法案の意義を説明する菅総理
法案の意義を説明する菅総理
全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律が6月4日、与党などの賛成多数で可決成立した。採決に当たっては、負担増に伴って「受診控え」を防ぐ取り組みを政府に求める附帯決議も採択された。
今回の法律の改正は、「全世代型社会保障改革の方針について」(令和2年12月15日閣議決定)等を踏まえて、現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、全ての世代で広く安心を支えていく「全世代対応型の社会保障制度」を構築するために行われたものである。
主な内容としては、(1)一定の所得以上の後期高齢者の医療費窓口負担割合の1割から2割への見直し(ただし、制度導入から3年間は、負担増を月3000円以内に抑える緩和措置が設けられる)、(2)育児休業中の保険料の免除要件の見直し(月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については一月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象とする)―などが挙げられる。
医療従事者に感謝の意―菅総理
成立に先立って、6月1日には菅義偉内閣総理大臣、田村憲久厚生労働大臣出席の下、参議院厚生労働委員会で法案審議が行われ、自見はなこ参議院議員が質問に立った。
自見議員はまず、全国の医師は強い使命感をもって新型コロナウイルスワクチンの接種に取り組んでいることを、ご自身の父親の代からの地元である福岡県・京都(みやこ)医師会の例を挙げて説明。菅総理に対して、ワクチン接種推進に向けた決意を尋ねた。
菅総理は、ワクチン接種について、国民一人ひとりの生命を守る切り札であると考えていると強調。自身が先頭に立ってワクチン接種を進めていくとの考えを示すとともに、ワクチン接種に従事する医療従事者に対して、「皆様の大変なご努力に対して、心から敬意と感謝を申し上げたい」と述べた。
また、自見議員が全世代対応型の社会保障制度の構築に向けた考えを問うたことに対して、菅総理は「現役世代の負担の上昇を抑え、全ての世代が安心して暮らせる社会を構築していくことは待ったなしの状況にある。これまでの社会保障制度を見直し、全世代型の社会保障制度を何としてもつくり上げていきたい」と主張。本法案に関しては、給付と負担の見直し、子育て世代の支援を進める施策が盛り込まれているとして、その意義を強調した。
受診控えに配慮した仕組みに―中川会長
法が成立したことを受けて中川俊男会長は、「日本医師会は、患者負担の増加により高齢者が受診を控えることがないよう、2割負担となる対象者の範囲を狭めるよう求めてきた。我々の思いとは少し離れているものの、今回の法改正により、全ての団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けての改革は一区切りとなった。施行までの間に、受診控えに配慮した仕組みとなるよう、できるだけの工夫をしてもらいたい」と要望。加えて、患者自己負担が2割に増えても医療機関の収入にはならないことを、国は責任を持って国民に丁寧に説明し周知するよう求めた。