色々教えようと騒ぎになったりと......日本とは違う密がよくあり、広げずにこっそりとした確認が時に必要なほどでした。
家族や友人との旅行はとても楽しいのですが、他の人とはほとんど話しませんよね。その当時も友人と旅行に行った時はあんなに話し掛けられなかったので、その土地を楽しむには一人旅の方が良かったんです。確かにこの大津でバックパックの女子が地図を見ていたら、声を掛けたくなると思うので、この年齢になり、彼らの気持ちが分かるような気がします。
そんなマニアな私も、卒業してからは当然そんな時間もなく、また海外旅行に行き始めたのは、子どもが中学生になってからです。ホテルはネットで予約できるし、写真や口コミも確認できるし、位置情報から経路探索可能だし、何と便利になったのかと感動しました。しかし、すべてWi-Fiがつながることが前提です。ドイツとスイスをレンタカーで回った時は、マニアックな田舎が多かったので、Wi-Fiがつながらず、その日の宿が予約できず困ることが数回あり、年配の母がグッタリしてしまいました。ドイツのアウトバーンはビックリするほど怖かったし。
実はこの4月も兄の定年旅行にかこつけて旅行を予定していました。夫に留守番を頼み込んで、兄と年配の母を連れての3人の個人旅行です。大好きな夜行列車も含めて、今度は全ての宿を予約していたのですが......コロナで飛行機は飛びませんでした。バルセロナ・パリ・ベニスという今となっては少し早く出発していたら、戻って来られなかったようなルートで予定していたので、残念でしたが、もし行っていたら、年配の母や、ヘビースモーカーの兄は違う意味で戻ってこられなかったかもと気を取り直しています。
個人で航空便を取っていたので、バウチャーの発行やら英語でめんどくさくて、また「ツアーにしとけば良かった......」と後悔しましたが、きっと次も個人旅行になるでしょう。趣味ですから。なので、世界的なコロナ対策を切望しています。もちろん。
(一部省略)
滋賀県 大津市医師会誌 第505号より