閉じる

令和3年(2021年)8月5日(木) / 日医ニュース

オンライン診療とアプリの導入

 オンライン診療は2018年度から保険収載されました。
 要件としては、(1)患者と医師がオンライン診療を同意していること、(2)医師がオンライン診療可能と判断すること、(3)医師がオンライン診療では不十分と判断した際にすぐに対面診療が行えること、(4)原則として初診は行えないこと―などが決められています。このような要件があるため、オンライン診療の保険請求はあまり増えていませんでした。
 2020年4月の時限的・特例的な取り扱いにおいて、オンライン診療を始め、電話による初再診もできるようになりましたが、これはコロナ禍における限定的な運用に過ぎません。
 コロナ禍において全ての業種においてオンラインが推進され、デジタル庁の発足に代表されるようにDX(Digital Transformation;デジタル技術を活用した改革)の進化が進められています。
 「経済財政運営と改革の基本方針2021」においても、グリーンとデジタルが大きなキーワードとなっており、以下のような記載があります。「最先端のデジタル国家となるとともに、サイバーセキュリティを確保しつつ自由で開かれたデジタル空間を発展させ、Society 5.0を実現する」。政府のデジタル化への強い思いを感じます。
 これらの政府の方針を踏まえ、2022年度診療報酬改定において、オンライン診療が初診から解禁となるとの報道が行われました。ICT、デジタル化技術などで技術革新の成果をもって、医療の安全性、有効性、生産性を高める方向を目指すというのが日本医師会の基本スタンスであり、これらの報道に対して、日本医師会では、「オンライン診療は対面診療の補完である」「オンライン診療には安全性と信頼性が必要であり、それらを担保できるのは地域のかかりつけ医である」「初診がオンライン診療で行われる際には、かかりつけ医からの患者の情報が必須である」「常にオンライン診療を対面診療に切り替えられる必要がある」との見解を出しています。
 オンライン診療を行う際には一定のセキュリティーが掛かったアプリが必要であり、2018年より多くの会社がオンライン診療用のアプリの開発・販売を始めています。しかしながら、一気にオンライン診療が進むかどうかははっきりしませんし、今後の適応要件がどのようになるかもまだ不透明です。
 また、コロナ禍において、オンライン会議などのために多くのアプリが開発され、利用が急増しています。ZOOMやMicrosoft Teams、Google Meetなど無料で利用できるものも多く、それらに慣れている人も増えてきています。このような状況の中で、あえてオンライン診療専用のアプリを有料で利用する必要はないのかも知れません。
 2022年4月のオンライン診療の要件を見た後に考えても十分に間に合うと思いますし、慌てる必要はないでしょう。医療のデジタル化は進んでいくでしょうが、来年から診療が一変するわけでもなく、オンライン診療の導入には数年掛けてご検討することをお勧めします。

(日医総研副所長 原祐一)

キーワード:Society 5.0
210805i.jpg サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。 狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもの。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる