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令和4年(2022年)4月20日(水) / 日医ニュース

新たな決意をもって全国の医師会の先生方と議論を深め、共に進んでいく考え示す

新たな決意をもって全国の医師会の先生方と議論を深め、共に進んでいく考え示す

新たな決意をもって全国の医師会の先生方と議論を深め、共に進んでいく考え示す

 第150回日本医師会臨時代議員会が3月27日、新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑み、テレビ会議システムを用いて開催された。
 冒頭あいさつした中川俊男会長は、現執行部が選任、選定されてからの2年間を振り返った上で、自身の率直な所感を述べた他、閉会のあいさつでは、新たな決意をもって全国の医師会の先生方と議論を深めつつ、共に進んでいく決意を示した。
 〔代表質問に対する執行部からの回答の要旨は(別記事参照)

会長あいさつ

 一昨年の6月に、現執行部を選任、選定頂いてから、2年近くが経ちました。私は、日本医師会役員14年の経験を糧に会務に邁進(まいしん)しましたが、苦難も多く、横倉義武名誉会長始め多くの諸先輩方のご指導で、何とか今日まで務めることができました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。
 この2年近くは新型コロナウイルス感染症との闘いでした。未知の感染症によって多くの生命が失われました。そして、今、ロシアのウクライナへの軍事侵攻によって、幼い子どもを含む多くの人命が連日失われています。国内では3月16日に福島県沖で最大震度6強の地震が発生し、東日本大震災の記憶と教訓が再び呼び起こされることとなりました。
 この2年間程、人々の生命の重さを、そしてそれを支える医療の重みを思わなかった日はありません。有事に対する危機管理を問われる2年間でした。このような情勢の中での私の率直な所感を述べさせて頂きたいと思います。

ウクライナに対する継続的な支援を 

 始めに、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻についてです。
 21世紀の今、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、恒久の平和と自由を願う世界の秩序が踏みにじられています。連日、ウクライナはロシア軍の無差別攻撃にさらされ、幼い子どもを含む多くの命が奪われています。
 日本医師会は3月9日に、ウクライナの医療を支援するために寄附金として1億円を世界医師会に送金しました。
 また、3月15日には、日本医師会と47都道府県医師会の連名で「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対する緊急声明」を発表し、全国の郡市区医師会、世界医師会加盟112カ国の医師会、そして報道各社にお送りしました。皆様のご支援、ご協力に感謝を申し上げます。
 日本医師会からの寄附金は、世界医師会が設立した「タスクフォース・ウクライナ」が管理しています。このタスクフォースは、日本医師会、ポーランド医師会、スロバキア医師会、ハンガリー医師会、フランス医師会、ルーマニア医師会で構成されており、元イスラエル医師会長が財政運営の管理委員長を務めておられます。
 ウクライナ医師会への支援の第一弾は、イスラエルのテルアビブで調達した医薬品と医療物資でした。医薬品は航空貨物として直接、ワルシャワに送られました。医療物資は、3月23日に在イスラエルのウクライナ大使館を出発し、25日に陸路、ポーランドのワルシャワに到着しました。
 これらの医薬品、医療物資はポーランド医師会がウクライナ国境まで搬送し、ウクライナのリビウから来たウクライナ医師会役員に手渡すことができました。今後、ウクライナ全土に配布されます。
 3月21日に、オレグ・ムジーウクライナ医師会長から世界医師会へお礼状が届いております。そこには次のように記してあります。
 「ロシアの占領軍は、病院や診療所を破壊し、専門職務を遂行する現場で医師を殺害しています。117の病院と五つの産科病院が破壊されました。
 世界中から提供された人道支援に感謝いたします。私達は、子どもを含むウクライナ国民のために避難場所、医療の提供、仕事を調整頂いている皆様の温情に心から感謝いたします。」
 このように現地の様子をお伝え頂きました。
 今も、ロシアのウクライナへの攻撃は、日に日に激しさを増し、無差別化しています。その中で、ウクライナの医師を始めとする医療従事者は献身的に頑張っています。
 現在も毎日、全国の医師会、医師会員、そして一般の方から支援金が寄せられています。日本医師会は、全国の医師会、医師会員と共に、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会の協力も得て、タスクフォースを通じて引き続きウクライナ医師会とウクライナの医療を支援していきます。これからも、ご支援をよろしくお願い申し上げます。

都道府県医療計画に「新興感染症対策」を加えることを実現

 次に、新型コロナウイルス感染症との闘いについてです。
 日本医師会は、全国の医師会と共に2年以上にわたって新型コロナウイルス感染症と闘ってきました。
 この2年間、さまざまな出来事がありました。改めて顕になったのは、わが国の新興感染症に対する備えが手薄であったことです。どこで検査を受けるのか、マスクや防護具を始めとする医療物資、医療器材がどこにどのくらい備蓄されているのか、重症者から軽症、無症状者までの患者をどの医療機関で対応するのか、全く白紙の状態でした。
 医療従事者の献身的な働きで耐えてきたものの、有事に対応する医療体制を構築する必要がありました。
 そこで私は、都道府県医療計画の5疾病5事業に「新興感染症対策」を加えることを国に提案し、医療法の改正によって5疾病6事業に見直すことを実現しました。そして、本来2023年度に策定することになっていた第8次都道府県医療計画のうち、新興感染症対策は、新型コロナの保健・医療提供体制確保計画をブラッシュアップ、発展させていく中で、前倒ししていきます。
 また、医療計画では平時において、新興感染症が侵入してきた際の具体的な対応策を決めておきます。例えば、医療物資の備蓄、コロナ病床の確保、人材の派遣などを平時から定め、毎年更新していくことを強く要求しています。

緩むことなく新型コロナと闘い続ける

 また、新型コロナウイルス感染症が拡大に向かっていた頃、「日本は諸外国に比べて病床数が多いのに、なぜ、医療が逼迫(ひっぱく)するのか」といった、あたかも医療現場の対応が十分ではないかのような批判がありました。
 しかし、これは情報のミスリードです。例えば、人口100万人当たりの新型コロナウイルス感染症による死者数は、3月24日現在でG7諸国においては、イギリスが2410人、フランスが2098人、ドイツが1519人、アメリカが2931人であるのに対し、日本は一桁少ない218人です。
 また、新規感染者が最大になった時に、新規感染者数に対してどれだけ入院できるかという指標で見ると、日本はイギリスやフランスの約3倍、アメリカの1・5倍です。日本は多くの患者を入院施設で受け止めたのです。その結果、医療現場は、まさにぎりぎりの状態で逼迫しつつも、しっかりと患者さんを守ってきました。
 コロナ禍を経て平均寿命が延びたのは、G7の中では日本だけという事実もあります。
 世界に誇る公的医療保険制度に基づく国民皆保険の日本は、コロナ医療においても、世界の中で高水準であると考えます。このことを繰り返し社会に伝えることで、ミスリードするような批判的な意見は明らかに減少しました。
 新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大の中で、通常の医療を制限してでもコロナ医療を優先させるべきであるという考え方も根強く広がりました。
 しかし、日本医師会は、一貫してコロナ医療とコロナ以外の通常医療を両立しなければならないと主張してきました。今後も、この方針に変更はありません。命の重さは、どちらの医療も同じだからです。医療現場もコロナ医療と通常医療の両立のために必死で踏ん張りました。
 新型コロナウイルスワクチンは、世界の予測を上回る速さで開発されました。昨年の2月、医療従事者のワクチン接種が始まった時、私は、この感染症との闘いを守りから攻めに転じることができる、みんなで頑張りましょうと呼び掛けました。
 当時、菅義偉内閣総理大臣は1日に100万回接種を目指す方針を示されました。これに応え、全国の医師会を始め先生方が底力を発揮され、最大で1日170万回の接種を実現しました。全国の医師会、先生方に敬意を表します。
 2月12日時点で最大36都道府県に適用されていた「まん延防止等重点措置」は、3月21日をもって、全ての対象地域で解除されました。今、オミクロン株による第6波は減少傾向にあります。
 しかし、いまだに、毎日4万人以上の新規感染者が発生し、死亡者数も第5波を上回って増加し、1日に100人以上の方が亡くなっています。
 また、オミクロン株のBA.1からBA.2への置き換わりが進み、更に海外では、デルタ株とオミクロン株の遺伝子の特徴を併せ持つ、いわゆる「デルタクロン」変異株も確認されています。
 コロナとの闘いはこれからも続きます。最終的な終息に向けて、みんなで粘り強く勝ち抜きましょう。
 日本医師会は、緩むことなく、コロナとの闘いを続けます。

弛(たゆ)むことなく財源を確保する責務を負う

 次に、診療報酬改定についてです。
 令和4年度の診療報酬改定率は本体プラス0・43%であり、直近4回の改定における平均値のプラス0・42%と同じ水準になりました。
 令和4年度の診療報酬改定率が決定した際、私は「必ずしも満足するものではないが、厳しい国家財政の中、プラス改定になったことについて、率直に評価をしたい」と申し上げました。
 これは、新型コロナウイルス感染症への対応で医療提供体制が逼迫する中、全国の医師会の先生方に、地元選出の国会議員の先生方へ、医療現場の実態についてご理解を賜る精力的な活動をして頂いたこと、そして、国会議員の先生にそれをしっかりと受け止めて頂いたことに対する感謝の意も込めてのことです。
 しかしながら、日本の医療が今後立ち行かなくなる程の危機に見舞われている現状に鑑みれば、この度の診療報酬改定で一区切りということでは、もちろんありません。今後も、弛むことなく財源を確保する責務を負っていかなければならないと気を引き締めています。
 振り返れば、診療報酬改定前の9月には自民党総裁選挙、10月には衆議院総選挙がありました。総裁選挙では、早期に日本医師連盟として方針を決め、全国の医師連盟と共に行動しました。衆議院総選挙でも全力で自民党を支援し、自民党は絶対的安定多数を獲得しました。そして、その後、短期決戦で集中的に診療報酬改定率が決まる令和4年度の予算編成に臨むこととなりました。
 新型コロナウイルス感染症の影響で経済が冷え込んだ中で、財政当局は当然のごとくマイナス改定を求めてきました。
 しかし、コロナ禍にあってこそ、医療が国民の安全と安心を支えるのだという強い思いから、財務省が「躊躇(ちゅうちょ)なくマイナス改定」にすべきと述べたことに対して、日本医師会は「躊躇なくプラス改定」を行うことを要請しました。
 政治的なこともあり、申し上げられない部分もありますが、岸田文雄内閣総理大臣にも医療現場の現状と痛切な声をご理解頂き、当局と水面下で激しい応酬が行われました。
 その後、当初、大幅なマイナス改定を主張していた財務省がプラスマイナスゼロまで後退した時期を経て、厚生労働関係国会議員、厚生労働省、日本医師会の必死の押し戻しの末、最終的には本体プラス0・43%を確保したのです。
 この過程では、自民党の議員連盟である「国民医療を守る議員の会」の加藤勝信会長から、岸田総理へ、不妊治療の保険適用や看護職員の賃上げに要する費用とは別に、診療報酬のプラス改定が必要だとする提言が行われたことも大きく寄与しました。最終的には、岸田総理の英断によるものと高く評価し、感謝しています。
 今回の改定率は、不妊治療や看護職員の処遇改善が含まれるとはいえ、これを除く、いわゆる真水でもプラスを維持しました。厳しい攻防を乗り越えてここに至ったことを思えば、次の診療報酬改定をプラス改定につなげていけるものになったと考えます。また、絶対に次につなげていかなければならないと強い覚悟を持っています。
 今回の診療報酬改定のうち、オンライン診療とリフィル処方について、代表質問を頂いています。この後、担当役員からお答えしますが、私からも要点を申し上げます。
 オンライン診療については、診療報酬点数は中医協の公益裁定となりました。公益委員がまとめられた結論の中で、従来日本医師会が主張してきたとおり、「オンライン診療では対面診療との比較において、触診・打診・聴診等が実施できない」と述べられています。また、「対面診療を提供できる体制を有すること」が算定要件の一つになりました。
 日本医師会は、オンライン診療は、対面診療と適切に組み合わせて行うべきであるという考えを強く維持しています。その上で、離島・へき地や在宅医療など、外来へのアクセスが困難な患者さんに対して、「心あるかかりつけ医」の先生が診療を行う助けとしてオンライン診療が必要とされるのであれば、しっかりとサポートしていきたいと思います。
 リフィル処方については、今回の後藤茂之厚労大臣・鈴木俊一財務大臣が診療報酬改定について合意した文章の中で、「医師の処方により」「医師及び薬剤師の適切な連携の下」で行うものであることが明記された点が非常に重要です。
 厚労・財務両大臣が合意されたとおり、リフィル処方は、かかりつけ医と患者さん、更には適切な連携を図ることができる薬局薬剤師との信頼関係の下でのみ行われます。
 患者さんからリフィル処方を希望されることもあるかも知れませんが、日本医師会は、定期的な医学管理の重要性をしっかりと国民の皆様にご理解頂くように努めます。先生方が、かかりつけ医として、患者さんの病状を個別に、かつ総合的に考慮した上で慎重に判断して頂けるよう最大限ご支援したいと考えています。
 最後になりますが、この2年間、新型コロナウイルス感染症対策のために、日本医師会の会議はWEB主体での開催を余儀なくされてきました。今後は、議論の活性化のためにも、ハイブリッド、更に対面の会議を、感染防止対策を講じた上で最大限増やしたいと思います。
 そして、同時に対面の会議とオンライン会議の適切な組み合わせによる、議論の活性化を模索して参ります。ぜひとも、お知恵をお貸し下さい。
 また、平時を取り戻した暁には、私自身が、全国の皆様のところにお邪魔し、対面で熱い議論とご指導をお願いしたいと思っています。
 本日は、久しぶりの日本医師会代議員会です。忌憚(きたん)のないご意見、ご提案を、よろしくお願い申し上げます。

閉会のあいさつ

 本日は、朝から全国で代議員の皆様のご出席、ご参加を賜りまして、「第1号議案 令和3年度日本医師会会費減免申請の件」「第2号議案 日本医師会定款・諸規程一部改正の件」「第3号議案 医の倫理綱領一部改定の件」をご承認頂きありがとうございました。
 また、代表質問については、熱心な議論をして頂き、いくつもの重要なご指摘を頂きました。執行部として、身の引き締まる思いです。現執行部の残り3カ月の任期を全力疾走で全ういたします。
 私、個人としてはウィズコロナからポストコロナ時代の医療のあり方を日本医師会として政府に提言するという重大な使命を負っていると認識しています。新たな決意をもって、全国の医師会の先生方と議論を深めつつ、共に進んでいきたいと思っています。これからも、ご指導、ご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。本日は、ありがとうございました。

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