COVID―19の感染者数は驚くほど減少しています。感染状況が落ち着いている時に考えてみたいCOVID―19検査について考察したいと思います。
ご存じのようにウイルスの存在を確認する検査にはPCR検査(以下、PCR)と抗原検査があります。感度・特異度共にPCRの方が優れていますが、抗原定性検査であれば結果判定までの時間が約10分と非常に短いという利点があり、状況によって使い分けられています。
しかしながら、PCRと言えども万能ではなく、感度は70%程度、特異度は99・9%程度に過ぎません。そのため、偽陽性・偽陰性が発生します。偽陽性・偽陰性の発生率は検査対象者に真の陽性者がどの程度いるかによって変わってきます。
今までは、ある時点でCOVID―19の真の感染者の人口比の推計方法については議論があまりされていなかったように思います。これを知るための疫学調査として、地域住民の集団から無作為に抽出した人に複数回のPCRを実施して、真の感染割合を調べる必要もあるかも知れません。
また、他の方法としては、住民の抗体検査によって過去の感染の有無について確認することも可能です。どちらの手法もこの1年10カ月間の間に本邦において数例は行われてきましたが十分とは言えず、話題にも上りにくかったように思います。
例えば、感染者が最も多かった本年8月中旬での東京の潜在的な感染率は0・9%と推計されたため、PCRの感度が70%、特異度は99・9%とすると、PCR陽性者のうち約13・6%は偽陽性、PCR陰性者のうち約0・27%は偽陰性と言うことになります。真の感染者数が少ない場合は偽陽性率はこれよりも高い数字となります。
一方、抗原定性検査の感度・特異度はPCRより低いため、偽陽性・偽陰性率はPCRより高くなります。この数字は医療従事者が採取した場合であり、被験者が自分で検体採取をする抗原定性検査では採取の手技の優劣も加わり、偽陽性・偽陰性は更に増えるでしょう。
今後、第6波、第7波が来るかも知れないため、政府は無症状者にもPCRや抗原検査を進めようとしています。症状がある人や濃厚接触者への検査が必要なことは言うまでもありませんが、多人数の無症状者への検査は既述のような欠点もあることを理解した上で実施する必要があります。
各種検査と真の感染者数の関係について、日医総研のホームページ(https://www.jmari.med.or.jp/research/essay/wr_753.html)に詳しいレポートを掲載していますので、ぜひ、ご覧下さい。
(日医総研副所長 原祐一)