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令和3年(2021年)12月5日(日) / 日医ニュース

「明るく強く育むために~コロナや災害に取り組む医療~」をメインテーマに開催

 令和3年度(第52回)全国学校保健・学校医大会(日本医師会主催、岡山県医師会担当)が10月30日、「明るく強く育むために~コロナや災害に取り組む医療~」をメインテーマとして、ライブ配信とオンデマンド配信のWEB形式で開催された。
 午前には、「からだ・こころ(1)」「からだ・こころ(2)」「整形外科(今年度新たに設置)」「耳鼻咽喉科」「眼科」の五つの分科会が行われ、各会場で研究発表並びに活発な討議がなされた。

学校保健活動に対する長年の貢献を顕彰

 午後からは、まず、開会式と表彰式が行われた。
 ビデオメッセージで開会のあいさつを行った中川俊男会長は、「昨年来の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う外出自粛によって、児童生徒達は運動不足となる一方、スマホ・ゲームに費やす時間が増加し、体力がなくなる『子どもロコモ』が懸念されている」と危惧。更に、感染症に起因するいじめ、偏見、ストレス等、心の問題も引き起こされているとして、時宜を得たテーマで開催される今大会に期待を寄せた。
 表彰式では、長年にわたり学校保健活動に貢献した中国・四国ブロックの学校医(9名)、養護教諭(9名)、学校栄養士(9名)に対し、中川会長がビデオで表彰状を朗読。また、全受賞者の写真がスライドで紹介され、受賞者を代表して浅野博雅氏が、ビデオメッセージで今回の受賞に対する感謝と、コロナ禍における学校環境の変化の中で、子ども達の心と体の健全な発達のために尽力する旨の謝辞を述べた。
 なお、賞状・副賞・記念品は、事務局から後日送付された。
 次期開催県からのあいさつでは、小原紀彰岩手県医師会長から、令和4年11月12日(土)に盛岡市内で大会の開催を予定しているとの説明が行われた。
 その他、鍵本芳明岡山県教育委員会教育長や中川俊男日本学校保健会長(弓倉整同専務理事代読)からお祝いのビデオメッセージが寄せられた。

基調講演

 「感染症とワクチン~新型コロナウイルスを経験して」と題して基調講演を行った中野貴司川崎医科大学小児科学教授は、当初、小児の感染や重症化は少なかったものの、変異株の出現以降、感染者が増え、基礎疾患のある小児に重症化傾向が見られるとともに、罹患後しばらくしてから小児多系統炎症性症候群(MIS―C)となる10代が多かったことを報告。
 その上で、一斉休校について、感染伝播を少なくとどめるのに有効であったことは間違いないとする一方、子ども達の日常生活が大きな影響を受けたことを懸念。「休校措置は他国でも行われたが、二次的に引き起こされる子どもの精神的な問題、家族との問題を指摘する論文が多かった。学校生活は、国家・社会の形成者として未来を担う子ども達の、最低限の基盤的資質を育成する場である」として、その保障も念頭に感染対策を実施することを求めた。
 子どもへのワクチン接種に関しては、「答えは一つではない」と前置きした上で、接種群には高い有効率が見られたことを紹介。子ども達は自ら十分な判断ができないことから、医療従事者が彼らや保護者にアドバイスしていく重要性を強調した。

シンポジウム「コロナや災害から子どもを守る医療」

 引き続き「コロナや災害から子どもを守る医療」をテーマに、「コロナ」と「災害」の二つのシンポジウムが行われ、それぞれ2名のシンポジストが発表した。
〈コロナ〉
 岡田あゆみ岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学准教授は、診療室で出会う子どもの様子を紹介。新型コロナによる休校は子ども達にストレスや不安をもたらし、昼夜逆転、肥満、視力低下などが見られた一方、発達特性があり集団での授業が苦手な子どもからは、オンライン授業が分かりやすいとの声が聞かれたとした。
 また、不安定な家庭の子どもが家族からの暴力にさらされるなど、逃げ場がない状態に置かれていたことにも言及し、負の影響を受けやすい子どもを社会資源につなげる重要性を指摘。学校や病院はメンタルヘルスのゲートキーパーの役割も担っているとして、長期的な影響にも注意していくことを求めた。
 頼藤貴志岡山大学学術研究院医歯薬学域疫学・衛生学分野教授は、日本の学校感染の状況について報告。令和2年6月1日から令和3年9月30日までの感染例を検討したところ、感染経路は「家庭内感染」が55%で、特に小学生では71%に達していたとする反面、「学校内感染」は9%であったとした。
 また、他の疾病への影響として、インフルエンザ及び呼吸器疾患での死亡や、インフルエンザ、感染性胃腸炎、水疱瘡(ぼうそう)の報告数が減っていることを挙げ、新型コロナの感染対策がこれらの感染症を防ぐことにもつながっていると説明した。
〈災害〉
 横山裕司岡山県小児科医会長は、平成30年7月の西日本豪雨災害において、医療的ケア児は災害時のトリアージにおいて重症とはみなされず、避難の際の優先順位が低いと判断されてしまったことから、岡山県小児科医会が支援を必要とする子どもの避難場所の確保に向けた取り組みを進めてきたことを紹介。
 具体的には福祉避難所の体制の不十分さや、病院・行政の対応マニュアルの不備などの問題点を把握し、多職種のワーキンググループを組織。災害時の避難先として対応可能と回答した病院と在宅医療児をマッチングするため、WEB上に「ぼうさいやどかりおかやま」を立ち上げ、希望する家族の登録を募り、面談を経て、受け入れ施設を決定しているとした。
 塚原紘平岡山大学病院救命救急災害医学科助教は、西日本豪雨災害で災害時小児周産期リエゾン(自県及び近隣県の被災時に、県の保健医療調整本部等において小児・周産期医療に関する情報を集約し、判断・搬送調整等を行うもの)の立場で現地入りした経験から、特に妊婦や小児の災害弱者は避難所にいられないケースも多く、多くの助けが必要であることを強調。今後の課題としては授乳やアレルギーへの対応、医療的ケア児の電源確保などを挙げた。
 更に、福祉避難所であることを病院自身が認識していなかった事例があったことも踏まえて、妊婦と小児にも対応できるように整備を進めるだけでなく、実際に使用可能か訓練しておくことも必要であると指摘。また、間仕切りされた避難所においては、児童虐待やDVなどへも目配りする必要があるとした。
 質疑応答の後、岡山学芸館高等学校チアリーディング部によるアトラクション映像放映、大原謙一郎公益財団法人大原美術館名誉館長による特別講演が行われ、大会は終了となった。

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