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令和4年(2022年)1月20日(木) / 日医ニュース

「医師の働き方改革」に思う

勤務医のひろば

「医師の働き方改革」に思う

「医師の働き方改革」に思う

 医療制度は完成型があるわけではないので、常に改革が行われるのは必定である。
 本邦ではその一つとして「医師の働き方改革」が進められている。
 働き方改革と称しているものの、その内容は「働き方」そのものは少なく、単純に労働時間の規制が主となっている。それでも、過酷な労働状況に置かれている医師がいなくなることを期待する。
 2024年4月から、勤務医の時間外労働は基本的に年960時間に制限される。例外として、指定された医療機関においては年1860時間の制限となる。
 長時間働いて、多くの患者に対応したいと思っても、それはできない時代になる。
 連続勤務時間の制限と勤務間インターバルも、医療現場においては大きな影響を及ぼすと思われる。連続勤務は28時間、インターバルは9時間である。これまでのように当直の後、そのまま勤務し続けることはできなくなる。
 一部の病院では当直明けの勤務体制に対応しているところだが、医療界全体においてはまだまだ対応途上だろう。この改革が進めば、どの医師も法に定められる時間で帰るようになることも考えられる。
 自分を差し置いて患者の対応をすることは医師の美徳の一つであり、周囲から尊敬される理由の一つでもあったと思われる。
 私達は、決して尊敬されることを目的として働くのではないが、今後そういう考え方は廃れていくのかも知れない。時間外に働くのは、時間管理ができないルーズな人間と見なされるかも知れない。時代の流れには抗いようもないが、失われる文化は二度と戻らないであろう。
 医療界の総量として提供できる医療が、現在より減少した時、医療を受ける人はどうなるのだろう。改革が穏やかに着地することを願う。

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