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令和4年(2022年)4月5日(火) / 日医ニュース

エストニアの電子政府とウクライナ紛争

エストニアの電子政府とウクライナ紛争

エストニアの電子政府とウクライナ紛争

 エストニアはバルト海に面した人口130万人足らずの小国であるが、ICT先進国として名高い。国連の電子政府調査においては世界3位にランキングしており、日本のマイナンバーカードはエストニアの個人識別コード(Personal Identification Cord)を参考にしたと言われている。
 同国では医療分野のデジタル化においても日本とは違う形で進化を遂げている。例えば、エストニアでは患者情報を複数の医療機関で利用する際に、電子カルテ同士が接続されているのではなく、政府のデジタル化の基盤となるポータルサイト(X―Road)に医師が診療情報を入力することで、相互参照が可能となる仕組みを採用している。電子カルテが進化していると言うよりは、あえて日本風に言うとすればレセコンが進化したようなイメージであった。
 エストニアでは結婚、離婚、不動産売買以外の行政手続きは全てオンライン上で可能であり、役所に行くということはほとんどないとのこと。また、ICT教育も盛んで、小学校からプログラミングの授業があり、人材育成にも力を入れている。
 また、エストニアの歴史は中世に遡(さかのぼ)るが、現代史においては1990年にソビエト連邦から独立した新興国とも言える。
 2016年にエストニアを訪問した際、エストニア政府に、どうしてICTにこれほど力を入れているのかと聞いたところ、以下の二つの理由を挙げた。
 第一は、旧ソ連から独立し資源も外貨もない中で外貨を稼ぐためにICT立国を国是(こくぜ)としたこと。第二としては、万が一、ロシアに再占領されてエストニア国民が全世界に散らばっても、e―エストニア国を成立させるため、と。その当時は、冷戦時代の過剰反応だろうと思って聞いていた。21世紀の現代において、独立国を占領するような国があるはずがないと。
 しかし、今回のロシア軍のウクライナ侵攻でエストニアを始めとした旧東側諸国のロシアに対する恐怖心が分かった。
 本原稿は2022年3月上旬に執筆したものであるが、ウクライナの戦火はますます拡大している。一刻も早い平和が訪れることを願う。

(日医総研副所長 原祐一)

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