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令和4年(2022年)4月5日(火) / 日医ニュース

医師独自の宿日直基準の設定等を求める要望書を後藤厚労大臣に提出

医師独自の宿日直基準の設定等を求める要望書を後藤厚労大臣に提出

医師独自の宿日直基準の設定等を求める要望書を後藤厚労大臣に提出

 日本医師会は四病院団体協議会並びに全国有床診療所連絡協議会と共に医師の「宿日直許可」の問題について、医師独自の宿日直基準を設けること等を求める要望書を取りまとめ、3月18日、中川俊男会長らが厚生労働省を訪問し、後藤茂之厚労大臣に手交した。

 日本医師会では、医師の働き方改革の大きな課題の一つである医師の「宿日直許可」の問題について、医師の働き方改革が産科医療機関における宿日直体制にもたらす影響等のアンケート調査を実施。その結果を基に定例記者会見などを通じて、新型コロナウイルス感染症への対応と働き方改革への準備という二つの大きな課題への取り組みを現場に求めることは非常に厳しいと訴えるとともに、医師独自の宿日直基準を設けること等を求めてきた。
 今回の共同の要望書提出は、この要望の実現を目指す日本医師会からの呼び掛けに、四病院団体協議会並びに全国有床診療所連絡協議会が賛同したことにより、実現したものである。
 要望書では、現状の許可基準のままで、罰則付き時間外労働時間上限規制、勤務間インターバル規制、連続勤務時間制限が導入されれば、「大学病院からの応援で成り立っている地方の医療機関では、宿日直許可が取れないために、通算の上限時間超過を懸念する大学病院から医師を引き揚げられ、医療提供体制を縮小せざるを得なくなる」とするとともに、「上限規制により大学から他の医療機関への応援が制限されると、副業・兼業先からの収入が得られなくなった大学病院の医師が離職して、処遇のよい一般病院に移る動きが起こり、大学病院の診療、研究、教育の質の確保が困難となり、これらがどの地域・診療科・医療機関・大学でどの程度起こるか予想できないばかりか、こうした動きは既に起きている」と指摘。
 その上で、(1)宿日直許可自体の判断基準、(2)宿日直許可の回数等、(3)行政の対応、(4)罰則規定の取り扱い―について、その改善を求めている。
 (1)では、①各々の医師について、宿直時の睡眠時間が十分でない日(例えば、睡眠時間が6時間程度に満たない日)が月に5日以内である場合②宿日直中に救急等の業務が発生する場合でも、その業務時間が平日の業務時間と比べて一定程度の割合に収まっている場合③特にローリスクな分娩が主となる産科医療機関においては、分娩数にかかわらず、ハイリスクな分娩を扱う産科医療機関においては、宿日直中の分娩等の対応が月8〜12件程度の場合―については、宿日直許可を認めてもらえるよう要望。
 (2)では、①医師の健康に配慮しつつ、地域医療提供体制を維持するために、医療機関における各医師の宿日直について、宿直を月8回、日直を月4回まで許可を認める②他の医療機関に宿日直の応援に行く医師の場合、①で示した宿日直回数については、派遣元と応援先の宿日直回数をそれぞれ分けて取り扱う③各々の医師の連日の宿日直について許可を認める―ことを求めている。
 また(3)では、医師独自の宿日直許可基準を明確化し、対応の統一を図るとともに、実態に合わない判断が出された場合、厚労省に相談できる窓口を設置すること、(4)では、基準を見直したとしても、現状では全国の医療機関が新型コロナウイルス感染症対応に全力で当たっており、働き方改革に取り組める状況にないとして、時間外労働時間の上限規制の罰則適用を数年猶予することをそれぞれ要請している。
 当日の要望書提出には、相澤孝夫日本病院会長、猪口雄二全日本病院協会長、加納繁照日本医療法人協会長、前田津紀夫全国有床診療所連絡協議会常任理事、松本吉郎日本医師会常任理事が同席。中川会長が要望書の内容を説明した後、他団体からは、このままでは大学からの医師の引き揚げが起こり、地域医療の崩壊につながりかねないとして、早期の改善が求められた。
 これに対して、後藤厚労大臣は「今日のお話を聞いて、大変な状況にあることを改めて再認識した」として一定の理解を示す一方、良質で安全な医療を国民に提供するためには医師個人の健康も守っていかなければならないと指摘。「現在、厚労省として医師の働き方改革が医療現場にどのような影響をもたらすのか調査をしているところであり、その結果も踏まえて、どのような対応ができるのか考えていきたい」として理解を求めた。

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