閉じる

令和4年(2022年)5月5日(木) / 南から北から / 日医ニュース

健康ゆすり

 コロナの大流行で外出もままならない事態となった。とは言っても、テレビでは渋谷のスクランブル交差点で大勢の人々が渡っているのが毎日のように放映されている。巧みに対面の人を避けながら皆が時間内に渡りきるのを見たアメリカ人が「日本人はどうしてぶつからないように渡れるのか不思議だ。ニューヨークでこんなことしたら、あちこちでけんかが起こるよ」と言ったそうだ。
 コロナの流行に対応して多くの人が外出を抑制して、人出が減っていることは確かだ。しかし医師の資格を持たない医事評論家と称する人の「コロナがはやっています。病院には行かないようにしましょう」との言い分には呆れ返るばかりだ。普段、高血圧などで2週に1回受診していた方も「1カ月分処方してください」と言う方が増えてきた。医院経営にとっては減収減益になるが仕方がない、としか言えない。
 いつも家事に勤しむ主婦にとっては買い物に出ることは大事な仕事であり、と同時に息抜きとともに運動にもなる。特に野菜や果物、魚介類などは鮮度が大事なので毎日買い物に出ることは運動にも気晴らしにもなっていたはずである。
 ところがコロナの流行で食糧の買いだめをするようになると、どうしても家の中で過ごす時間が多くなり、運動不足になりがちである。特に下肢の筋力の低下が著明になる。と言っても一般の日本の家屋は歩き回るには狭すぎる。と言って外を走るのはそれこそコロナ感染の危険もあり得るわけだ。マンションや団地の屋上を行ったり来たりすれば変な目で見られかねない。階段の上がり降りも結構きついので長続きしない。
 そこで提案されるのがいわゆる「貧乏ゆすり」である。椅子に腰掛けて両下肢を小刻みに動かす。以前はこれをやると「貧乏ゆすりはやめなさい」と怒られたものだ。しかし今となっては手軽に安全にできる下肢の運動ということに変わった。これなら本を読みながら、テレビを見ながらかなりの時間やっていられる。転倒してけがすることも無い。しかし会社員が仕事をしながらこれをすれば上司に叱られることは必至であるから要注意。
 ところが早くもデパートの健康用品売り場に、足を乗せてスイッチを入れるとブルブルと強弱を付けて振動する機械が売り出され、かなりの販売台数とのことである。世の中には頭の良い人がいるものだ。
 ともかく、いわゆる「貧乏ゆすり」は決して悪いものでは無い。そこで「健康ゆすり」と言い方を変えることを提案したい。

東京都 目黒区医師会報 第251号より

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる