閉じる

令和4年(2022年)1月5日(水) / 日医ニュース

令和4年 年頭所感

令和4年 年頭所感

令和4年 年頭所感

 明けましておめでとうございます。
 会員の皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えになられたこととお慶(よろこ)び申し上げます。
 年頭のごあいさつに先立ち、この年末年始も新型コロナウイルス感染症の診断や治療、ワクチン接種はもとより、救急診療や休日診療など、医療現場でご尽力頂いている全ての医療従事者の皆様に、心からの敬意と感謝を申し上げます。
 昨年は、新型コロナウイルス感染症への対応に終始した一年でした。1月8日には、関東1都3県に緊急事態宣言が発令され、その後の一年を暗示するかのような年明けとなりました。やがて、ワクチンの接種が始まり、治療薬の治験が進み始めると、医療者として、このウイルスと闘うための有力な手段が得られることへの期待が高まってきました。
 そして、夏を迎え、ワクチン接種が本格化すると、全国の医師会員の先生方にその底力を見事に発揮頂き、程なくして政府が示す「1日100万回接種」の目標をはるかに超え、最大167万回の接種を達成することができました。これは全国の医師会の偉業だと思います。
 しかし、程なくして再び全国で爆発的な感染拡大が起こりました。特に大都市では医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、私が死守すべきと考えていたコロナ医療とコロナ以外の通常医療の両立が危うくなりました。どちらの医療も命の重さに変わりはありませんが、通常医療を制限してでもコロナ医療を、そしてコロナ病床を確保せよという論調も社会に広がり始めました。世界一、平等で公平な日本の公的医療保険制度は風前の灯火(ともしび)とも言える状況でした。
 私は、17万3000人の会員の先生方に直接手紙を差し上げました。既に、他職種の医療従事者の皆様と限界までコロナと闘っているのは承知の上でしたが、どうか、もうひと踏ん張りのご協力をお願いしたいとの切実な思いからでした。手紙に対してはさまざまな反応がありましたが、多くの先生方と危機感を共有し、「絶対に負けない、諦めない」という連帯感を強く感じることができました。
 この間にも、先生方にはコロナ医療、ワクチン接種、通常医療に献身的に取り組んで頂きました。そして11月に入り、猛威を振るった新型コロナの感染者数が減少に転じ、12月には「収束」と言える状況になりました。
 全国の医師会の先生方と、世界的に見ても高い公衆衛生意識をもっている日本の全ての人々の勝利だと確信しました。
 しかし、「終息」したわけではありません。敵はしたたかです。昨年末には新たな変異株も発見され、各地で市中感染も確認されています。まだまだ、闘いは続きます。がんばりましょう。
 昨年10月には岸田内閣が発足しました。日本医師会は医療界を代表する専門家集団として、これまで以上に現政権と共に今後の医療政策のあり方について胸襟を開いて議論し合える関係を築いていこうと思っています。
 日本医師会の主張に応え、都道府県医療計画の「5疾病・5事業」に新興感染症等への対策が加えられ、6番目の事業になりました。次の医療計画は2024年からですが、これを前倒しして進めていくことが重要です。すなわち、新型コロナウイルス感染症の再拡大だけでなく、新たな感染症の脅威にさらされた場合においても、人々の生命と健康を確実に守ることのできる体制を平時から盤石にしておくことが急務です。
 感染症に対する医療の備えを十分に整えた上で、人々の暮らしを取り戻し、社会全体の経済を回復していくことが、今後一貫して目指すべき重要な課題です。日本医師会は、この課題の克服に向けて、会員の先生方のお力をお借りして、国と共に全力で取り組み、かけがえのない地域医療を守り支えていきます。
 さて、私ども執行部は、国民皆保険を守るため、新型コロナウイルス感染症下であろうとも、安全・安心な医療の維持、確保に努めています。
 私は平時の医療提供体制の余力こそが有事の際の対応力に直結すると訴え続けてきました。平時の地域医療を支えるためには、財源の確保は絶対です。ましてや今は、新型コロナウイルス感染症に立ち向かっています。医療従事者の働き方や医療機関経営を犠牲にしてでも、感染リスクや風評被害にも耐え闘ってきました。必ず迎えるポストコロナの医療提供体制への道筋をつけなければなりません。
 医師を始めとする医療従事者の働き方改革、医師偏在対策、病床機能の自主的な収れん、外来医療機能の分化・連携、医療のデジタル化等、多くの重要課題が山積しています。かけがえのない日本の医療を将来につなぎ、更に向上させるため、これらの課題を一つひとつ着実に、そして前向きに乗り越えます。
 今、私達は、新型コロナウイルス感染症との闘いという長いトンネルの中にあります。しかし、新たな変異ウイルスや感染再拡大に対する備えを緩めることなく、トンネルを駆け抜け、本年がまさに希望あふれる記念すべき年となることを願っています。
 新しい年が会員の先生お一人お一人にとって充実した佳き年となりますことを祈念し、年頭に当たってのごあいさつといたします。
 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる