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令和3年(2021年)12月20日(月) / 日医ニュース

医師の健康と医療安全の確保に向けた体制の構築を目指して

医師の健康と医療安全の確保に向けた体制の構築を目指して

医師の健康と医療安全の確保に向けた体制の構築を目指して

 令和3年度都道府県医師会医師の働き方改革担当理事連絡協議会の3回目が11月19日、日本医師会館小講堂で開催され、WEB配信を行った。
 当日は都道府県医師会担当理事を始めとした医師会関係者の他、羽生田俊参議院議員等、169名が参加した。
 松本吉郎常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで中川俊男会長は、本年5月に成立した「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」において、医師の働き方の新たな仕組みが規定されたことに触れ、「医師の健康確保や医療安全の観点から、医師の働き方改革は先延ばしにできない課題となっている」として、そのための準備を進めていく必要性を訴えた。
 その上で、都道府県医師会に対しては、「本事業の実施、運営のための支援をお願いしたい」と述べた。

議事1:医師の働き方改革に関する議論の経緯

 
 城守国斗常任理事は、医師の時間外労働規制として医療機関と所属する医師に適用される水準を、2024年4月の施行に向けたスケジュールと共に改めて概説した上で、厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会」での最新の検討状況として、主に(1)医師労働時間短縮計画作成ガイドライン、(2)追加的健康確保措置―について説明した。
 (1)では、労働時間短縮計画が努力義務に変更されてはいるものの、A水準以外の地域医療確保暫定特例水準(B水準、連携B水準)及び集中的技能向上水準(C―1水準、C―2水準)を受ける医療機関は、医療機関勤務環境評価センター(以下、評価センター)による第三者評価を受審する前に2024年度以降の時短計画案を作成する必要があるとし、「対象となる医療機関においては、早めに時短計画案を作成し、指定申請をして欲しい」と訴えた。
 (2)では、勤務間インターバル制度のイメージ図を示した上で、連続勤務時間制限・勤務間インターバル規制等について、①通常の日勤及び宿日直許可のある宿日直に従事する場合②宿日直許可のない宿日直に従事する場合―に分けて、それぞれの基本的ルールを説明した。
 その中では、始業は事前に勤務シフト等で予定された労働の開始時間とすることの他、臨床研修医に対する対応などについても解説。今後は、医師のシフト組みの複雑化が予想されることから、厚労省においてアプリの開発に向けた検討が進められていることを明らかにした。
 更に、評価センターの評価事業やC―2水準の対象技能となり得る具体的な技能の考え方などについても触れた上で、「今後、医療機関で働き方改革を進める過程において困った際には、厚労省が開設するポータルサイト『いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)』を参考とするとともに、各都道府県の医療勤務環境改善支援センターに相談して欲しい」と述べた。

議事2:医師の働き方に関する各種事業の取組

 
 続いて、松本常任理事が、医師の健康を守るために定められた「連続勤務時間の制限」「勤務間インターバル」「長時間労働時の面接指導」の三つの取り組みが医師の健康確保措置となる一方、病院側には宿日直や副業・兼業を行う医師の勤務間インターバルの確保が必要となることを説明。その場合には、外勤先の「宿日直許可」の有無が、派遣する病院として大きな問題になり、大学病院から派遣が得られなくなることなどが考えられるとして、改めて、医療機関に「宿日直許可」の申請を要請するとともに、自己研鑽やオンコールについて時間外の賃金や労働時間の扱いなど、勤務医のコンセンサスを得ることの重要性を訴え、その体制整備を求めた。
 次に、(1)評価センター、(2)面接指導の実施準備に係る事業、(3)C―2水準(特定高度技能)の審査に関する事業―について解説した。
 (1)では、日本医師会が評価機能の組織となる評価センターを受託すべく、その指定に向けた準備を進めていることを明らかにするとともに、「評価機能」の設置準備に係る委託事業に関しては、日本医師会「医師の働き方検討委員会」と連携し、本委員会の下に評価機能ワーキング、模擬審査ワーキング、指定法人ワーキンググループをそれぞれ立ち上げて検討を進めているとした。
 「評価機能」の業務スケジュールについては、2022年度は原則、書面評価を行い、評価結果が低い場合には2023年度に訪問評価を実施すること、施行開始の2024年度以降は3年間を1クールとして評価を行うことを説明。また、必要書類の提出から都道府県での承認までには6カ月近く掛かることから、差し戻しも考慮の上、来秋頃から始まる書面評価に向けて、早めの対応が求められるとした。
 更に、評価者に関しては、その養成が重要になるとして、講習会やB・C水準の評価対象病院の総定数、都道府県医師会別のサーベイヤーの人数とブロック区分表案及びサーベイヤーの業務等について説明し、都道府県医師会に対して医療サーベイヤーの推薦に関する協力を求めた。
 その他、模擬審査に関して、実施予定や評価の視点とともに、具体的な評価項目及び評価基準については、『医療機関の医師の労働時間短縮の取組の評価に関するガイドライン』が公表されていることを紹介した上で、評価機能の役割は、「医療機関に対して取り締まりや罰則を与えるものではなく、体制整備の取り組みの支援を行っていくものである」と改めて強調した。
 (2)では、面接指導に必要な面接指導医師数や面接指導に要する時間の目安、水準ごとの実施時期及び面接の実施方法を概説。また、面接指導医師を養成するためのe-learning教材を、今年度中の完成を目指して作成中であることを明らかにした。
 (3)では、「C―2水準の審査組織」の準備に係る委託事業として審査組織のイメージを説明し、最後に改めて、(1)と(3)のそれぞれの委託事業と指定法人に関する今後のスケジュールを示した。
 その後の協議では、評価組織で発生する費用負担、勤務医の労働実態の把握の仕方、面接指導の体制やサーベイヤーに関する業務量、推薦手続き、養成などの質問の他、タスクシェア、タスクシフトによる安心安全な医療の担保を懸念する意見や医師会に求められる具体的な業務の明確化への要望、働き方改革の委託事業の多大な業務負担に対する見解を問う意見など、多くの質問、意見が挙がり、今村聡副会長、松本・城守両常任理事の他、福田亮介厚労省医政局医事課医師等医療従事者の働き方改革推進室長から回答を行った。
 最後の総括では今村副会長が、C―2水準の審査制度の議論が進められていることに関して、「将来の医療の質の維持・向上のためには非常に重要な仕組みとなる。先生方のご意見を踏まえて制度設計していきたい」と述べるとともに、今後も情報提供を随時行っていくとして、改めて医師の働き方改革への理解と協力を求めた。

ご活用下さい!
 厚生労働省が開設している「いきいき働く医療機関サポートWeb(いきサポ)」(https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp)には、医療機関の勤務環境の改善に役立つ各種情報や医療機関の取り組み事例が紹介されています。ぜひ、ご活用下さい。

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