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令和4年(2022年)4月5日(火) / 南から北から / 日医ニュース

最後の晩餐(ばんさん)

 新型コロナワクチンの予防接種で診療所の先生、職員共にてんてこ舞いの今日この頃です。私のクリニックでは、ワクチン専用の接種日や日曜日の接種日を設けて対応しています。どんなに忙しくて疲れていても、時間が来るとお腹がペコリンになり、うまい物を食べたくなります。
 初夏の時期は、鮎が好きです。毎年、この時期に富山県の庄川の鮎を食べに出掛けます。焼きたての熱々の鮎はビールによく合います。鮎は塩焼きが一番です。旬なものはあまり手を加えなくてもおいしく頂けます。
 福井県の山間にある曹洞宗大本山永平寺では、食べることも大事な修行だそうです。食事とは、自然界の命を頂き己命のもととすることで、食事を司(つかさど)ることは、座禅や読経と同様の修行であると位置付けているそうです。開祖道元禅師は、食事が整うと生活が整うと示されたとされます。
 先日、NHKの番組で、咲き誇る桜・散りゆく桜を見ながらお弁当を食べているご夫婦が映っていました。よく見ると、少し前に病で仕事をお辞めになった恩師でした。現役時代はメシなんかより仕事だ......という感じでエネルギッシュに働いていた先生でしたが、画面の中では、穏やかに、しみじみと奥様と2人、散りゆく桜を自分の余命と重ねながら、おいしそうにお弁当を食べていました。
 今の私は明日を生きるため、仕事をするために、もりもりメシを食べます。服にはこだわりはありませんが、食べものは地物産にこだわります。自分は材料を好きなだけ買ってきて、献立を考えますが、全く作りません。正確には作れません。もし、女房が死んだら、数日以内にミイラになってしまいます。今は元気ですが、あと何十年かするとよぼよぼになっていると思います。
 人生の最後の食事は、豪華でなくてもいい。旬なものでなくていい。普段から食べている自分の好きなものを、普段どおりに食べて、最後にごちそうさまと言えれば、満足なのではと思います。

石川県 金沢市医師会だより 第582号より

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