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令和4年(2022年)3月20日(日) / 南から北から / 日医ニュース

天下分け目の戦い

 小学校3年生の長男は戦国武将に夢中です。
 ダンボールで作ったお手製の甲冑(かっちゅう)をつけ、手には槍(やり)と腰には100円ショップで買ったおもちゃの刀を携え、「曲者(くせもの)! 名を名乗れ!!」と仕事帰りの私に詰め寄ります。凝り性な性格で、兜(かぶと)にはわが家の家紋を描き、前面の角に当たるところはご祝儀袋の水引を取り付け、胸には豊臣家の家紋である五七(ごしち)の桐を描き、背中には真田家の家紋である六文銭を描いた大きな指物をくくりつけて、"いったいあなたはどこの武将?"と言う出で立ちです。
 コロナ禍で友達と自由に遊ぶこともままならないため、家で過ごす時間が多くなりました。そのような中『日本の歴史』という学習漫画を親戚から頂き、それだけで飽き足らず戦国武将大辞典や忍者図鑑などをずっと読んでいるうちに歴史好きになったようです。
 最初に興味を持ったのが家紋で、大名の家紋を自由ノートにいくつも描き、覚えたようです。町を歩いていても、丸い家紋らしきものを見つけるとついビクンと反応してしまい、「これはあの島津家の家紋だよ」とか「柴田家の家紋は鳥が2つなんだよ」と得意になって披露します。クラスの女の子から「わだくんはれきしにくわしくてすごいです」というお手紙(少女漫画のキラキラした目の似顔絵付き)をもらって有頂天になり、更に歴史探求への情熱を燃やしております。
 私自身も歴史小説が大好きで、吉川英治や司馬遼太郎、山岡荘八などの三国志や戦国時代の武将の群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)の物語を何回も繰り返し読み、中学生の頃にはパソコンゲーム『信長の野望』にハマリ何度も日本統一を成し遂げており、風呂に入ると好きな軍師や合戦の話で盛り上がります。最近では、私の知らないようなマニアックなエピソードも教えてくれます。
 お気に入りの武将は真田幸村のようで、夏休みにはゆかりの地に遊びに行きたかったのですが、感染が収束しないため昨年に引き続き今年も訪れることができませんでした。
 彼が選んだ夏休みの自由研究は関ヶ原の戦いです。ダンボールで合戦場の地形を作り、クリニックで使用したワクチンのふたを使って東西両軍の陣形を再現しました。もちろん新型コロナワクチンのふたも大量に布陣に使用されています。
 西軍は左右山の上に、平地にいる東軍を挟み込むように対峙しており、通常に考えたら東軍の徳川方が負ける布陣です。ところが、実際には徳川家康が裏工作をして小早川秀秋などを寝返らせ、一気に石田三成は追い詰められ、たった一日でこの合戦は終わってしまいます。このことを彼は学校でみんなの前で上手に説明できるのでしょうか?
 人類と新型コロナとの闘いは、まだ先が見通せません。早く天下泰平の世となり、自由にお城見学が行けるようになりたいと祈るばかりです。

(一部省略)

東京都 練馬区医師会報 第643号より

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