日本医師会の三大会議の一つである第Ⅺ次学術推進会議(座長:門田守人日本医学会長/堺市立病院機構理事長)の報告書がこのほど取りまとめられた。
本報告書は会長からの諮問「再生医療の未来について」に関して、6回の会議を開催して取りまとめられたもので、「Ⅰ.はじめに」「Ⅱ.再生医療を取り巻く社会状況について」「Ⅲ.先端的再生医療の実現に向けた取り組み」「Ⅳ.将来の再生医療に向けた展望について」「Ⅴ.まとめと提言」で構成されている。
「Ⅱ.再生医療を取り巻く社会状況について」では、再生医療は現在も発展途上期にあり、安全で有効な臨床研究や自由診療が実施されるように法整備が進むことが望まれると指摘。また、再生医療の規制の現状や現在行われているナショナルコンソーシアム活動についても触れ、日本の再生医療が国際的に普及し、日本の基準が国際基準になっていくことに期待感を示している。
「Ⅲ.先端的再生医療の実現に向けた取り組み」では、日本の再生医療の現状として、「重症心不全に対する再生医療iPS細胞から作成した心筋細胞シート」「神経再生医療の現状と展望」「iPS細胞を用いたパーキンソン病治療」「肝硬変症に対する再生医療の開発」「角膜の再生医療」「網膜再生医療」などを詳細に説明するとともに、将来展望についても触れられている。
「Ⅳ.将来の再生医療に向けた展望について」では、オルガノイド医療やMuse細胞を用いた医療を紹介。また、再生医療については、細胞を使った「もの」としての位置付けと「医療技術」としての位置付けという両面が混在している難しさがあると指摘し、「これらに対応するビジネスモデルをいかにつくり上げるか」「その普及のために医療現場の医師といかにコミュニケーションをとるか」が、産業側の課題であるとしている。
「Ⅴ.まとめと提言」では、再生医療を更に発展させるためにも、日本医師会が中心となって関係学術団体、産業界、行政等との協力体制の強化を迅速に進めていくべきとしている他、適切に評価ができる仕組みの構築が必要だとして、日本医学会の再生医療等レジストリ協議会とも連動し、開発から提供に至るまで、明確なデータに基づくエビデンスを構築していくことを提案。
その他、原料となる細胞の安定的な供給体制やその品質、安全性を担保する仕組み、開発や実施に掛かる負担を軽減するため、社会全体で再生医療に係る情報を共有し、臨床における情報を研究開発に還元するリバーストランスレーショナルリサーチを推進することも求められるとしている。