OECD Statisticsというデータ集をご存じでしょうか。これは経済協力開発機構が発表しているデータ集で経済、公共、保健医療、交通、貿易など多くのデータが網羅(もうら)されています。
さて、この中にOECD Health Statisticsという分野がありますが、今回はそれを日本人向けに解説した日医総研のワーキングペーパーNo.464をご紹介したいと思います。
医療制度は行政上定められたもののため、単純に比較ができるものではありませんが、時には他国の現状を見てみることも必要だと考えます。
2019年の日本の対GDP保健医療支出は11・0%でOECD加盟38カ国中5位となっています(ちなみにOECD平均は8・8%)。2020年はまだ速報値しか公表されていませんが、各国ともGDPが大きく落ち込み、公衆衛生サービスや医療材(マスク、手袋など)が増えたため、対GDP保健医療支出は増加傾向にあります。
次に保健医療支出額ですが、日本の一人当たり保健医療支出は4691ドルであり、15位でした。対GDP比では5位にもかかわらず、実額では15位となっている理由は日本人の平均所得が年々低下しているからです。これは大きな問題であり、日本人の所得を上げていく政策が求められます。
保健医療支出のうち、医薬品・非耐久性医療材支出は日本17・8%、OECD平均15・1%です。残りの部分は人件費や減価償却材などのため、日本の医療費は人件費や建物に財源をあまり使っていないことを反映しています。国際比較においても、人件費への支出を増やす必要があることが分かります。
次に医療職の人数ですが、医師数は人口1000人当たり、2・5人と38カ国中33位です。医学部卒業生は10万人当たり7・1人と38カ国中もっとも少ない人数です(ちなみに、医学部卒業生アイルランド24・8人、デンマーク23・0人)。女性医師の占める割合は日本21・8%とこれも最下位です。38カ国中14カ国において女性医師が50%を超えています。一方、看護師数は1000人当たり11・8人と8位(平均8・9人)、薬剤師に至っては1・9人でダントツの1位(平均0・9人)となっています。
更にOECD諸国と日本の大きな違いとして、外国の医学部や看護学部を卒業した医療職者の多寡があります。外国の医学部を出た医師の割合はイスラエル57・8%、イギリス30・3%、OECD平均は18・5%で、日本はほぼ0%です。看護師もニュージーランド26・6%、ドイツ8・9%、OECD平均6・2%です。無論、EU諸国は医療職免許制度の統一化を行っており、制度が大きく違うことがその理由の一つとも考えられます。
今後更にグローバル化が進むのか、新型コロナやロシアによるウクライナ侵攻の影響でグローバル化が縮小していくのかは分かりませんが、保健医療分野における海外との交流を今以上に進めていく必要もあるかも知れません。
このように他国との比較を行うと新たな視点も出てくるのではないかと思い、今回ご紹介させて頂きました。
本レポートは日医総研のホームぺージ(https://www.jmari.med.or.jp/result/working/post-3402/)に記載しておりますので、ご覧頂ければ幸いです。
(日医総研副所長 原祐一)