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令和4年(2022年)5月20日(金) / 日医ニュース

大学病院で「医師の働き方改革」は本当に可能?

勤務医のひろば

大学病院で「医師の働き方改革」は本当に可能?

大学病院で「医師の働き方改革」は本当に可能?

 「医師の働き方改革」に向けて、大学病院もようやく整理が始まったところであるが、大学病院の「医師の働き方改革」が難しい問題を抱えていることは容易に想像できるだろう。
 そもそも、大学病院は医師として十分な給与体系の雇用になっていない場合も多い。また、臨床のみでなく教育と研究も多くを求められているが、相応な常勤枠がないこともあるため、非常勤の若手医師を集めて人手を確保し、給与の足りない部分は診療応援として外勤で稼ぐことになる。
 教育と研究も本来業務のはずが、実際には就業時間内で終わらず、臨床終了後の勤務時間外に自己研鑽(けんさん)として実施されていることが多い。本来業務を勤務とすることが本改革の趣旨と思うが、時間外勤務が増え、その分外勤を減らすとなれば収入が減ってしまうため、自己研鑽とした方がましという考えになるのではと危惧している。
 また、大学病院にとって診療報酬につながらない教育、研究の時間外勤務が増えれば人件費が厳しくなるというのが本音であろう。結果、「勤務と自己研鑽の線引き」は自己研鑽を多くせざるを得なくなる。更に、外勤時間を確保するため、大学の時間外をあえて申請しない医師が出ることも予想される。
 解決策の一つとして、給与は大学病院に一本化し、外勤先の給与を大学病院に入れることで、医師として十分な給与体系を確保し、外勤時間も考慮した上で、現状の臨床・教育・研究を時間内に実施可能な常勤枠数となるよう再検討することが必要と思うが、そのような連動する動きはない。
 「医師の働き方改革」により医師の大学離れが生じ、大学の臨床・教育・研究の力が落ちることは国民にとっても不利益になると思うので、「医師の働き方改革」が上限時間だけの見せかけの「改革」で終わらないことを願うばかりである。

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