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令和4年(2022年)4月20日(水) / 日医ニュース

火山噴火災害を想定した初の訓練を実施

火山噴火災害を想定した初の訓練を実施

火山噴火災害を想定した初の訓練を実施

 2021年度防災訓練(災害時情報通信訓練)桜島噴火災害想定訓練を3月18日、スカパーJSAT並びに宇宙技術開発、NTTドコモ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの協力により、WEB会議システムを用いて実施した。
 今回の訓練は、20XX年3月18日(金・平日)10時に鹿児島県桜島が噴火、その後海底火山噴火及びそれに伴う地震、津波、土砂災害等の複合災害が発生したとの想定の下に行われたもので、日本医師会に災害対策本部を設置し、衛星通信等を用いて鹿児島県の被害状況を確認するとともに、日本医師会災害医療チーム(JMAT)の派遣等を検討した。
 当日は、長島公之常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつした中川俊男会長は、まず、3月16日に福島県沖で発生した最大震度6強の地震について、お見舞いの言葉を述べた上で、今回の訓練の担当である鹿児島県医師会と姶良地区医師会、並びに参加した各都道府県医師会などに謝意を示した。
 今回初めて火山噴火を想定として取り上げた理由については、「日本列島は火山列島とも言われ、火山噴火では噴石、火山灰、火砕流などにより、交通網、電力、通信網への深刻な影響が懸念される」と説明。そのような状況でも衛星通信は大きな影響は受けないとされているとして、訓練の成果に期待感を示した。
 続いてあいさつした池田琢哉鹿児島県医師会長は、今回桜島噴火がテーマとなったことを歓迎。火山災害は複合災害になることが特徴だとして、発生に備えた体制づくりや多職種連携の取り組みの必要性を強調した。
 引き続き、中薗紀幸姶良地区医師会理事(災害医療担当)、衆議院災害対策特別委員会委員長の小里泰弘衆議院議員のあいさつがあった後、訓練に移り、まず「訓練概要」を長島常任理事が、「噴火災害における災害医療の特性」を吉原秀明鹿児島県医師会理事(救急災害担当)がそれぞれ説明。その後、別掲の訓練の流れに沿った形で訓練が進められた。
 訓練後の意見交換では、準備の意義を再認識したとの感想を始め、火山災害対応が地震災害等の後回しになってきたことへの指摘や、ガイドラインの作成及び避難所での認知症等への対応の必要性を求める意見などがあった。
 総括を行った猪口雄二副会長は、今回の訓練の関係者に謝意を示すとともに、火山噴火特有の課題について理解を深めることができたとした他、通信衛星の活用については、「日本医師会JMAT研修ロジスティクス編」の成果も反映できたとの見方も示した。

(別掲)当日の訓練の流れ

  • 発災2日前 20XX年3月16日(水)
    桜島大規模噴火の可能性があることを受け、鹿児島県気象台が桜島の高齢者など要支援者に避難指示を発令。鹿児島県の「被災地JMAT」を派遣したいとの意向を受け、日本医師会に災害対策本部が設置される。県外からの応援のため、九州医師会連合会の各県医師会にも「支援JMAT」の編成準備を依頼した。
  • 発災1日前 3月17日(木)
    JMAT派遣要請を完了。日本医師会でも体制整備が進む。鹿児島市市街地が被災想定地域となったことを受け、鹿児島医師会の医師会機能を霧島市に移転。警戒レベルが5に引き上げられ、桜島全島に避難指示が出される。
  • 発災1日目 3月18日(金)
    桜島が噴火。日本医師会では役職員の安否確認を行うとともに、関係職員に休日・早出出勤を命じる。
    桜島北方沖の海底火山が噴火。直後、高さ10メートルの津波やマグニチュード7の地震も発生する。
  • 発災2日目 3月19日(土・日本医師会休業日)
    災害対策本部会議を開催。本大規模災害が「桜島噴火災害」と命名される。
    噴石や地盤沈下等の各種被害が発生するとともに、入院患者を抱え、籠城状態となる病院等も報告される。
    日本医師会担当事務局の通常業務を停止し、被災者健康支援連絡協議会の各構成団体に協力を要請するとともに、九州医師会連合会各県医師会にJMATに関する要請も行う。
    衛星通信を利用した鹿児島県医師会とのテレビ会議及び姶良地区医師会との衛星電話会議の後、都道府県医師会オンライン会議を開催。JMATに関する説明や手配などを検討する。
    (中略)
  • 発災8日目 3月25日(金)
    桜島噴火が最盛期を終え、一部で交通網が復旧。DMATの撤収スケジュールの議論が始まる一方、多くの避難者は、避難生活が長期化する見通しとなる。
    JMATの巡回診療が徐々に開始。日本医師会、鹿児島県医師会、「統括JMAT」間で今後の被災地支援活動を協議し、JMATの手厚い派遣体制を進めていくことを確認。
  • 災害10日後 3月28日(月)
    全面的に道路が啓開。全国からJMATの派遣が開始される。また。厚生労働省を通して内閣府との間でJMAT派遣への災害救助法適用スキームに関する交渉を開始。
    (中略)
  • 発災4週経過 4月15日(金)
    「J-SPEED」で状況を確認の上、4月17日の派遣をもって九州以外の都道府県医師会のJMATを終了することなどを決定。
  • 発災8週経過 5月13日(金)
    現地で新型コロナウイルス感染症が急拡大。日本環境感染学会に協力を要請する。
    コロナ患者受入病床確保のため、「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を再始動するとともに、感染拡大地域のワクチン接種等について、九州医師会連合会各県医師会に協力を要請。
  • 発災9週経過 5月20日(金)
    避難指示が解除されたことにより、現地の医療ニーズが急低下。関係者の協議の結果、今週で県外からの「統括JMAT」の撤収が決定される。
  • 発災10週経過 5月27日(金)
    鹿児島県医師会・「統括JMAT」と協議の上、6月10日をもってJMAT活動を終了することを決定。医師等の不足が深刻な地域への支援のため、JMATⅡを派遣する枠組みとする方針も決定する。
  • 発災13週経過 6月17日(金)
    国会で補正予算が組まれるとともに、4月初めに復旧のための予算要望を行ったことにより、各種補助金の手続きも進められる。

関連情報
220420f2.jpg 「防災推進国民大会2021日本医師会セッション」の模様は、同大会のホームページ(https://bosai-kokutai.jp/)でご覧頂けますので、ぜひ、ご覧下さい。

※外字は代替文字で標記しております。

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