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令和3年(2021年)7月5日(月) / 日医ニュース / 解説コーナー

AIホスピタルの社会実装と普及を目指し医療AIプラットフォームの試行運用を開始

AIホスピタルの社会実装と普及を目指し医療AIプラットフォームの試行運用を開始

AIホスピタルの社会実装と普及を目指し医療AIプラットフォームの試行運用を開始

 日本医師会は「AIホスピタル」の社会実装に向けた取り組みとして「日本医師会AIホスピタル推進センター」の活動を開始しているが、このほど、医療AIプラットフォームの試行運用を行うため、新たにホームページを開設し、医師の参加募集を開始することとなった。
 そこで、今号では医療AIプラットフォームの試行運用の内容と今後の見通しについて、今村聡副会長に話をしてもらった。

 2018年度の内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期において、医療分野におけるSociety5.0の実現に向けた課題として「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」研究が採択されました。
 研究の目標は「AI ホスピタルシステム」を開発・構築・社会実装することにより、高度で先進的な医療サービスを提供することで、医療機関における効率化を図り、医師や看護師等の医療従事者の抜本的な負担の軽減を実現することにあります。
 この研究はその後、がん研究会プレシジョン医療研究センター所長である、中村祐輔プログラムディレクターのリーダーシップの下、情報技術やセンサー技術、音声の文書化など多彩な研究が着実に進められてきました。
 現在では、研究期間中に内閣府としての事業を社会実装させるための取り組みを加速させることを目指し、研究以外で開発されている医療AIも搭載するためのプラットフォームや、プラットフォーム事業に対するガバナンス体制の構築に向けた具体的な検討が行われています。

「日本医師会AIホスピタル推進センター」の果たす役割

 このような状況の中で、日本医師会では本研究の普及と推進を支援していくため、昨年「日本医師会AIホスピタル推進センター」を設立したわけですが、その役割について改めてご説明したいと思います。
 本研究で社会実装に向けた検討が進んでいる医療AIプラットフォームは、これまでの電子カルテシステムのように、さまざまな企業が独自の仕様で、個々の医療機関にカスタマイズして提供されてきたことを反面教師として、質の高い医療AIサービスを多くの医療機関等に、廉価かつ公平に提供するための医療AIサービス基盤と、新たな技術開発のためにデータを提供する開発基盤で構成することになっています。
 これにより、医師や医療機関では煩雑な手続きや個別の事業者とシステム接続をせずに、適正な価格で、いつでも医療AIサービスを利用することが可能となりますし、医療AIサービスを提供する事業者にとっても、多くの医師や医療機関にサービスを提供できるだけでなく、質の高い臨床現場のさまざまな医療情報を活用することで、新たな開発を行うことが容易になるというメリットがあります。
 しかし、このプラットフォーム事業にはガバナンス機能を備えた機関も必要だということで、日本医師会では会内に「日本医師会AIホスピタル推進センター」を設立しました。
 現在、同センターとプラットフォーム事業者(以下、事業者)はAIホスピタルの社会実装に向けて連携していく関係となっていますが、将来的には事業者からの申請に基づき、AIホスピタルシステムにおける事業者としてふさわしいかセンターで審査を行い、認定を行っていく予定です。
 また、センターでは登録事業も担うことになりますが、利用者である医師等には、利用者登録を行い、医療AIプラットフォームの利用を希望する旨に同意して頂くことで、事業者に利用者登録情報を提供してもらう代わりに、事業者からサービスを受けられることになります。
 その他、センターでは、今後、医師主導による医療AI開発支援やAIホスピタルの普及広報活動にも取り組んでいくことにしていますので、その成果にご期待頂きたいと思います。

「日本医師会AIホスピタル推進センター」の試行運用にご協力を

 医療AIプラットフォームについて言えば、AIホスピタルに参画している民間企業5社により、技術研究組合法に基づく技術研究組合が申請され、本年3月24日には経済産業大臣、厚生労働大臣の認可を得て、4月1日に医療AIプラットフォーム技術研究組合(以下、HAIP)が設立されました。
 HAIPでは、このたび社会実装に向けた取り組みの一環として、医療AIプラットフォームによる複数の医療AIサービスを医師・医療機関等に提供するためのシステム環境を構築するため、試行運用を開始しました(図1)

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 今回の試行運用では、画像診断補助を行う医療AIサービスをプラットフォームに搭載して、画像データの取得と医療AIサービスによる分析を行うだけでなく、分析結果の医師への報告等、一連の流れについて、プラットフォームを用いて運用するための技術的検証を中心とした試行が行われることになっています。
 また、サービスの利用頻度等に応じた費用の設定や決済等の検討も同時に実施される予定です。
 その他、医療AIサービスを利用する医師の登録業務もこれに併せて試行運用することとなったため、「日本医師会AIホスピタル推進センター」でも、この試行運用に参加して頂ける医師の募集を開始することになりました。
 試行運用に参加するためには、「日本医師会AIホスピタル推進センター」のホームページから、参加のためのユーザ登録を行って頂く必要があります(医師会員、非会員の区別なく、登録ができます)。
 登録するためには、まず、日本医師会のホームページ「医師の皆さまへ」ページの一番下にある日本医師会のリンク先より、「日本医師会AIホスピタル推進センター」のホームページ(https://www.jmacai.med.or.jp)に進む→ホームページ上で、メールアドレスやパスワードを入力し、ログインする→登録画面より、氏名、所属医療機関や健診機関等の登録情報を入力し、センターの利用規約を確認した上で、登録ボタンを押す(これにより、センターからHAIPに先生の登録情報が提供されることになります)―という作業が必要となります。
 しかし、このままでは、事業者からのサービスを実際に受けることができないため、更に、HAIPのホームページから登録を行って頂くことが必要となります。
 登録して頂きますと、プラットフォームの仕組みや試行運用する医療AIサービスの説明が行われますので、引き続き所属する医療機関や健診機関とのデータ授受のためのIT環境設定をして頂きますと、ダミーデータや患者(健診受診者)データを用いた医療AIサービスの試行運用に参加することが可能になります(図2)
 このように登録作業には、お手数をお掛けすることになりますが、ぜひ、ご参加頂きますようお願い申し上げます。
 万が一、登録に当たって分からないことがございましたら、ホームページの問い合わせフォーム、または担当者(日医総研 吉田/s.yoshida@jmari.med.or.jp)までご連絡頂ければと思います。

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「日本医師会AIホスピタル推進センター」が目指すAIホスピタルの未来像

 新型コロナウイルス感染症の長期化によって、社会問題化している医療従事者の疲弊と、医療現場の負担増への対策が求められています。
 その解決のためにも、日本医師会では、ビッグデータ解析やAI技術の活用によるITや医療機器等の開発と普及による質の高い治療技術の導入を推進していきたいと考えています。
 「日本医師会AIホスピタル推進センター」には、医療機器、医療材料等の開発、生産、流通に携わる20の医療機器関係団体を会員とする、一般社団法人日本医療機器産業連合会がAIホスピタルの協力参加機関となっていますので、今後、更に医療界と産業界の連携を進め、AIホスピタルの社会実装と普及を推進し、臨床現場の負担軽減を実現して参ります。
 AIホスピタルは、臨床現場の負担軽減を質の高いAI技術で補助し、利用時の医療情報が集積されたビッグデータの活用による革新的技術の開発に繋(つな)げることによって、より質の高い医療の提供をもたらす日本独自の医療技術研究開発のためのエコシステムになると考えています。
 会員の先生方にはぜひ、今回の事業の趣旨をご理解頂き、ご支援、ご協力を賜りますようお願いいたします。

お知らせ
 医療AIプラットフォームの試行運用に関する詳細は「日本医師会AIホスピタル推進センターのホームページ」(https://www.jmacai.med.or.jp)をご覧下さい。

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