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令和3年(2021年)8月5日(木) / 日医ニュース

2024年4月の制度施行に向け医師労働時間短縮計画の作成を

2024年4月の制度施行に向け医師労働時間短縮計画の作成を

2024年4月の制度施行に向け医師労働時間短縮計画の作成を

 日本医師会認定産業医制度の指定研修である「医師の働き方改革に関する講習会」が7月4日、日本医師会Web研修システムを初めて用いて開催された。当日は担当役員より、2024年4月に施行される医師の働き方改革の議論の経緯や制度の概要、具体的適用について説明した上で、各医療機関における医師労働時間短縮計画の作成を求めた。

 講習会は松本吉郎常任理事の司会で開会した。
 冒頭、あいさつに立った中川俊男会長は、7月初めの関東・東海地方の豪雨、特に静岡県の土石流の被害を受けた方々に対してお見舞いの言葉を述べた後、2024年度施行の医師の働き方改革について触れ、「現在のコロナ禍の中、施行を懸念する声もあるが、今まさに長時間労働を強いられている医師がいることも現実であり、医師の働き方改革は先延ばしにはできない」と強調。長時間労働の医師に対する面接指導や就業上の措置等を適切に進めていくためには、制度の全体像と個別の重要課題について産業医に理解してもらうことが極めて重要だとして、本講習会の成果に期待を寄せた。

講習1:医師の働き方改革に関する議論の経緯について

 今村聡副会長はまず、本年5月の「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」の成立を受け、2024年度からは医師に時間外労働の上限規制が適用されることとなったため、現在、医師の労働時間の短縮や健康確保措置に関する具体的な検討が、日本医師会も参画する中で進められていることを紹介した。
 その上で、本年10月施行の医療関係職種の業務範囲見直しを踏まえたタスクシフト・シェアに向け、国の検討会において、現行制度で対応可能な業務と法令改正が必要な業務の整理が行われており、医療機関には医師労働時間短縮計画の作成と「医療機関勤務環境評価センター」による第三者評価の他、職種をまたいだ話し合いや研修の実施によって医療従事者自身の意識改革が求められていると説明した。
 同副会長は医師の働き方について、地域医療とのバランスを見ながら改革していくとの方針は評価しつつも、「コロナ禍において過重労働の現場もあり、医師の働き方改革に取り組める状況かどうか注視が必要。拙速(せっそく)に進めることはかえって地域医療に混乱を招きかねない」と懸念を表明し、国に全面的な支援を求めていく意向を示した。
 また、働き方改革を実現させるための財政的支援となる地域医療介護総合確保基金については、「各都道府県からの申請は終了しているが、厚生労働省からは予算額に余裕があると聞いており、二次募集も見込まれる。まだ申請していない医療機関は要項を確認の上、都道府県と相談して欲しい」と述べた。

講習2:厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ」について

 城守国斗常任理事は、医師の働き方改革の推進に関する検討会において、2024年4月からの医師の時間外労働を、年960時間以下(A水準)の例外として、上限を年1860時間以下とする、①B水準(夜間・休日・時間外対応が頻繁に発生する業務に従事する医師)②連携B水準(地域医療確保のために派遣され、通算で長時間労働となる医師)③C―1水準(長時間、集中的に経験を積む必要のある研修医・専攻医)④C―2水準(特定の高度な技能の修得のため集中的に長時間修練する医師)―が設けられたことを説明。
 A水準以外は水準ごとに医療機関の指定が必要であり、各条件を満たす医師にのみ例外の水準が適用される他、B水準と連携B水準は2035年度末までの暫定特例となっているとした。
 更に、例外の4水準については、追加的健康確保措置が義務化され、「当月の時間外・休日労働が100時間に到達する前に、産業医または講習を受けた医師による面接指導を行う」「月155時間を超えた場合は労働時間短縮に向けた具体的措置を講じる」ことが必須とされていることを紹介。
 また、今後、産業医には、担当医療機関の医師の労働時間把握と時短計画案の作成が求められるとし、不明な点は各都道府県の「医療勤務環境改善支援センター」に相談するよう呼び掛けた。

講習3:医師の働き方改革における個別論点(評価機能事業、宿日直、研鑽の取扱い、兼業・副業等)について

 松本常任理事はまず、管理監督者と勤務医の線引きについて、「一般的に管理監督者には理事長や院長が相当するが、副院長や部長、看護部長はどうなのかとよく聞かれる。労働基準法上の管理監督者は役職名ではなく、職務内容や責任、権限等の実態を見て決めることになっている」と述べた。
 評価機能事業に関しては、2022年度に「医療機関勤務環境評価センター」を立ち上げて各医療機関の書面評価(必要に応じて訪問評価)を行い、2024年度には各水準の指定を行うスケジュールであることを説明。評価機能については、「取り締まるためではなく、医師の労働時間短縮に向けた取り組みを支援するためのものと考えている」との認識を示し、同評価センターの業務を日本医師会が受託できるよう努めていくとした。
 また、指定に当たっては、「自身の医療機関がA水準に該当したとしても、地域医療を確保するために外勤をして960時間をやむなく超えてしまう医師を雇用している場合は、医療機関として連携Bに入ってもらいたい」として、地域医療を守る観点からの対応を求めた。
 宿日直に関しては、労基法上の「宿直」は「宿日直許可」があれば労働時間に含めないため、連続勤務制限にも触れず、勤務間インターバルも取ることができるとする一方で、「宿日直許可がなければ、寝当直であっても実労働時間として算定されることに注意して欲しい」と強調。加えて、宿日直許可がある場合は、緊急対応に要した時間のみ労働時間に算定され、緊急対応が恒常的であれば宿日直許可の取り消しもあり得るとした。
 研鑽の取扱いに関しては、労働に該当しないことを明確化する手続きや、研鑽を行う場所を新たに設けるなど環境の整備が重要であるとした他、対応方法としては、①自己研鑽時は退勤の打刻を行う②自己研鑽の意思表示カードを着用する③自己研鑽時は緊急やむを得ないこと以外は業務を指示しない④所属上長は業務か否かについて適切に判断し、疑義が生じた場合は、担当副院長と相談する⑤長時間労働が常態的に見られる診療科については幹部会議で対応を検討する―ことなどがあるとした。
 また、院内カンファレンスを引き合いに、医療機関には出席が義務とされると労働時間にカウントされるが、それ以外は労働時間にカウントしないことを明示することや、定例カンファレンスを所定労働時間内に実施するなどの取り組みが求められているとした。
 兼業・副業等に関しては、病院常勤医師のうち、病院全体では約6割、大学病院では9割以上が複数の医療機関で勤務しているデータを示した上で、「副業・兼業者は突発的な業務発生が予想されるため、労働時間管理は自己申告をベースとしているが、医療機関は把握した勤務時間に基づき、追加的健康確保措置の実施の義務を負うだけでなく、連続勤務時間制限・勤務間インターバルを遵守できるシフトを組む必要がある」と述べた。
 この他、専門業務型裁量労働制や変形労働時間制、フレックスタイム制における取り扱いについて概説し、「医師の労働時間の上限規制は2024年4月からだが、労働時間の短縮と健康管理の両立を目指し、できるところから取り組んでもらいたい」と結んだ。
 最後に松本常任理事が総括し、「医師の働き方改革については現場の医師もその内容を熟知する必要がある」として、情報発信や双方向の議論の重要性を強調。今後、Web研修システムでの講習会を幅広く展開していくことに意欲を示した。

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