私は下戸です。しかも全く飲めない体です。梅酒を飲んでも真っ赤になります。下手に飲めば、やがて頭はグラングラン、頭痛はガンガン、ゲロゲロです。そうしたわけで酒の付き合いは極めて悪いのです。
ただ、お酒の場の雰囲気は嫌いではありません。高らかに笑って本音を吐く、そうした場は決して嫌いではありません。若い頃は飲み会で素面(しらふ)でも2次会、3次会と付き合い、それなりに楽しむことができました。
しかし、そのような付き合い方は意外とエネルギーが要るもので、歳を取るとともに遅くまで付き合うことは難しくなり、最近は1次会が関の山となっています。
そもそも自分から「飲みに行きましょう」と言うことはありません。そのため、非常に「お酒の付き合い」は悪いほうです。「お酒が入ると苦しくなるから参加しない」のであって決して人付き合いが嫌いなわけではありません。
最近は成人した息子がお酒を嗜(たしな)むようになってきました。巷では「親子で飲む」ことはうらやむべきことと言われているようですが、わが家では「息子が一人で飲んで父親は傍観している」といった具合です。私も付き合おうかとそばに寄っても「とーちゃんはやめたほうが良いよ」と軽くあしらわれます。
この「飲めない血筋」というのは母方の血筋のようです。母はもちろん、母方の祖父も全く飲めない人でした。祖父は99歳まで生きて、近所で「スーパーじいさん」と呼ばれていた人でした。
この祖父が健在の頃、尋ねてみたことがあります。「おじいちゃん、長生きしてお酒が飲めなくて良かったと思う?」。祖父はこう答えました。「そうだなあ、損したことのほうが多かったなあ......」と、しみじみとした口調で答えたものでした。
そうか、やはり酒が飲めないということは損なことが多いのか!? 90歳を過ぎた人にそう言われたら、返す言葉もありませんでした。
今更お酒の訓練をするわけにもいかず、きっと私はお酒に関しては損をする人生なんだろうなと思った次第でした。