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令和4年(2022年)5月20日(金) / 日医ニュース

ロシアの侵攻に直面するウクライナの医療従事者と国民の支援に関する決議を採択

ロシアの侵攻に直面するウクライナの医療従事者と国民の支援に関する決議を採択

ロシアの侵攻に直面するウクライナの医療従事者と国民の支援に関する決議を採択

 2022年世界医師会(以下、WMA)パリ理事会が4月7~9日を会期とし、新型コロナウイルス感染症の影響により、現地参加とオンライン参加によるハイブリッド会議として開催された。2019年10月のWMAトビリシ総会以降、2年半ぶりの対面形式を含むWMA会合の開催となった。
 日本医師会からは、WMA理事である中川俊男会長、WMA理事会副議長である松原謙二副会長がオンラインで、橋本省常任理事が現地でそれぞれ出席した。
 全体では、40加盟各国医師会他から、現地で150名、オンラインで70名の約220名が参加した。
 理事会では、ウクライナへの医療支援について、オトマー・クロイバー事務総長から、日本医師会からの即時の1億円及び更なる1億円の寄附など、各国医師会からの支援に対し感謝の意が示された他、寄附金を原資とした「ウクライナ医療支援基金」の設立及び「タスクフォース・ウクライナ」(WMA、欧州医師会フォーラム、欧州医師常設委員会及びポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、フランスの各国医師会で構成され、「ウクライナ医療支援基金」の運用を担う。日本医師会はクロイバー事務総長の要請により、アジアで唯一参加している)の活動に多くの支援が得られ、医薬品・医療物資がウクライナの医師に届けられたことが報告された。
 また、緊急案件として、「ロシアの侵攻に直面するウクライナの医療従事者と国民の支援に関するWMA理事会決議」が採択された。
 理事会における主な審議結果は次のとおりである。

理事会での審議結果

(1)緊急決議

 「ロシアの侵攻に直面するウクライナの医療従事者と国民の支援に関するWMA理事会決議」
 決議では、「WMAの構成会員は、ウクライナ医師会と連帯し、ロシアのウクライナ侵攻を非難し、戦争行為の終結を求める」とした上で、紛争の当事者が関連する人道法を尊重し、医療施設を軍事施設として使用したり、医療機関、労働者及び車両を標的にしたり、負傷者や患者の医療へのアクセスを制限したりすることがないようにすること、紛争から逃れてくる人々を受け入れる全ての国に対し、全ての避難民に安全で適切な生活条件と、必要に応じて適切な医療を含む不可欠なサービスへのアクセスを確保することなどを要請している。

(2)医の倫理委員会関係

 「WMA医の国際倫理綱領」の改訂に向け、現在の草案を基に、アジアを含む各地域会議で議論することが承認された。

(3)社会医学委員会関係

 オサホン・エナブレレ前委員長のWMA次期会長選出(ロンドン総会、2021年10月)に伴う委員長選挙が行われ、日本医師会が支援したフランス医師会ジャン・フランソワ・ロー理事が選出された。

(4)財務企画関係

 準会員に適用される規則に関し、日本医師会を含む作業部会において合意が得られた修正案が承認され、採択のため総会に付託されることになった。
 医の倫理の国際的な指針としての「ヘルシンキ宣言―人間を対象とした医学研究の倫理原則(DoH)」については、今後作業部会を設置し、改訂に向けた議論をしていくことになった。
 2020年―2025年のWMA戦略計画が、COVID―19パンデミックとウクライナにおけるロシアの軍事侵攻の影響により見直された。
 主な見直し点としては、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進と緊急災害時の対応に関するアドボカシー活動」が一層重要な位置付けとなったことが挙げられる。
 また、ウクライナへの医療支援について、欧州医師会フォーラム、欧州常設委員会と協力して活動を行っていることが報告された。
 今後の会議日程:2022年10月ベルリン総会(ドイツ)、2023年4月ナイロビ理事会(ケニア)、10月キガリ総会(ルワンダ)。

(5)その他

 橋本常任理事は、ウクライナへの医療支援について、クロイバー事務総長と情報共有のための面談を行った。
 また、ドイツ医師会の要請により、WMA医の国際倫理綱領改訂作業等について、同医師会のラミン・パルサパルシ理事と打ち合わせを行った。

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