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令和3年(2021年)6月20日(日) / 日医ニュース

全国の好事例を横展開しワクチン接種を推進していく考えを表明

全国の好事例を横展開しワクチン接種を推進していく考えを表明

全国の好事例を横展開しワクチン接種を推進していく考えを表明

 中川俊男会長は6月2日、定例記者会見を行い、新型コロナワクチンの接種が本格化している昨今の状況について、日本医師会の見解を説明。全国の医師会から寄せられた課題や好事例を基に、ワクチン接種の推進に全力で取り組む考えを示した。

 中川会長はまず、東京都や大阪府の大規模接種センターにおいて、自治体との二重予約等により直前にキャンセルが出る問題が起きている状況に言及。「大規模接種センターなどに重複して予約された場合には、余裕をもってキャンセルの連絡をしてもらいたい」と述べるとともに、「現在、ワクチンの供給量は十分確保されており、接種できる場所の選択肢も増えてきている。希望される方は必ず接種を受けることができるので安心して欲しい」と呼び掛けた。
 また、地域の医師会やかかりつけ医等の医療機関では、ワクチン接種のスピードアップに向けて総力を挙げて取り組み、その機動力も発揮されてきていると強調。その具体例として、和歌山県、東京都小金井市、福島県相馬市の事例を紹介し、それらの事例に共通していることとして、実施主体の市町村と医師会による連携体制が以前から機能していることが挙げられるとした。
 更に、ファイザー社製のワクチン「コミナティ」の添付文書が改訂されたことに触れ、2~8度で1カ月間の冷蔵保存が可能となったことで、医療機関にとっても使い勝手が良くなったため、今後、ワクチン接種について、かかりつけ医による個別接種が進むとの見通しを示し、「引き続き、地域の実情に応じて、集団接種と個別接種を適切に組み合わせて実施してもらいたい」と述べた。
 一方、集団接種について、接種会場での担い手不足が指摘されていることに関しては、接種会場では、受付、予診、薬剤の調製や注射器への充塡(じゅうてん)、接種、健康観察など、さまざまな職種が接種の「担い手」となっており、必ずしも注射の打ち手のみが不足しているとは限らず、地域によってもその状況は異なることを指摘。現在、多くの医療従事者がワクチン接種に協力の意向を示し、準備を進めていることから、この問題は徐々に解消されていくのではないかとの見方を示した。
 また、「接種会場の一連の流れがうまくマネジメントできていない」「初見の人は予診に手間取る」といった集団接種会場の流れが円滑に進まない事例が見られることについても、その解決策が明らかになってきていると説明。それら各地域で工夫している取り組みや課題等に関する情報を、地域の医師会から報告できるよう、日本医師会のホームページ内に新たなシステムを設置したことを報告し、集まった事例を今後、全国の医師会に横展開することで、接種の推進を図っていきたいとした。
 中川会長は最後に、接種を希望する人が、速やかに接種を受けられるよう、学校や職域といった、あらゆる場面で接種を受けられる体制づくりが今後ますます必要になってくると指摘。「引き続き、幅広い関係先と緊密な連携を取りながら、全国の医師会や会員の先生方と力を合わせて、接種体制の整備を更に進めていく」との考えを改めて示し、その支援と協力を求めた。

多重予約問題の解決のため、 ウェイティングリストの作成を提案―猪口副会長

210620a2.jpg 同日の会見に出席した猪口雄二副会長は、新型コロナウイルスワクチン接種の現状について説明した。
 集団接種会場や病院における、医師、看護師、薬剤師など医療従事者のチームによる接種については、非常に効率的である一方、担い手の求職とのマッチングがうまくいっていない事例が多く見られると指摘。医師、看護師を始め、協力の意向を示している医療従事者は多く、「日本医師会女性医師バンク」「都道府県のナースセンター」「医療のお仕事Key-Net」などの活用等により、マッチングの問題は解決するのではないかとの見方を示した。
 また、同副会長は、現在問題となっている多重予約によるキャンセルの問題についても言及。予約は1カ所という原則はあるものの、当日の体調面でのキャンセルを含め、現実的にはキャンセルをゼロにはできないことを踏まえ、「接種会場等におけるキャンセル対応として、いわゆるエッセンシャルワーカーと呼ばれる方を中心とした、簡単なウェイティングリストのようなものを作成することが一つの解決方法になるのではないか」との考えを示した。
 更に、ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンの取り扱いの変更やモデルナ社製のワクチンの登場を受けて、今後は職域や学校などでの接種も行われる見通しとなったことを踏まえ、「日本医師会として、そういった場での接種を希望する方が速やかに接種を受けられる体制づくりにも協力していきたい」と述べた。

ワクチン接種推進のための好事例

●和歌山県医師会
 郡市医師会と自治体が連携し、地域の実情に応じた接種体制を構築している。個別接種に多くのかかりつけ医が携わっているだけでなく、集団接種では、会員が休日返上で出務するなど、医師会が総力を挙げて取り組んでいる。

●小金井市医師会(東京都)
 市内に大きな医療機関がなく、かかりつけ医による個別接種を重視しており、そのことが接種の加速につながっている。
 日常の診療に支障を来さないように考慮しつつ、かかりつけの患者が受診した際、「今度受診する時に一緒にワクチンも接種されますか」と聞いたり、電話をしたりして、患者の意向にきめ細かく対応している。

●相馬郡医師会(福島県)
 市と医師会、医療関係者が緊密に連携を取り、地区単位で2回のワクチン接種の日時を指定して、原則、集団接種で行う独自の方式、いわゆる「相馬モデル」を導入している。
 会員は午後を休診にして医師、看護師、事務職がチームで出務し、市からは休業補償金が支給されている。接種当日の予診をスムーズに行うため、接種券を郵送する際に事前に予診票をかかりつけ医に確認してもらうよう呼び掛けている。接種日時を指定することで、予約の混乱や、接種を受ける時の待ち時間もなく、非常にスムーズに接種が行われている。
 立谷秀清相馬市長は「一番大事なことは、普段からの行政と医師会との信頼関係である」と指摘している。

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