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令和3年(2021年)10月5日(火) / 日医ニュース

「医師会共同利用施設の今後のあり方―新型コロナウイルス感染症も踏まえて―」をメインテーマに開催

「医師会共同利用施設の今後のあり方―新型コロナウイルス感染症も踏まえて―」をメインテーマに開催

「医師会共同利用施設の今後のあり方―新型コロナウイルス感染症も踏まえて―」をメインテーマに開催

 「医師会共同利用施設の今後のあり方―新型コロナウイルス感染症も踏まえて―」をメインテーマとした、第29回全国医師会共同利用施設総会(主催:日本医師会、担当:北海道医師会)が9月11、12の両日、新型コロナウイルス感染症が依然として流行中であることを鑑み、WEB会議で開催され、日本医師会からは今村聡副会長、松本吉郎常任理事が出席した。

第1日

 11日に開催された総会は藤原秀俊北海道医師会副会長が総会の開会を宣言。続いて、ビデオメッセージの形であいさつを行った中川俊男会長は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が、医師会病院を始め、医師会臨床検査センターや健診センターの経営、各地域の医療提供体制に多大な影響を及ぼしているとした上で、その支援のため、国に対して必要な補助金や診療報酬上の対応を要望してきたことを報告。
 更に、医療計画上の『5疾病5事業』に新興感染症等への対策を追加する政策提言を実現させるとともに、各病院団体と協力して病床の確保に努めてきたことにも言及し、今後も医療界を挙げ、新型コロナウイルス感染症に全力で対応していく決意を表明した。

特別講演

211005e2.jpg その後、松家治道北海道医師会長、鈴木直道北海道知事、秋元克広札幌市長のあいさつに引き続き、中川会長が「最近の医療情勢とその課題―新型コロナウイルス感染症対策に向けて―」と題した特別講演を行った。
 中川会長はまず、新型コロナウイルス感染症の全国的な感染拡大を受けて、8月17日付けで日本医師会員全員に書簡を郵送し、医療提供体制維持のための更なる協力を求めたことを報告し、引き続きの協力を要請した。
 その他、中川会長は、(1)「医療計画」に新たに「新興感染症等への対策」が追加されたこと、(2)新型コロナウイルス感染症患者受け入れのための病床確保、(3)新型コロナウイルス感染症対策―について、日本医師会の考えも交えながら説明した。
 (1)では、「医療計画の策定に当たっては、平時の対応と有事の対応を整理し、①資材(マスク、個人防護具、人工呼吸器、ECMO等)の備蓄②医療従事者、特に専門スタッフと病床確保なども考慮に入れながら、具体的な計画に落とし込んでいく必要がある」とするとともに、地域医療構想の病床数については、新興感染症の対応いかんによっては見直す必要があるとの認識を示した。
 (2)では、四病院団体協議会並びに全国自治体病院協議会で結成した「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を設置したことを、(3)では、「新型コロナウイルスワクチン速報」やパンフレットを作成した他、接種促進のため、全国の医師会から寄せられたワクチン接種に関する好事例の共有を図ったこと、7月29日には日本医師会他8団体とともに「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を公表したことなどを紹介した。
 その上で、中川会長は「新型コロナウイルス感染症はたとえ治癒したとしても、その後の後遺症に苦しむ方も多くいる。コロナ医療と通常医療の両立を維持していくためにも新規感染者を増やさないことが極めて重要であり、政府には強力な対策の実行をお願いしたい」と要望した。
 続いて、平岡直人全国医師会共同利用施設施設長検査健診管理者連絡協議会長/松阪地区医師会副会長が、令和2・3年度の同連絡協議会の活動について、会員施設に実施したアンケート結果を含めて報告。その後、三つの分科会に分かれてシンポジウムが行われた。

第一分科会(医師会病院関係)

 第一分科会(座長:山村善教宮崎県医師会副会長/日本医師会共同利用施設検討委員会副委員長)では、八重樫優函館市医師会病院医療・介護連携課長が、同病院に設置されている「老年内科」の取り組みや、関係機関と連携することにより、在宅医療とそのためのサポート体制の推進を図っていることなどを紹介した。
 長島徹栃木県医師会副会長は、「とちぎメディカルセンター(TMC)設立の経緯と経過」と題し、センター設立のため、経営母体の異なる3病院を統合した際に行った課題解決のための方策等について説明。「施設の老朽化による採算悪化といった課題を抱えている各地の共同利用施設にはぜひ、この経験を参考にしてもらいたい」と述べた。
 川名隆司宮崎市郡医師会長/宮崎市郡医師会病院長は、令和2年8月に新築移転した宮崎市郡医師会病院において行われている新型コロナウイルス感染症対策を紹介するとともに、感染拡大期には行政との連携の他、医療機関同士の役割分担や症状に見合った患者の受け入れを進めることの重要性を指摘した。
 今村博出水郡医師会理事/出水郡医師会広域医療センター病院長は、平成元年に、国立病院の民間移譲第1号として誕生した出水郡医師会広域医療センターの歩みと取り組みについて講演。①医療の質と安全の向上②電子カルテ等、新しいシステムの積極的な導入③人材育成―に重点を置いた経営方針について説明した上で、地方であるが故の経営や医療従事者確保の難しさを指摘し、地方における医療の集約に取り組む必要性を強調した。

第二分科会(検査・健診センター関係)

 第二分科会(座長:金井忠男埼玉県医師会長/日本医師会共同利用施設検討委員会委員長)では、山中昭良江戸川区医師会医療検査センター所長が、特に1回目の緊急事態宣言(令和2年4月7日~5月25日)のセンターの経営に対する影響が大きかったことを報告するとともに、コロナ禍における「がん検診控え」が世界的ながん患者の増加につながり、今後の医療逼迫の一因となる可能性に懸念を示した。
 立花恒輔焼津市医師会理事は、コロナ禍での同医師会が運営している「臨床検査センター」「地域包括支援センター」他4施設の運営状況や課題について説明。感染拡大当初は、マスクや手袋、消毒液といった物品の不足があった他、感染者・濃厚接触者が発生した際の情報共有の難しさ、利用者やその家族の感染予防意識の低さといった問題があったことを報告した。
 中原捷岩国市医療センター医師会病院保健健診部臨床検査技師は、院内で感染対策本部を立ち上げるなど、感染防止に注力していたにもかかわらず、県内で初めて院内クラスターが発生した経験を踏まえ、健診受検者の感染対策を更に徹底して行っていることを紹介した。
 枝國源一郎佐賀県健康づくり財団専務理事/佐賀県医師会常任理事は、医師会共同利用施設の経営状況はコロナ禍によって更に悪化しているとし、ますます医師の確保が難しくなる中で、早急な対策の実施が求められると指摘した。

第三分科会(介護保険関連施設関係)

 第三分科会(座長:松本常任理事)では、原寿夫福島県医師会常任理事/郡山医師会副会長/郡山市医療介護病院長が、介護関連施設でのクラスター発生とその対応について報告。クラスター発生の要因に関しては、感染者ごとにかかりつけ医が異なるために情報共有が円滑に進まないことを挙げ、介護施設内の検査やゾーニング等の感染対策の難しさもあるとした。
 安部秀三茨城県医師会常任理事(共同講演者:伊藤金一茨城県医師会常任理事)は、常総市ときぬ医師会が水害の経験を踏まえて地域の医療・介護関係者の情報共有のために導入した「電子@連絡帳(JOSOシステム)」について、その利点や欠点、導入・運用のための費用等を解説。コロナ禍で従来のような支援が困難な今こそ、ICTを用いた関係機関の連携が重要になるとした。
 中道尚美桑名市在宅医療・介護連携支援センター副センター長は、クラウドを利用した医療・介護ネットワーク「ゆめはまネット」を紹介。ネットワークを通じた課題抽出と対応策の検討、新型コロナワクチン接種情報の共有の他、ZOOMを活用した研修会実施等により、行政と事業者間の連携強化が進められているとした。
 また、質疑応答では、青木大五桑名医師会長も登壇して取り組みを説明した。
 堀内房成宇治久世医師会長は、同医師会内に、自身がセンター長を務める医療介護連携センターを設置したことを紹介。コロナ禍において在宅医が感染した際のバックアップ制度や、通常の在宅診療・介護に加えて、自宅療養中の感染者の健康観察等を行うため、保健所と連携した取り組みを進めていることを紹介した。

第2日

 2日目には、始めに鈴木伸和北海道医師会副会長から道内の共同利用施設、恩村宏樹函館市医師会副会長から函館市医師会病院、後藤琢函館市医師会理事から函館市医師会健診検査センターの紹介がそれぞれ行われた。
 その後、各分科会報告に続き、松本常任理事を座長として全体討議が行われ、各分科会の演者が追加発言を行った。
 総括を行った今村副会長は、「全体の議論を通じて、医師会共同利用施設の維持発展のためには、地域の実情・特性に合わせた取り組み、人材育成、行政との連携及びICT活用の一層の推進が必要であると感じた。日本医師会としても引き続きの支援を行っていきたい」と発言。「日本医師会AIホスピタル推進センター」の活動についても触れ、医師会共同利用施設が使いやすい仕組みを開発中であることを報告した。
 最後に、次期(第30回)総会担当の松山正春岡山県医師会長より、次期総会は令和5年9月9、10日の両日に開催予定である旨のあいさつが行われた後、佐古和廣北海道医師会副会長から閉会のあいさつが述べられた。

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