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令和3年(2021年)7月29日(木) / プレスリリース

新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明について

 日本医師会は、新型コロナウイルス感染症の感染が全国規模で拡大していることを踏まえて、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会の各団体と共に、「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を取りまとめ、7月29日に公表した。以下はその全文である。

 なお、今回の声明取りまとめに当たっては、尾身茂新型コロナウイルス感染症対策分科会長、脇田隆字新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード座長と多角的な視点から意見交換を行った。

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令和3年7月29日

日本医師会
日本歯科医師会
日本薬剤師会
日本看護協会
日本病院会
全日本病院協会
日本医療法人協会
日本精神科病院協会
東京都医師会

新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明

1.なぜ今、緊急声明が必要なのか

 7月12日、東京都に緊急事態宣言が再度発令されました。しかし、東京都の新規感染者は増加を続け、直近では増加のスピードがより速くなっています。東京都に隣接し、まん延防止等重点措置が継続されている埼玉県、千葉県、神奈川県においても同様であり、さらに感染拡大は全国各地に拡がっています。7月28日の新規感染者数は、東京都の3,177人をはじめ、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、京都府でこれまでで最も多い報告数となり、全国でも9,582人と過去最多となりました。

 現在、救急搬送困難事案が全国の代表的な都市部で増加し、特に新型コロナウイルスの感染が疑われる例が大幅に増えています。感染再拡大による病床逼迫が現実に発生しつつあります。これらの現実は、専門家が事前に示した感染予測をも上回りかねない状況です。⇒別紙1

 新規感染者数の増加に伴い、入院治療の必要な感染者数、入院調整のための待機や自宅療養者数、施設療養者数も急激に増え、重症者用病床使用率がステージⅣの指標に達しなくとも、中等症患者の増加もあいまって医療の逼迫が迫っています。

 ワクチン接種の重症化予防効果および感染予防効果が明らかになっています。一方で、デルタ株をはじめ変異株の出現は、ワクチン接種のみによって地域の感染拡大を防止し、医療逼迫を回避することを危うくさせています。

 今、何としても今後の爆発的感染拡大を避けるための危機感の共有と対策が必須です。わたしたちは、医療に携わるものとして、本緊急声明を政府にお示しし、今後の措置に反映していただくことを要請します。

2.医療提供体制確保の取り組み
(1)重症者、中等症患者の入院病床の確保

 全国の都道府県は、第3波、第4波の医療の逼迫を踏まえ、あらためて新型コロナウイルス感染症についての病床・宿泊療養施設確保計画を作成し、新規感染者の増加に対応する実効性のある確保病床数・居室数を確保しました。また、絶対に防ぎたいことではありますが、通常医療が制限される事態となった場合も想定し、感染者急増時に緊急的に対応できる病床・居室も確保しています。⇒別紙2

 今後も、病床確保計画が実際に機能するよう、医療界を挙げて重症・中等症・後方支援等のそれぞれの役割を担っていきます。

 しかし、中等症から重症に至るまでの患者に対応する病床、陰圧室、そしてマンパワーが不足しているのも現実です。また、感染拡大に応じて確保病床とされている準備病床を即応病床に移行するには、少なくとも10日から2週間を要します。急激な感染拡大がつづけば、いずれ病床は逼迫します。その事態は絶対に避けなければなりません。

(2)軽症者への対応

 感染者の急増により軽症者、特に自宅療養者および施設療養者が急増しています。都道府県および都道府県医師会を中心に、郡市区医師会と保健所が連携し、医師会員をはじめ医療従事者によるフォローアップ体制の充実により対応していますが、さらにこの体制を強化してまいります。

(3)新型コロナウイルス感染症における有事の医療と、通常の診療の両立

 わたしたちは、コロナ医療とそれ以外の通常医療との両立を守り抜く覚悟です。また、通常医療が提供できず、平時ならば救えた生命を失うことはあってはならないと考えています。

 第3波、第4波では、一部で、全身麻酔や心臓・血管カテーテル術等の手術の延期、救急搬送およびその受入困難事例が発生しました。ふたたび、このようなことが起こらないよう、わたしたちは、地域の病床確保の状況や患者対応の状況を逐次確認し、行政と連携して、通常医療への影響を食い止めます。そして、新型コロナウイルス感染症がなければ防ぎえた死は、何としても回避する覚悟です。

 すでに多くの医療従事者は必死の思いでコロナに立ち向かい、心身ともに限界です。わたしたち自身も医療者として本当に仲間に感謝してもしきれません。医療者はできうる責務はすべてまっとうします。そのためにも、政府に対して、今あらためて、感染拡大を食い止めることに、あらゆる手立てを尽くすことを要請します。⇒別紙3

 

3.ワクチン接種の推進

 新型コロナウイルス感染症との闘いが続くなかで、わたしたちは強い使命感を持って、地域の実情に応じて集団接種と個別接種を適切に組み合わせたワクチン接種体制を構築し、短期間で急速にワクチン接種を進めてきました。わたしたちは、かかりつけの患者かどうかを問わず、希望されるすべての方が迅速かつ確実に接種を受けられるよう、今後も万全な体制を確保してまいります。しかし、ワクチンが確実に供給されなければ、接種の責務も果たせません。政府に対して、引き続き十分かつ安定的なワクチンの供給を要請します。

 高齢者、医療従事者へのワクチン接種は先行して実施されました。現在、高齢者の新規陽性者は減少し、医療機関や高齢者施設でのクラスターの発生割合も顕著に低下しています。新規陽性者は、高齢者から20歳代、30 歳代を中心とした若年層へと移行し、従来株から感染力の強いデルタ株への置き換わりが急速に進んでいます。若い世代が入院され、重症化するケースも増えてきました。

 特に40歳代、50歳代の高濃度酸素が必要な中等症患者が増加しており、重症化による医療の逼迫が懸念されます。

 また、デルタ株の影響により、これまで考えられていた集団免疫の獲得は6、7割接種では難しく、できる限り多くの方が確実に2回接種する必要があることも明らかになってきました。

 政府には、ワクチン接種のメリットが副反応よりも大きいことを今一度、国民、特に若い世代に訴えていただくよう要請します。⇒別紙4

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【緊急要請】

  1. 首都圏をはじめ感染者が急増している地域に対し、早急に緊急事態宣言を発令すること。あわせて、緊急事態宣言の対象区域を全国とすることについても検討に入ること。
  2. 感染収束の目途がつくまで、徹底的かつ集中的にテレワークや直行直帰を推奨すること。
  3. 40歳から64歳までとリスクの高い疾患を有する方のワクチン接種を推進し、できるだけ早く完了させること。

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みなさんとこの夏を乗り切るために

 猛暑が続いています。熱中症を起こしやすい環境です。熱中症を予防することは健康維持にとても重要です。一方、医療機関にとっても医療の負担を減らすことにつながります。また、暑さで体が消耗するとコロナに対する抵抗力も低下します。水分・栄養の補給、十分な睡眠により体調の管理に気を付けましょう。

 もし体調が思わしくなければ、我慢や無理をしないで休むことが大事です。何かの症状が有ったときは、できるだけ早期に医療機関を受診することも重要です。万が一コロナ感染症であれば、重症化する前に治療を受けることができますし、コロナ感染症でないと分かれば安心することができます。

 職場や学校ではコロナ抗原定性検査キットを準備しておくことも重要です。職場や学校に行ってから具合が悪くなった時に利用することで、早期にコロナ感染症の疑いの有無について検討できます。その際、厚生労働省のガイドラインに則って実施をして頂くことが安全上大切です。

 今できることには、限りがあります。ワクチン接種を受ける、感染しやすい行動は控える、体調の維持につとめることです。自らの感染に気をつけることは、家族、そして仲間を守ることにもなります。わたしたちも全力でワクチン接種そして地域の医療に専念いたします。みんなで一緒になってこのコロナ感染症を収束させていきましょう。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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