中医協総会が8月25日、WEB会議で開催され、来年の診療報酬改定に向けた「在宅医療」「入院医療」に関する議論を開始した。
当日は厚生労働省事務局から、「在宅医療」「入院医療」を取り巻く現状や現行の診療報酬上の評価について説明を受けた後、議論が行われた。
かかりつけ医と在宅専門の医療機関で評価の工夫を
議論の中で、城守国斗常任理事は「在宅医療」に関して、「今回の改定でも在宅医療は当然ながら推進すべき事項であるが、かかりつけ医が外来の延長として在宅に尽力している場合と在宅専門の医療機関では効率性が全く異なる」として、「その評価のあり方については、これまで以上の工夫が必要である」と指摘した。
また、提示された論点の中に「質の高い在宅医療を十分な量提供できるようにするため」との記述があることに対して、「安易に量の確保を追求すれば、かかりつけ医と在宅医療の連携が分断され、むしろ質が低下する懸念があり、反対に質を追求し過ぎると、在宅そのもののハードルが高くなり過ぎて、参入する医療機関が増えず、十分な量を確保できなくなってしまう」として、質と量のベストバランスを考えながら、着実にボトムアップを図る改定を目指すことを求めた。
更に、在宅療養支援診療所(以下、在支診)の届出が減少傾向にあり、在支診以外の診療所が他の医療機関との連携で24時間の往診・連絡体制を構築した場合に算定できるよう、平成30年度改定で創設した継続診療加算もあまり普及していないことなどを紹介。「24時間往診対応を義務とするのではなく、すぐに入院できる病床を確保している医療機関や地域の一次救急と連携した上で、在支診でない一般の医療機関も含めて在宅を担う医療機関同士の連携により、地域でチーム医療として行えるような評価となる工夫も必要である」と主張した。
その他、松本吉郎常任理事からは、小児の在宅医療に関して、その特性に配慮した評価設計が必要である旨の指摘を行った。
「入院医療」はコロナ禍に合わせた見直しを求める
「入院医療」に関しては、「医療機能の分化・連携の促進を推進する入院医療の提供体制の評価のあり方について、どう考えるか」が論点として示された。
これに対して、城守常任理事は「これは平常時の論点である」と指摘。「医療現場は改定前の状況と大きく異なっている。診療報酬の算定について柔軟な取り扱いや経過措置が講じられ、危機的状況に陥った医療現場の援助が行われている現状を考えれば、次回改定で現場に大きな影響を与える対応は難しい」とするとともに、「経過措置の延長などにより前回改定の検証にも限界があり、コロナ禍に合わせて手直しをすることが今回改定の重要なミッションになる」との考えを示した。
また、支払側から、「急性期機能の強化は新興感染症対応の強化にもつながるので、これを後押しするような踏み込んだ改定が必要だ」との発言があったことに対しては、「医療提供体制は急性期を含めて、地域でばらつきが大きい。コロナ禍ということもあるので、診療報酬で誘導するやり方は避け、地域医療構想に寄り添った改定とすべき」と反論した。
更に、資料として示された「経済財政運営と改革の基本方針2021」に「更なる包括払いの在り方の検討も含めた医療提供体制の改革につながる診療報酬の見直し」との記述があることにも触れ、「包括はどうしても粗診粗療が懸念される。なぜ、わが国でこれまでDPC/PDPSという制度の中で進められてきたかを考えて検討していく必要がある」とした。
コロナ特例で救急医療管理加算の評価引き上げを了承
なお、中医協は8月26日にも開催され、新型コロナウイルス感染症に関わる診療報酬上の臨時的な取り扱いを了承した。
具体的には、入院加療を実施するコロナ感染症患者の診療に係る評価として、「救急医療管理加算1」の評価を1日2850点(加算額の3倍)から1日3800点(加算額の4倍)に、その患者が呼吸不全管理を要する患者(中等症Ⅱ)の場合には1日4750点(加算額の5倍)から5700点(加算額の6倍)に、それぞれ引き上げることとした。