毎朝、テレビを付けたら天気予報を見るようにしている。その日の天気もさることながら、南北に長い日本では西日本の天気が数日後の天気の参考になる。天気図を用いたシミュレーションでは、西日本が雨になると、雨雲は徐々に日本列島を北上し、数日後には北海道に到達し、雨になる。だから、天気図で九州に近付く台風や雨雲を見ると、「ああ、あれが数日後には北海道まで来るのか」と憂鬱(ゆううつ)になっていた。
先日、何気なくテレビを見ていたら、気象予報士の森田正光さんが出ていた。そこでしていた雲の話に驚いた。雲はその土地その土地で作られるので、九州の上空にある雲がそのまま東京の方に来るわけではないそうだ。並んだ電球が点灯しては消え、隣の電球が点灯しては消えを繰り返すと、ネオンサインのように光が流れて見えるのと同じだそうだ。雲を見ると流れているように見えるが、遠くまでは流れていかず、しばらくすると消えてしまうようだ。
確かに、小学生の頃、地上の水分が蒸発して上空に行き、そこで雲を作って雨を降らせるということを習ったような気がする。だから、雲はその土地その土地で作られることは分かっていたはずだ。にもかかわらず、テレビで天気図の日本列島を北上する雲の動きを見ながら、あの雲がこっちに来るのだと勝手に思い込んでいた。せっかく知識があっても、目の前の情報と結び付かないようでは生きた知識にはならないなと思った。
しかしよく考えると、目に見えている情報を勝手な思い込みで歪曲(わいきょく)して解釈しているのではないかとも思った。むしろ、こちらの方が怖い話だ。先入観にとらわれず、自分の得た知識に矛盾しない正確な情報を見分ける目が、まだまだでき上がってはいない未熟者だと反省しきり。